映画「博士と彼女のセオリー」平成27年3月14日公開 ★★★★☆

 
天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は
ケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。
その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。
それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、
二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。                  (シネマ・トゥデイ)

イギリスBBCでベネディクト・カンバーバッチ主演の「ホーキング」
私は去年DVDで観たので(→こちら)ついつい比べてしまいますね。
本物(左のモノクロ写真)とのそっくり度では圧倒的にエディの勝ち!

 

1963年ケンブリッジ大学。
宇宙物理学の研究者スティーヴンと仏西文学を専攻するジェーンは出会い恋におちます。
まるで「【500】日のサマー」みたいなロマンチックなラブストーリー。
このあとALSを発症し、余命2年と言われ、それでも病気と闘いながら研究者として業績を重ね
「車椅子の物理学者」として72歳の現在も活躍していることは、私を含め世界中の人が知っていることです。


「ホーキング」では、病気を宣告された彼の絶望感、そしてそれをいかに克服したか、とか
ペンローズのブラックホール、時空の特異点の説明など、彼の業績に関することが多かったですが
本作では終始妻のジェーン目線なのは、原作が彼女の書いた「Travelling to Infinity: My Life with Stephen」(邦訳なし)だから。
今でこそいろんな介護用品が充実していますが、街中も家の中も段差だらけで、重い車椅子しかなかった時代
女性ひとりで夫の介護をするのはどれだけ大変だったか!
3人の子どもだちの子育てもして、そのうえで彼女も研究を続けて博士号をとったスゴイ女性です。
「量子物理学と一般相対性理論」の説明すら、専門外なのに
食卓で豆をポテトを使って、ジェーンがしていましたね。

実はふたりは結婚25年で離婚し、それぞれに別のパートナーを見つけて再婚しています。
私は「ホーキング」のエンドロールでこのことを初めて知り、ずっと腑に落ちないでいました。
いくらそれまで献身的に介護してきたとはいえ
「難病の夫を見捨てて健常者の男性(ジョナサン)と結婚した」と聞くとずいぶん薄情に思えます。
本作では何の下心もなしにホーキング一家のサポートをしていたジョナサンの良心や
最後まで夫に尽くしつづけたジェーンの献身を説明してますけど、それが製作動機だとすると、ちょっと残念。

それにしても、余命2年の博士が今もなお73歳でお元気なのは奇跡的です。
歩けなくなっても最新メカ搭載の電動車いすで移動でき
声を失っても音声変換ソフトで意思疎通できるようになったのは、
希望を失わずに21世紀まで長生きしている彼へのささやかなご褒美だったかもしれません。

今年になって公開されたオスカー候補作・・・
「ビッグ・アイズ」「アメリカン・スナイパー」「フォックスキャッチャー」「イミテーションゲーム」と
オールラウンドにレベル高い傑作ぞろいだったんですが、
本作についていえば、見事主演男優賞を獲得したエディ・レドメインの演技が圧倒的に突出してる感じでした。
ホーキング博士になりきっているだけではなくて、徐々に進行していく病状、繊細な表情の表現、まさに見事のひとこと。
「レ・ミゼラブル」では類いまれなる歌唱力を披露したエディ。
すでに若手英国俳優のトップですよね。今月公開の「ジュピター」も楽しみです。