映画「かぐや姫の物語」 平成25年11月23日公開予定 ★★★☆☆
原作「竹取物語」 作者不詳
竹林にやって来た翁は、光る不思議な竹に気づき、近づくと小さな女の子が現われる。
女の子を連れ帰った翁は、媼とともに自分たちの子として大切に育てる。
女の子は捨丸ら村の子どもたちと元気に遊び回り、すくすくと成長する。
翁は娘を立派な女性に育てようと、都に移り住み、教育する。
そして美しく成長した娘は、かぐや姫と名付けられる。
やがて姫の美しさを聞きつけ、5人の求婚者が現われるが…。(allcinema)
18日は公開前の最後の満月の夜だということで、
六本木ヒルズアリーナ(屋外)で女性限定のトークショー&コンサートが開催されました。
たしかに満月ではあったんですが、寒いし、クリスマスイルミネーションとかで本物の月はめだたないし、
雨が降らなかったからよかったものの、一歩間違えれば単なる「我慢大会」になるところでした。
当然撮影禁止なので、ネットで画像を探したのですが、
屋外でやってたことがわかる画像はほとんどなかったので、これちょっと企画倒れだったかもしれません。
それにしても半袖で微笑んでいる主役の朝倉さんの女優魂をみよ!
(でも悲壮感がつたわらないのが逆に気の毒でしたが)
エンディングテーマを歌う二階堂和美さん(左側)のことは今回初めて知ったのですが、
ミニコンサートは、曲想もいろいろ、幅広い音楽性で、たった4曲(+1)でしたが、とても楽しめました。
「女はつらいよ」は自虐的なコミックソングで歌い方は演歌歌手のよう。
「君をのせて」は初期のユーミンのような歌唱で歌い上げ、
そして「いのちの記憶」はジブリのブランド力を得て、さすがにオーラを放っていました。
タイトル忘れましたが、ノリノリのダンスミュージックやセルフアンコール曲?のハイジとか・・・
見た目はまったく普通の彼女ですが、体のなかにたくさんの音楽や詞が詰められていそうで
とてもうらやましいです。
音楽担当はあくまでも久石譲先生なのでサウンドトラックではないのですが
「ジブリと私とかぐや姫」が明日発売。
売れるんだろうなあ。私も買いたいです。
予告編見たときは気づかなかったんですが、
「いのちの記憶」はおそらく口蓋のなかだけで声を響かせているようで、
けっしてエモーショナルには歌い上げないのが逆に心に沁みます。
ある程度歌えるひとなら、カラオケとかじゃなくて、アカペラで映える歌だと思いますよ(なんてエラそうに・・)
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば、さぬきの造となむ言ひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。
さて、本編は、昔古典の時間にならった「竹取物語」の冒頭部分から始まります。
「なむ~ける」の係り結びの文例でよくでてくるやつですよ。
さては、これも「風立ちぬ」同様、究極の大人仕様かと思ったら、
竹から生まれた赤ん坊はまったくの自然児で、まわりの子どもたちと野山を駆け回って遊びます。
まったく「アルプスの少女」そのもの。
ペーターに相当する「捨丸にいちゃん」という幼馴染も登場し、彼の兄弟やその他の子どもたちは
「その他大勢」としてキャラもなく、「わーい」といいながら、走っているだけです。
捨丸にいちゃんは、貧しいけど頼もしくて、一緒にキノコや木の実をとったり、キジを仕留めたり、
よその畑から作物を盗むことまで教えてくれます。(これ、いいのか?)
先日、本作の6分間の長尺の予告編(正確には幕間上映というのだそうです)を見たのですが、
すごい迫力に圧倒されました。
かぐや姫が怒りに満ちた形相で雪の中を走り続けるモノトーンの映像が主流で
そこに「姫の犯した罪と罰」なんてテロップがでるものだから、
とんでもない恐ろしい過去でもありそうな予感ですが、そんな怖いことはないのでご安心を。
まるで映画をまるまる1本観ちゃった気になるような予告編、いや幕間上映ですが、
本編はずいぶん違っていますから、どうぞ映画館へ・・・・
「コクリコ坂から」の時もチラシの裏に宮崎駿さんの思いがびっしりと書き連なっていましたが、
本作のチラシの裏にも、高畑勲さんが55年間温めていた構想が綿密に書かれていますね。
ネタバレ度高いので、読むか読まないかは自己判断ですが、
これを読む限り、目指しているのは、とてつもない哲学的なことでも、難しい話でもない気がします。
製作に8年かけたというのは、単に職人としてのこだわりで長くなっただけだから、
私たちが心してありがたく見なければいけない、というものではないと思います。
お金も時間もそんなにかけなくてもできたんじゃないの?
