映画「真田十勇士」 平成28年9月22日公開予定 ★★★☆☆
ノベライズ 「真田十勇士」 松尾清貴  小学館文庫



関ヶ原の戦いから10年、徳川家康は天下統一を着々と進めていた。
そんな徳川に反旗を翻す豊臣秀頼の勢力は、天下の武将として名をはせる真田幸村と
彼が率いる真田十勇士を急先鋒に立たせて合戦に臨む。
しかし、真田は容姿が良かったばかりに百戦錬磨の武将だと勝手に思われているだけで、
本人も平凡な武将であるのを自覚していた。
そんな差異に苦悩する彼の前に、抜け忍となった猿飛佐助が現れて
実際に猛将へと仕立てあげようと協力を申し出る。
佐助は霧隠才蔵など10人の仲間を集め、大坂冬の陣・夏の陣に挑む。  (シネマ・トゥデイ)


「真田十勇士」
恥ずかしながら、私はこの話を全く知りません。
まあ、架空の話ですから、日本史選択でもちっとも困ることはなかったんですけど・・・
映画が始まる前に、元ネタをざっと読んでおこうと思ったんですが、大御所だけでも
柴田錬三郎、司馬竜太郎、笹沢佐保たちが書いていて、しかも何巻もです。
本作はマキノノゾミ氏が舞台用に書いたオリジナル脚本が元になってるので、あんまり参考にならないみたいで
↑には、映画のノベライズを書いておきました(まだ読んではいませんが)

なんで今回、公開前に見られたかというと、2週続きで完成披露試写会に行けたからです。
登壇キャストは未定だったんですが、十勇士の10人に監督、幸村、火垂、仙九郎、というフルメンバー。
ちなみに十勇士というのは、↑の画像の、左下2人を除いた十人です。

180cm超えの松坂桃李、加藤雅也をはじめ、長身メンバーのひとりに、望月歩君発見!
彼は「ソロモンの偽証」で自殺する柏木役で鮮烈デビューしましたが、わずかの間にこんなに成長するとは!
ここでは真田幸村の息子真田大助を初々しく好演していました。

舞台のほうは14年版がすでに公演済みですが、今年も映画と同時に再演される、という新しい試みがあるとか。
脚本演出、それに全員ではないですが、主要メンバーは変わらないので、こちらも観てみたいです。

このバージョンで一番特徴的なのは、「幸村は武者ぶりが良いから、周囲がよいようにとってくれ
ホントは智将じゃないのに、たまたま運が良くてうまくやってきただけ」
という奇想天外なもの。

「顔がいいのも辛いよのう」
「そんなセリフ一度でも言ってみてぇ・・」
なんていう、幸村と猿飛佐助のコントみたいなやりとりから始まります。

ホントは気弱な腰抜けの自分と世間の評価の違いに悩んでいた幸村に猿飛は
「それなら俺たちが本物の英雄に仕立て上げる」
「俺が全部指南してやるから安心しろ」と。
そして、くせ者の仲間を募って、十勇士を誕生させるのです。

あと、最初びっくりするのは、冒頭部分がアニメなんですよ。
え?これって実写じゃなかったの?とちょっと心配になるころ
「本作はアニメ映画ではありません。数分後に本編がはじまります」
のテロップが流れるのは、なんだか「のだめ」映画のノリですね。

十勇士をリクルートするくだりでも、コミカルなテロップ多用で、実に分かりやすい。
猿飛佐助と霧隠才蔵以外は名前も知らない人ばかりで心配でしたが、
それぞれ個性的で、「真田家の家臣」と「抜け忍」のどちらかのケースがほとんどなので
覚えるのはそんなに難しくなかったです。


関ヶ原の戦いのあと江戸に幕府を開き、天下取りの総仕上げは秀吉亡き後の大阪攻め。
幸村は警備の甘い南に出城「真田丸」を築くことを(猿飛佐助の入れ知恵で)提案し
徳川との最終決戦の最前線に立つことになるのです。
このへんは普通に史実なので、さすがにそこまではいじってないですね。
大阪の陣の顛末もみんなが知ってることなので、ネタバレにもならないはずです。

とにかく迎え撃つ徳川軍は20万ともいわれているので、舞台はともかく、映画では
そこそこの規模で流血も多くなります。
絶命するところも、とっても丁寧。

猿飛佐助はパルクールの遣い手ということになるんでしょうが、忍者の身体能力は
魔術に近いものもありますよね。 才蔵なんて空も飛べちゃうから、
松坂くんが大鷹の健をやった「ガッチャマン」を思い出してしまいました。

アクションシーンはそんなにクオリティの高くないCG多用で、あんまりすごくないですが
とにかくテンポがいいし、笑いもしっかり挟んでくれるので、最後までずっと楽しめます。

誰が考えてもフィクションとしか思えない落ちがつきますが、
たしかに秀頼の遺体は確認されていないから、いろんな説があることは聞いているし、
「義経が大陸に渡ってジンギスカンになった」なんていう俗説にくらべればマシかも。

歴史をいじって自由に空想を膨らませるのは楽しいな。
(どちらかというと自分で思いつく方が楽しいですが)

舞台あいさつで大島優子が
「歴史ものに出たおかげで、私も歴女になった」って言ってましたけど、それってヤバくない?
これは正史ではないよ!
教科書に載っているのが正しいとは限らないけれど、一応史実とされている流れで
こんな映画をつくってくれたら、歴史嫌いの子供に役立つ・・・というのはあるかも、です。

映画ならではの奥行きのある大画面は迫力ありますけど、やっぱりこの脚本は舞台むきかな?
とくにオリジナルキャラの仙九郎は、話をかきまわすためのいかにもの登場人物で
映画ではちょっと邪魔だったような気がします。

猿飛の勘九郎は、終始舞台上の役者みたいでしたしね。(これ、褒め言葉です)
彼はどんなヤバい場面でも行き当たりばったりで、「およびでない」場面で騒ぎ立て、
終始おちゃらけてるんですが、その辺が先代勘九郎の亡き父の面影そのままで、
役者は亡くなってもちゃんと後世に芸を残すんだと、なんだか涙がでそうになりました。

猿飛佐助と真田親子、三好兄弟、筧十蔵、望月六郎は舞台でも同じ人がキャスティングされている役は
心なしか、キャラがぶれてない気がします。
絶対面白いと思う!
同時でなくてもいいから、映画館で「ゲキシネ」での上映をやってくれないかな??と思います。