映画「きっと、星のせいじゃない」 平成27年2月20日公開 ★★★☆☆
原作本「さよならを待つふたりのために」 ジョン・グリーン 岩波書店

末期ガンながらも、薬の効果で深刻な状態を免れているヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)。
だが、学校にも通えず、友人もできず、酸素ボンべなしでは生活できない。
そんな中、ガン患者の集会で骨肉腫を克服したガス(アンセル・エルゴート)と知り合う。
ヘイゼルに惹(ひ)かれたガスだが、彼女に距離を置かれてしまう。
ヘイゼルに振り向いてもらおうと、彼女が敬愛する作家にメールを送って返信をもらうことに成功するガス。
それをきっかけに、二人は作家に会おうとオランダへ旅行に出るが……。 (シネマ・トゥデイ)

YA向けの難病ドラマ。
古くは「愛と死をみつめて」「ある愛の詩」、平成になってからも「世界の中心で愛をさけぶ」「1リットルの涙」・・・
(私は苦手だけど)人気のあるジャンルではあります。
タイトルも何だかふんわりしたイメージ重視な感じで、しかも実話ベースですらない、と聞くとスルーしたくもなりますが、
実際に見てみると、「お涙ちょうだい」モードの苦手な人にこそ見てほしい作品でした。
脚本がよければ、モデルになった子や家族への配慮が欠かせない「実話ベース」のドラマより
むしろフィクションのほうがいいかもしれません。

ヒロインのヘイゼルは、甲状腺ガンが転移したステージ4の肺ガン。
小さい時からずっと病気と闘っていて、両親も死を覚悟した時、
未承認の薬がたまたま効果あって今は治験で「時間稼ぎ」してる状態。
どんな治療も少し効果があってもすぐに効かなくなるから、直に終わりの時が来る・・・

ヘイゼルの苦手なのは8種類の薬を1日3回飲むのとサポートグループに出席すること。
サポートグループというのは、悪性腫瘍もちの若い子たちが自己紹介して励ましあう集会で、
なんでいやなのに出席するかというとそれは「親が望んでいる」から。
「自分の子どもがガンで死ぬ」というのは、自分が死ぬ以上に不幸なことだから・・・

ある日そこに友人アイザックにつれられてオーガスタがやってきます。
彼は1年前に骨肉腫になり片足を切断して今は寛解している状態。
「僕の不安は人に忘れ去られること。人の記憶に残る人生を送りたい」というガス(オーガスタ)に
「人間はみんな死に絶えるのだから忘却は必然。不安なら無視すればいい」とヘイゼル。

全く気の合わない二人だけれど、共通の友人アイザックを通じて次第に親しくなっていきます。
アイザックは珍しい目のガンで、すでに片目を摘出しており、もう片方も摘出予定。
失明の恐怖を恋人のモニカを分け合うつもりが、あれだけ愛をささやきあったモニカに逃げられてしまいます。
ガスがバスケットで獲ったたくさんのトロフィーを壊したり、モニカの家に生卵をぶつけに行ったりで盛り上がる3人。

ジーニー財団の「WISH」は、難病の子どもたちが最後にやりたいことをかなえるお金を出してくれる制度ですが
ヘイゼルは以前に死を覚悟したときにディズニーランドかなにかで使ってしまったのです。
彼女の本当の「wishi」は、感銘した本「大いなる痛み」の著者ピーター・バンホーテンに逢いにアムステルダムに行って
小説の結末を聞き出すことなのに・・・
その夢の叶わないヘイゼルに、ガスは「自分のwishを使って一緒に行こう!」と。
ガスはピーターにメールを送り、会う約束をとりつけて、アムステルダムに向かうと
そこにはパジャマ姿で昼間から酒を飲むピーターの姿が。
はるばるやってきた彼らに
「人類が進化する過程で偶然生まれた失敗作」なんてことをいう始末。
優しいメッセージを送ってくれていたのは彼の秘書だったのです。
帰国後ヘイゼルの容態が急変し病院に運び込まれるのですが、実はそのころガスも腰に違和感を感じていて
検査をすると、寛解したはずの腫瘍が「まるでクリスマスツリーのように」全身に転移し、余命わずかだというのです。
ヘイゼルとアイザックを呼び出し、3人だけの生前葬。そしてその直後彼は帰らぬ人となります・・・

20年も生きていない若い子たちが常に死を意識して苦しむ姿は気の毒でたまらないですが
可愛そうなのをゴリゴリ押して泣かせて何ぼ、と言う映画の多い中、
本作は現実を受け入れ前向きに生きる若者たちの姿がむしろ爽やかで明るいのです。

子どもの時からずっと病気で普通の子と同じ生活ができなかったヘイゼルと、
突然の骨肉腫で足を失いバスケも出来なくなったガスでは、病気の受け入れ方も違うのですね。
終末期にやってくる「最後の好調期」に精いっぱい輝こうとする彼らのいじらしさもたまりません。

無限にも大小があって、0と1の間にも無限はある」
「あなたは限られた日に永遠をくれた」


そうはいっても辛いなぁ・・・

シャイリーン・ウッドリーは「ダイバージェント」でのスーパーヒロインよりも、こういう等身大の女の子があってます。
ガス役のアンセル・エルゴートは「ダイバージェント」ではシャイリーンのお兄ちゃんでした。

 


ここでの相手役テオ・ジェームスが嫌になるくらい濃~い顏だったんで、
アンセルみたいな癒し系が登場するとホッとしますね。