映画「間奏曲はパリで」 平成27年4月4日公開 ★★★★☆
ノルマンディーの片田舎で畜産業を営むブリジット(イザベル・ユペール)とグザヴィエ
(ジャン=ピエール・ダルッサン)は夫婦仲も仕事も順調だが、子供は家を出て、
ブリジットは実直だが無骨な夫との暮らしになかなか慣れなかった。
そんな折、隣家のパーティーで魅力的なパリジャン、スタン(ピオ・マルマイ)と出会いひそかにときめく。
未知なる期待を胸に秘め、夫にうそをついて単身パリへ向かうブリジットだったが……。 (シネマ・トゥデイ)
浮気願望の中年主婦のアバンチュールひとり旅・・・という触れ込みだったので、劇場スルーしていたのですが
いやいや、中高年夫婦「あるあるエピソード」満載の共感度高いドラマでした。
ブリジッドとクサビエの夫婦はノルマンディーでシャロレー純血種の牛を育てて売る畜産家。
コンテストで優勝するような良い牛を育てているのですが、従業員はひとりだけの夫婦経営。
ブリジッドはPCに弱い夫にかわり、経理や事務作業をまかされています。
息子はもう家をでているのですが、サーカスのパフォーマーになりたい息子の夢を応援する妻に対して
夫は否定的。
夫婦仲はいいのですが、性格も趣味もあまりに違いすぎて、しかも夫はすぐに早い時間に寝ちゃう・・・
ある日、隣に住む姪のところに若者たちが集まって夜通しパーティーで盛り上がっており
そこに遊びにきていたスタンに誘われて(夫が寝ている時間に)ブリジッドは若者たちと楽しい時間を過ごします。
ハンサムなスタンにブリジッドがお熱をあげた、というよりは、「素敵だ」「きれいだ」とか
夫があんまり言ってくれないようなことを彼がささやいてくれるから、なんか気持ちよくなってしまうのです。
スタンも特別プレイボーイキャラでもなく、若い女性に飽き足らない「熟女好き」の青年のような・・・
夫とは絶対にできない音楽の話とか、カルヴィーノの小説の話で盛り上がります。
実はブリジッドは、胸に広がってきた原因不明の赤い湿疹が気になっていて、
夫からはパリの専門医に見せるよういつも言われていたのでした。
そこで、医者に行くのを口実に、パリのアパレルショップで働くスタンに会いにいってしまおうと考えたのです。
イザベル・ユペールが若い男に興味をもつと、あの「ピアニスト」みたいな怖~い展開を想像しちゃいますが、
これはコメディーなので、心配はいりません。
日帰りで行こうと思えば行けるパリへ二泊の一人旅。
夫に許可をとりつけると、彼女なりに精いっぱいのおしゃれをして(でも少々ダサい)
スタンが働いているというショップへ。
最初は歓迎してくれたけれど、スタンにとっては
「友だちの隣の家のちょっときれいなおばちゃん」以上の存在ではないので、徐々に塩対応。
一方ホテルで知り合ったデンマークの歯科医ジャスパー(ミカエル・ニクヴィスト)と仲良くなります。
彼は学会でパリに来ていたのですが、ブリジッドとは年相応だし、パリに不案内同士で意気投合。
ふたりで歩いているところを、なんと(妻の行動を不信に思って尾行してきた)夫に見つかってしまいます。
普通のコメディだと、ここで「修羅場」となるのですが、自分より明らかにいい男と嬉しそうにしている妻を見て
夫は声もかけられずにその場を去ります。
彼はその足で美術館に行き、羊飼いの女性の絵に、いつも「羊飼いちゃん」と呼んでいた妻の姿を重ねて
しばらく眺めたあげくに、絵葉書を購入。
そして、息子に会いに行き、はじめて彼のトランポリン芸を見せてもらうのですが
その重力を感じさせないファンタジックな素晴らしいパフォーマンスに感激します。
