映画「 グランドピアノ 狙われた黒鍵」 平成26年3月8日公開 ★★☆☆☆
 
界屈指の若き天才ピアニストのトム(イライジャ・ウッド)は、
およそ5年ぶりの復帰公演のためシカゴ空港に降り立つ。
彼は人気女優の妻エマ(ケリー・ビシェ)に励まされながら、
今は亡き恩師の追悼コンサートへの参加を決めたものの、すぐに後悔し始める。
トムは観客で満席のホールを前に尻込みするが、勇気を奮い立たせてステージへと上がり……。(シネマトゥデイ)

イライジャ・ウッドの風貌だと、なかなかフツーの役にはありつけなくて、
ホビットの新作には登場してなかったなぁ~と思っていたら、なんと今回は天才ピアニスト役でした。
5年前にたった一度のミスタッチで音楽界から干されていたトムセルズニック(これがイライジャ)の復帰コンサート。
直前に劇場スタッフから受け取ったスコアに「一音でも外したら殺す!」と書いてあり、
その本番のステージ上で満員の観客の前で演奏しながら、脅迫犯に立ち向かう・・・
っていう、それだけの話です。

要求に従って演奏の合間に楽屋に行ってイヤホンマイクをつけると、さらなる脅迫が。
クラシックコンサートの最中にソリストが中座したり、(犯人にマイクで)しゃべり続けたり
ケータイ鳴らしたり、メールを打ったり・・・・
つっこみどころ満載、なんていうのを遙かに超えた強引な展開です。

「こんなクラシックコンサートは嫌だ!」ネタになりそう!

ついでに客席で携帯を鳴らして、しかも出ちゃう観客あり。
ステージ上部の照明や吊りバトンのスペースでは本番中に死闘が繰り広げられ
舞台裏手には死体がごろごろ・・・・

ああ、こんなコンサート、ホントにイヤ!!

イライジャはかなりピアノの特訓をしたようで、吹き替えなしの超絶演奏にチャレンジ。
最大の見どころなのに、脅迫されておびえながらの演奏だから、見てる方も集中できません。
もったいない!

イライジャ演じるピアニスト、トム・セルズニックは、過去のトラウマを負い、人一倍神経質なピアニスト。
社交的な美人女優の妻、エマも、友人の指揮者ノーマンも、
彼の周りの人たちはそろって楽天家だから、トムのいじいじした感じがさらに引き立ちます。
それにしても、神経質なら、ピアノの調律とか、オーケストラとの合わせにもこだわりそうなのに
なんといっさいなし!
飛行機で到着して、タクシーのなかで着替え、いきなりゲネプロもなしに本番て、まさか!
楽譜に脅迫文が書いてあったわけですが、
ソリストって、楽譜なんて使いましたっけ?
もし使うにしても、一度も開かない楽譜をもっていきますか?
椅子の高さすらチェックなしでした・・・
なんてことまで言いだすと、もう止まらなくなります。

で、なんで彼が脅迫されなきゃいけないかということですが、、
大した理由はなくて、「彼が彼にしかできない完璧な演奏をすることである現象が起きる」ということらしい。
トムの師匠ゴダールが残した96鍵のベーゼンドルファーの名器がそのカギを握ります。
これ、架空の設定だと思ったら、「9鍵のエクステンドキー」というのは、そんなに特殊なことじゃないみたい。
普通にメーカーのサイトにありました→こちら

オープニングクレジットのバックに流れるのは、ピアノ内部の映像。
鍵盤を押すとダンパーが上がって弦から離れ、ハンマーが弦をたたく・・・
そのあとで何やら大小さまざまの金属の歯車がかみ合うのですが、
ピアノって歯車なんてあったっけ???
それがラストにつながるんでしょうけれど、意味ありげなわりには単調なオチ。

最初のほうでも「上質なミステリー」を期待させるような伏線らしきものがいろいろでてくるんですが、
結局なんだったのでしょう??
ただ、師匠の名前がパトリック・ゴダール。
偉大なる過去の巨匠の作品に拘束され、完璧を要求される監督たち。
でも実際、一般大衆はバカだから、ミスがあったってほとんど気づかないで大喝采。
ピアノの内部とか舞台装置のアップが多いのも、映画製作の裏方の暗喩なのかな?
とも考えましたけれど、だからといってすっきりはしません。

最後の長~いエンドロール。
(曲名は不明ですが)なんの干渉もなしにピアノ協奏曲をまるまる聞けるので
ここでようやくクラシック音楽の映画を観た気になれました。
でもクラシックファンにはむしろオススメできない気もします。