映画「海賊じいちゃんの贈りもの」 平成27年10月10日公開 ★★★☆☆


おじいちゃん(ビリー・コノリー)の誕生日を祝福すべく、マクラウド一家の面々はスコットランドの自宅に集結する。
しかし別居中で破局が秒読みのダグ(デヴィッド・テナント)とアビー(ロザムンド・パイク)夫妻、
精神状態が不安定な伯母などいずれも問題を抱え、和やかな一家団らんとは言い難いものだった。
そんな中、アビーの子供たちが引き起こした行動をきっかけに、一家はとんでもないピンチを迎え……。
                                          (シネマ・トゥデイ)

◎をつけていた期待作だったのに、角川シネマ新宿の単館上映。
しかも今日で打ち切りと知ってあわてて観に行きました。

予告編を見た感じでは、こわれかけた家族がおじいちゃんの誕生日に集まり
海賊の末裔であるおじいちゃんのおかげで再生する話のように思えました。

ラストはたしかに当たっているんですが、かなり想像とは違う破天荒なストーリーにびっくり!
そこは書かないのがお約束な気もしますが、その「事件」の顛末なしには感想も書けないので、
DVDを楽しみにしている人は、ここからは読まないでください。








ロンドンに住むこの家族は、夫婦と3人の子どもの5人家族です。
父のダグと母のアビー、 9歳の姉のロッティはなんでも手帳に書き留めるメモ魔。
空想癖の6才のミッキーに、おしゃべりが止まらない4歳のジェス。

一家は、ダグの兄家族とスコットランドにいるおじいちゃんの75歳の誕生会に出かけるんですが、
なにせ言うことを聞かない子どもたちを車に乗せるのは至難の業です。
ジェスはお友だちのエリック(石ころ)とノーマン(ブロック)を連れて行こうとするし、
不適切なことをいうとすぐにロッティがメモするし、もう大変。
それにしても実の父なのに子どもの扱いヘタすぎ!
と思ったら、すでに夫婦関係は破たんし、ダグは子どもたちとは別居しているのでした。

ただ、離婚寸前ということは、重い病気で余命いくばくもない父には言いたくないことで、
子どもたちにもきつく口止めして出かけます。

ハンサムだけど軽薄さ全開の父、美人だけど大ざっぱな性格の母、
子どもたちも個性バリバリで、スコットランドまでの道中も大笑いの連続でした。

予定よりかなり遅くなってスコットランドに到着。
広大な敷地に立派なお屋敷。兄のギャビンは見栄っ張りの成金野郎で、
誕生パーティーには家族だけじゃなくて地元の名士はじめ215人も招待しているのです。
義姉マーガレットがうるさい夫のために雑用が多くて抗鬱剤を飲んでいることすら夫は知りません。
いとこのケネスは父のいうことをきいて勉強とバイオリンでクラシック曲ばかり弾いてる暗い男子。
ついでにギャビンとダグの兄弟もめちゃくちゃ仲が悪いです。

自分がやって欲しくもない盛大な誕生会の準備、
それをケンカしながらやってる息子夫婦たちにうんざりのおじいちゃんは
孫3人を車に乗せて浜辺にやってきます。

子どもに車の運転をさせたり、「たき火禁止」の看板をなぎ倒すと、
それを燃やしてたき火をしたり、ホントにやりたい放題で盛り上がる4人でしたが、
そのうちにおじいちゃんの体に異変が。

その海岸は戦死したおじいちゃんの兄と遊んだ大好きな場所だったんですが
その兄の姿がお迎えに来て、あじいちゃんは天国へと旅立ってしまうのです。

驚いたのは孫たち。携帯は充電切れだし、姉のロッティが徒歩で家に知らせに戻りますが
両親も叔父夫婦もあいかわらずケンカばかりしているのをみて気がかわります。

おじいちゃんは盛大なばかりの葬式はけっして望んでおらず、
「バイキングのやり方で弔って欲しい」といっていたのを思い出します。
それはいかだにのせて、火をつけて海に流すのだという・・・・
そして幼い子ども3人の力で、なんと本当にそれをやってしまうのです!
びっくりでしょ?

「リトル・ミス・サンシャイン」でもアラン・アーキン演じるおじいちゃんが途中で死んでしまって
その遺体をあちこち動かしまわるというのがありましたが、
こちらは子どもたちが遺体にガソリンかけて燃やしてしまうという・・・それは何でもブラックすぎでしょう!!

日本でも落語ではよく死体をいじりまわしますけど、実写では「龍三と7人の子分たち」くらいですね。

結局おじいちゃんは、自分の望むお弔いをしてもらえて幸せだったし、
見栄ばかりの誕生会は中止になって、ケネスには素敵な彼女が出来て
ダグとアビーは仲直りして、すべてが上手くいってめでたしめでたし・・・

「死はすなわち生きること。父は大いに生きた。私たちもそうしよう」
「私たちは3人の子どもたちを守る!ポンコツ家族で上等よ!」
なんて感じで、「リトル・ミス・サンシャイン」の時のようなほのぼのしたラストなんですが、
それでも、子どもたちの「行為」が合法的と判断してもらえるのか、社会的に許されるものなのか、
どうしても気になって、いつまでもモヤモヤしています。

大好きなロザムンド・パイクはコメディもお得意だし、3人の子どもたちも演技とは思えない自由人ぶり。
義兄のベン・ミラーが、クリストフ・ヴァルツの慇懃さとスティーヴ・カレルの軽妙さをもちあわせていて
個人的にツボでした。

ところで、「バイキングの兜には本当は角がない」とか、
「あの弔い方も実は本当じゃない」というのが最大のオチでして、
でも海賊のDNAをひきつぐおじいちゃんは信じていたわけで、
「世の中は嘘と欺瞞で溢れかえっている!!」

結局、この嘘っぱちの世の中、自分の好きに生きたらいいんじゃないの??
ていう気にさせられました。