映画「誘拐 狙われたハイネケン」 平成23年製作 ★★★☆☆
 

 
世界有数のビールメーカーであるハイネケンの経営者アルフレッド・ハイネケンが、
迎えの車に向かう途中で武装した四人組の若者に誘拐されてしまう。
アルフレッドは三週間も隠し部屋に監禁されるが、多額の身代金により無事に助け出された。
犯人たちは逃亡するが、アルフレッドは持てる政治力と経済力を駆使し、
犯人逮捕に執念を燃やし始める。                         (allcinema ONLINE) 
      
今月同じ事件が題材の「ハイネケン誘拐の代償」が公開されますが(ハイネケン役アンソニー・ホプキンス)
これは日本ではDVDスルーとなったルトガー・ハウアー主演の作品。
大富豪というよりマフィアの親玉っぽいですが、期待を裏切らず、後半ではハイネケンの大逆襲が始まります。

実話が元になっている映画を観る時は、自分が知らない事件でも自宅にある「20世紀全記録」をチェックして
これに出てれば「有名な実録」という認識だったんですが
 

残念ながらハイネケンの誘拐事件は乗っていませんでした。
wikiでもあまり詳しくは載っていなかったので、事件の全貌がわからないまま、DVD鑑賞。

 レムは自動車教習所に通っていますが、なかなか試験に合格できずにいます。
あるとき彼は、義兄のコルと友人たちが材木王の誘拐を企んでいるのを知りますが、
ビール王のハイネケンが決まった時間に不倫相手をボディーガードなしで訪れるのを知り
ハイネケンの誘拐を彼らに持ちかけます。
実は彼の父親はこの会社の元社員だったのですが、取引先との飲酒が原因でアル中になり、
会社をクビになっていたのでした。
そもそも接待での飲酒は不文律だったから会社を訴えたのですが、敗訴して
結果、父は健康を害し、経済的にも困窮し、ハイネケン社への恨みもあったのです。

素人集団の犯罪にもかかわらず、身代金誘拐はまんまと成功し、3週間の監禁後に
ハイネケンと運転手は無事解放されます。

犯人グループの中でも、監禁中、度々暴力をふるったり恐怖を与えたレムを
ハイネケンはとうてい許すわけにはいかなかったのですが
彼と義兄は国境を越えてフランスに逃れます。
当時フランスとオランダでは犯罪者の引き渡しの条約が無く、彼らは正式に条約が改定されるまで
およそ2年間はフランスにとどまることになり、ハイネケンは怒り心頭。
そして彼らをカリブ海のセントマーチン島へと連れて行きます。

 
  

ここは北がフランス領、南がオランダ領で、彼らの降り立ったのは北側ですが
ハイネケンは放送局と住民を買収し、「犯罪者をフランスから追い出そう」と放送して
オランダ領へ追いやって、めでたく、逮捕!

すべて実話なら「アンビリーバブル」「仰天ニュース」とかでやってそうですが
こんな事件があったとは、ぜんぜん知りませんでした。

ことの顛末より、異常事態のなかで、大富豪と若いチンピラとの力関係が何度も逆転するところが
とても見ごたえありました。

レムはかなり冴えないみんなにからかわれる存在だったんですが
(犯罪とはいえ)彼なりに知恵を絞って、兄や兄の友人たちに認められるうちに自信をつけ
横暴さ残虐さが板についてきて、なぜか女性にももてるようになります。
兄の友人フランスの恋人を自分のものにし、監禁部屋では鎖に繋がれた大富豪に暴力をふるい・・・

一方、ハイネケン社長も、無事救われたものの、監禁去れていた時の恐怖がトラウマとなって残っています。
また、家庭をかえりみず、仕事と愛人しか考えていなかったのに、誰より力になったのは
永年連れ添った妻だったことに気づきます。

犯罪者の息子をひたすらかばうことしか考えてないレムの母親、
犯人グループの恋人や妻たち、
事件に絡んでくる女性たちの存在がいくつもの人間ドラマとなって、ノンフィクションの枠を超えています。

どこまでが実話なのかが気になりますが、アンソニー・ホプキンス版と比べてみたいです。