好きなことに頑張っている息子を、自分も妻のブリジッドのように応援しようと思ったのでした。
深夜に傷心の思いで帰宅したクサヴィエを、すべて察していた待っていた使用人の男が慰めるシーン。
「奥さんは必ず帰ってきます。あなたを愛しているから」
「あなただって浮気したでしょう?奥さんはここのキッチンで泣いていたんですよ」
「それでもあなたが戻るのを信じていました」と。
彼の言葉がなかったら、帰宅後にたいへんな展開が待っていそうですが、
クサヴィエはすべて自分の心にとどめようと決心します。
何も知らないブリジッドはバーゲンで服を買ったとか、カーテンの生地を買ったとか、
湿疹には死海の砂を塗るといいと言われたとか、ぺらぺら話をするのですが、
夫の部屋から羊飼いの絵葉書を一緒に入っていたパリの美術館のレシートを見つけ、すべてを悟るのです。
イザベルの表情の演技だけですべてを表現するこのシーンも素晴らしかったです。
そしてラストは2週間のイスラエル旅行。
死海でぷかぷか浮かぶ二人の姿がなんとも微笑ましい・・・・
予告編では「おひとり様で行く恋の都、パリ」みたいなフレーズが、私には無縁の世界に思えたんですが、
ブリジッドの満ち足りなさもクサヴィエの困惑もホントに共感できて、
いつも半分くらい理解不能なフランス映画は思えないくらいです。
ただ、ジャスパーと一夜を共にしてしまうのはちょっとアウトですね。
下半身ユルユルなのはダメです!
ここの部分をカットしたら、ちょっと美人で評判の日本の田舎の農家の主婦が
新幹線に乗って東京の大学病院に行くと言って、ふらふらする話でもいけるような・・・
夫婦を演じる俳優さんは60歳くらいでしたが、早くに結婚して一人息子が学生だから、
映画のなかでの設定は40代くらいなのでしょうか?
でも、むしろ生々しい色恋抜きでのアラ還世代の話として、とても共感できました。
おススメ!
ノルマンディーの片田舎で畜産業を営むブリジット(イザベル・ユペール)とグザヴィエ
(ジャン=ピエール・ダルッサン)は夫婦仲も仕事も順調だが、子供は家を出て、
ブリジットは実直だが無骨な夫との暮らしになかなか慣れなかった。
そんな折、隣家のパーティーで魅力的なパリジャン、スタン(ピオ・マルマイ)と出会いひそかにときめく。
未知なる期待を胸に秘め、夫にうそをついて単身パリへ向かうブリジットだったが……。 (シネマ・トゥデイ)
浮気願望の中年主婦のアバンチュールひとり旅・・・という触れ込みだったので、劇場スルーしていたのですが
いやいや、中高年夫婦「あるあるエピソード」満載の共感度高いドラマでした。
ブリジッドとクサビエの夫婦はノルマンディーでシャロレー純血種の牛を育てて売る畜産家。
コンテストで優勝するような良い牛を育てているのですが、従業員はひとりだけの夫婦経営。
ブリジッドはPCに弱い夫にかわり、経理や事務作業をまかされています。
息子はもう家をでているのですが、サーカスのパフォーマーになりたい息子の夢を応援する妻に対して
夫は否定的。
夫婦仲はいいのですが、性格も趣味もあまりに違いすぎて、しかも夫はすぐに早い時間に寝ちゃう・・・
ある日、隣に住む姪のところに若者たちが集まって夜通しパーティーで盛り上がっており
そこに遊びにきていたスタンに誘われて(夫が寝ている時間に)ブリジッドは若者たちと楽しい時間を過ごします。
ハンサムなスタンにブリジッドがお熱をあげた、というよりは、「素敵だ」「きれいだ」とか
夫があんまり言ってくれないようなことを彼がささやいてくれるから、なんか気持ちよくなってしまうのです。
スタンも特別プレイボーイキャラでもなく、若い女性に飽き足らない「熟女好き」の青年のような・・・