って大きな声じゃ言えませんが、正直そうも思います。
ただ、プレスコアリングという、声を先に録る方法をとったことにより、
昨年亡くなった地井武夫さんの元気な声が聴けるのはとてもうれしい。
彼の演じる翁(さぬきのみやつこ)は、竹取物語のストーリーを進めていく大変に重要な役なんですね。
一方の媼は、本音で姫と向き合い、翁に寄り添いながらも、形式的でなく心から姫を愛そうとする。
これはとても理想的な両親のあり方だと思います。
私は大人になってかぐや姫を読んだとき、翁と媼は、ホントはもっと若い夫婦なんじゃないの?って思ったんですが、
平均寿命も違うから60とか70でないことは確かですけど、年寄りである必然性ないです。
「30代~40代のセックスレスの子のない夫婦」にしたほうがつじつまがあうような気がしました。
私の実体験で言うと(娘たちも大きくなった30代後半でも)
可愛い赤ちゃんを見たりすると、お乳が張る感触はまだ残っていて驚きました。(出るわけないのに・・・)
だからもらい乳に行こうとした媼が、姫を愛するあまりお乳の張る感覚はとてもわかるのです。
だけど、おばあさんがお乳をあげてるあの絵はちょっと・・・
母性よりも不気味が勝ってしまって、悪趣味だったなぁ・・・
もう一つ余計なことをいうと、姫が初潮を迎えた時、
翁は「大人になった」と大喜びするのですが、あそこではぜひとも「月のもの」と言ってほしかった。
月経周期が月の満ち欠けと連動するのは、なんか神秘的ですものね。
残念。
この作品、ストーリーとしてはほぼ竹取物語そのままですが、
「たけのこと呼ばれて山を駆け回り、捨丸との淡い恋ごころ」というアルプスの少女的シークエンスは
お子様向けのサービスなんでしょうか?
あと、「月で犯した罪は何か」という謎にもなんとなく答えを出している気がします。
その謎を解くカギとして何回となく歌われるのが
「鳥、虫、けもの、草木、花・・・・♪」というわらべ歌です。
この5つは公達たちに要求した5つの宝ともリンクしてるくらいだから、多分これ、とても重要なんだと思います。
最初聞いたときは「コキリコの歌?」と思ったんですが、オリジナルのようです。
♪まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
♪まわって お日さん 連れてこい
♪鳥 虫 けもの 草 木 花
♪春 夏 秋 冬 呼んでこい
すべてのものが命をはぐくみ、季節が巡る・・・・
冬の間も死んだのではなく、じっと我慢して春の支度をして芽吹きの時を待っているこの人間の世界。
輪廻回生ともいえるこの営みは、天上の世界ではけっして許されないことで、
もともと姫の住んでいられる世界ではなかったのですね。
竹取物語は、まず竹の精のような登場シーンから、急に成長したり、育ての家を裕福にさせる不思議な力、
たぐいまれな美貌に和歌や琴をすぐにマスターする能力、有力者を手玉に取りやりこめる知恵者ぶり、
そしてラストの羽衣伝説・・・などなど、民話の要素を何重にも兼ね備えた超大作ですから、
当然アニメにしたところで複雑なのはしょうがないですが、
原作にない幼馴染を重要キャストにしたり、パタリロみたいなギャグ面の侍女で笑いをとったり、
お子様向けの改変は、アニメである以上仕方ないのかな?
「風立ちぬ」みたいに、賛否両論は出てくると思いますが、少なくとも、あちらほど「独りよがり」でないのは好感度↑です。
民話の大作をアニメ化することはとりあえず成功!だと思いますが、
これに味をしめて、御伽草子や昔話を次々にアニメにして、
民話の登場人物をことごとく自社のキャラクターにしてしまった「ディズニーの罪」を踏襲しないでほしいです。
(「風立ちぬ」はビミョーでしたが)ジブリのまったくのオリジナルのストーリーは「崖の上のポニョ」以来観ていないので
次回はぜひオリジナルの脚本で勝負していただきたいと願うのみです。