映画「清須会議」平成25年11月9日公開予定 ★★★☆☆

原作本「清須会議」 三谷幸喜 幻冬舎 ★★★★★




読んで♪観て♪



本能寺の変によって織田信長が亡くなり、

筆頭家老の柴田勝家(役所広司)と羽柴秀吉(大泉洋)が後見に名乗りを上げた。

勝家は三男の信孝(坂東巳之助)、秀吉は次男の信雄(妻夫木聡)を信長亡き後の後継者として指名し、

勝家は信長の妹・お市(鈴木京香)、秀吉は信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方にする。

そして跡継ぎを決めるための清須会議が開催されることになり、両派の複雑な思惑が交錯していく。(シネマ・トゥデイ)


台風26号接近のなかで行われた完成披露試写会。

秀吉役の大泉洋は強力な「雨男」だそうで、舞台挨拶でもさかんにつっこまれていました。

三谷監督・役所広司・大泉洋はじめ

鈴木京香・中谷美紀・小日向文世・佐藤浩市・妻夫木聡・寺島進・伊勢谷友介・剛力彩芽・坂東巳之助・・

登壇したキャストも豪華でコメントも楽しく、イベントとして見ごたえありました。


で、映画のほうなんですけど、公開前なのであんまりあらすじは書かないほうがいいのかな?

とおもいつつも、原作本ベストセラーですし、結末は歴史のなかで「ネタバレ」してますから、

まあそこそこの自主規制しつつ書きたいと思います。


原作を読んだのは1年以上まえでした。 → こちら

小説といってもモノローグで淡々と進む形は朗読劇みたいでしたが、

三谷さんが(ノベライズではなく)映画化ドラマ化のまえに本を出すのって初めてのことでは?


戦国時代なのに合戦も出陣も切腹もなし。

ただこの密室での話し合いで織田氏の継承問題と領地再分配が決定し、秀吉の天下取りへの布石となったわけです。

日本史でやった記憶はかすかにあるのですが、それほどメジャーでないこの会議をとりあげるなんて、

シットコムを書かせたら日本一の三谷さんらしい着眼点ですね。


きっと本を読みながら誰もが三谷劇のキャスティングなんかしちゃうと思うのですが、

西田敏行は秀吉か勝家のどちらかだろうなぁ・・・

お市の方が篠原涼子だったらイヤだなぁ・・・・

とか思っていたら、ぜんぜん外れていました。


この話の面白さは、だれが主役ということもなく、それぞれの人物のキャラ設定をはっきりさせ、

それぞれの立場の思惑がいろんな化学変化を生んでいく群像劇、ということなんでしょうが、

映画の方では完全に秀吉vs勝家(と仲間たち)という構図で、結局は黒幕は女性たち?

・・・みたいな話になっていて、これは単純すぎませんか?

三谷さんは自作を脚色演出するときはイチから書き直すと聞いていましたから、変化の度合いは予想内だったのですが、

豪華なキャスティングに翻弄されてしまった印象を受けます。


狭い密室で、ごく少人数のキャストで、小道具も衣装も予算も最低限・・・・

そんなガチガチの制約の中で、意識は部屋を飛び出し世界や宇宙まで駆け巡り、

はては歴史を動かすような壮大な展開が三谷劇の真骨頂ですが、

豪華キャストや高額予算を与えられて、逆にそれが生きてないというか・・・・

ステキな金縛り 」の時も同じことを思ったんですが、テレビ局とタイアップなんかしたらダメだよ~


とはいえ、「清須会議」の歴史背景なんてちょっとも知らなくても、見て楽しくなる映画であることは間違いないです。


秀吉役が大泉洋、というのは想像もつかなかったのですが、新しい秀吉像というか

(猿というよりモンキーって感じでしたが)斬新だったなぁ~

武士のプライドなんかないし、どぎつい名古屋弁で、いい感じで周りをもてなし心配りしながら、

虎視眈々と天下を狙っている・・・

妻ねねの内助の功ぶりといい、ホントは腹黒でも天真爛漫で垣根をつくらないこの夫婦に共感してしまいました。


いちおうこの作品の主役は役所広司演じる柴田勝家のようなんですが、

役所さんがねぇ・・・

「笑の大学」の検閲官のようなまじめな役ならともかく、「有頂天ホテル」でははじけた演技があまりに痛くて見るに堪えず・・・

もう三谷コメディには出ることはないと思っていたら、今回主役で復活!

合戦場で真価を発揮する武骨で愚直な柴田勝家。

ここでは丹羽の助言無しではなにも決められず、空気も読めず、脳内メーカーは「市」だらけの恋する親父の設定で、

ドラマの中では「いい人」より完全に「ダメな人」のほうへ振れるので、彼が主役っていうのはどうなんでしょ?

あの「らっきょ」ネタも、原作だと何回読んでも爆笑だったんですが、クスリとも笑えなくてビックリ。

ここは西田敏行にして、見かけはアレだけど「ダメで可愛い」キャラで押した方が良かったと思うんですが。

実際の西田敏行は「ステキな金縛り」リンクの驚くほどのチョイ役でした。


「目が泳いでる芝居をしたら日本一」という佐藤浩市に日和見主義の池田恒興・・・

という納得のキャスティングも、「腹にいちもつ」のいちもつが何かがよくわからなくて、面白さがつたわりません。


キャストのことをいいだすときりないからやめますが、

原作で唯一、屋外が舞台となる「イノシシ狩り」。

映画化で一番楽しみにしていたシーンなのに、「旗獲り合戦」にトーンダウンしてたのはなぜ?

問題は技術的なこと?動物虐待とか?


公開日がいよいよ近くなったら、きっと、監督と26名のキャストたちが分散してキャンペーンはるんだろうなぁ~

フジテレビなんて、朝から晩までほとんどの番組で誰かが番宣してそうですよ。


歴史のことは詳しくないですが、ストーリーはほぼ史実にそった流れで、

この場に松姫が登場すること、三法師が武田信玄の孫というとこだけ「そうだっけ?」と思いましたが、

調べたらそういう説もあるそうで、あながちウソではないようです。

歴史通の人がみたらもっとつっこみどころいろいろありそうですが、

逆に「秀吉」と「信長」しかしらない人でもちゃんと意味は分かると思うので、

歴史に興味をもつきっかけになるかもしれませんね。