夫とは絶対にできない音楽の話とか、カルヴィーノの小説の話で盛り上がります。
実はブリジッドは、胸に広がってきた原因不明の赤い湿疹が気になっていて、
夫からはパリの専門医に見せるよういつも言われていたのでした。
そこで、医者に行くのを口実に、パリのアパレルショップで働くスタンに会いにいってしまおうと考えたのです。
イザベル・ユペールが若い男に興味をもつと、あの「ピアニスト」みたいな怖~い展開を想像しちゃいますが、
これはコメディーなので、心配はいりません。
日帰りで行こうと思えば行けるパリへ二泊の一人旅。
夫に許可をとりつけると、彼女なりに精いっぱいのおしゃれをして(でも少々ダサい)
スタンが働いているというショップへ。
最初は歓迎してくれたけれど、スタンにとっては
「友だちの隣の家のちょっときれいなおばちゃん」以上の存在ではないので、徐々に塩対応。
一方ホテルで知り合ったデンマークの歯科医ジャスパー(ミカエル・ニクヴィスト)と仲良くなります。
彼は学会でパリに来ていたのですが、ブリジッドとは年相応だし、パリに不案内同士で意気投合。
ふたりで歩いているところを、なんと(妻の行動を不信に思って尾行してきた)夫に見つかってしまいます。
普通のコメディだと、ここで「修羅場」となるのですが、自分より明らかにいい男と嬉しそうにしている妻を見て
夫は声もかけられずにその場を去ります。
彼はその足で美術館に行き、羊飼いの女性の絵に、いつも「羊飼いちゃん」と呼んでいた妻の姿を重ねて
しばらく眺めたあげくに、絵葉書を購入。
そして、息子に会いに行き、はじめて彼のトランポリン芸を見せてもらうのですが
その重力を感じさせないファンタジックな素晴らしいパフォーマンスに感激します。
好きなことに頑張っている息子を、自分も妻のブリジッドのように応援しようと思ったのでした。
深夜に傷心の思いで帰宅したクサヴィエを、すべて察していた待っていた使用人の男が慰めるシーン。
「奥さんは必ず帰ってきます。あなたを愛しているから」
「あなただって浮気したでしょう?奥さんはここのキッチンで泣いていたんですよ」
「それでもあなたが戻るのを信じていました」と。
彼の言葉がなかったら、帰宅後にたいへんな展開が待っていそうですが、
クサヴィエはすべて自分の心にとどめようと決心します。
何も知らないブリジッドはバーゲンで服を買ったとか、カーテンの生地を買ったとか、
湿疹には死海の砂を塗るといいと言われたとか、ぺらぺら話をするのですが、
夫の部屋から羊飼いの絵葉書を一緒に入っていたパリの美術館のレシートを見つけ、すべてを悟るのです。
イザベルの表情の演技だけですべてを表現するこのシーンも素晴らしかったです。
そしてラストは2週間のイスラエル旅行。
死海でぷかぷか浮かぶ二人の姿がなんとも微笑ましい・・・・
予告編では「おひとり様で行く恋の都、パリ」みたいなフレーズが、私には無縁の世界に思えたんですが、
ブリジッドの満ち足りなさもクサヴィエの困惑もホントに共感できて、
いつも半分くらい理解不能なフランス映画は思えないくらいです。
ただ、ジャスパーと一夜を共にしてしまうのはちょっとアウトですね。
下半身ユルユルなのはダメです!
ここの部分をカットしたら、ちょっと美人で評判の日本の田舎の農家の主婦が
新幹線に乗って東京の大学病院に行くと言って、ふらふらする話でもいけるような・・・
夫婦を演じる俳優さんは60歳くらいでしたが、早くに結婚して一人息子が学生だから、
映画のなかでの設定は40代くらいなのでしょうか?
でも、むしろ生々しい色恋抜きでのアラ還世代の話として、とても共感できました。
おススメ!