映画 「スーサイド・ショップ」 平成25年9月7日公開 ★★★☆☆
原作本 「ようこそ、自殺用品専門店へ」 ジャン・トゥーレ 武田ランダムハウスジャパン★★★★☆
どんよりとした雰囲気が漂い、人々が生きる意欲を持てずにいる大都市。
その片隅で、首つりロープ、腹切りセット、毒リンゴといった、自殺するのに便利なアイテムを販売する
自殺用品専門店を開いているトゥヴァシュ一家。
そんな商売をしているせいか、父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンと、
家族の誰もが一度たりともほほ笑んだことがなかった。
人生を楽しもうとしない彼らだったが、無邪気な赤ちゃんが生まれたことで家庭内の雰囲気が少しずつ変わり始め……。
(シネマ・トゥデイ)
人生に絶望した男がひとり、走ってきたバスに飛び込もうとしたその瞬間・・・
もう一人の男ががっちりと体をつかんで引き戻してバスはとおりすぎ・・・
「公共の場所での自殺は禁止されているんだぞ」
「事故処置の高額請求が遺族にまわる」
「死に損なえば罰金払わされた上に、一生車いすだ」
そして、人に迷惑かけないで死にたければこのお店をおすすめ・・・
と連れてこられたのがトゥヴァシュ家の経営する自殺用品店でした。
ギフトショップかおしゃれな雑貨屋のような店内はそこそこ賑わっており、
首つりロープ、毒りんご、タランチュラ、ナイフに毒ガス、ナパーム弾・・・と様々な自殺用品がならんでいます。
絶望の危機に陥ったら
潔く死ぬのがイチバン♪
賢明に大胆に確実に死ねます♪
万一死ねなかったときは返金します♪・・・・
なんていう縁起でもない歌をミュージカルよろしく一家で熱唱!
かといって、楽しげというわけでもなく、ネガティヴな空気に満ちたトゥヴァシュ家の4人。
ただ、商売はけっこう良心的で、客の要望を丁寧に聞いて望みどおりの死に方を提案し、
予算もゴージャスなのからエコノミータイプ、一文無しにはビニール袋を無料で。
二人の子どもたちが客の後を追い、失敗成功を見届けて報告して、
上手く死ねたら帳簿にOKのスタンプを押すところまで追跡サービスしています。
「切腹用日本刀に着物付きで800ユーロ」、というのが豪華版のほうのセットなんですけど、
これって素人がチョイスするアイテムじゃないと思いますが・・・
刀はあれじゃ長すぎるし、介錯してくれる人いなかったら、ものすごく苦しいんでは?
ところで店のあるじの名前はミシマ。
最初はオハラとかサトウ、ジローやナオミのように、「日本人みたいな外人名」だとおもっていたのですが、
これ、あの割腹自殺の三島由紀夫からとっているのですね。
というのも、長女のマリリンはマリリン・モンロー、長男のヴァンサンはヴィンセント・ヴァン・ゴッホと
自殺した有名人から名前をつけているようなので・・・・
「不吉なこと」は少量だと不愉快なスパイスですが、あんまり立て続けだと、ブラックユーモアとして笑えます。
お誕生日がめでたいのは「寿命が一年縮まっておめでとう」とか
お客は二度と来ないのが当然なので、帰るときには「また」ではなくて「さようなら」という。
そうすると、お得意様はないから、スタンプカードとか顧客リストとかもないんでしょうね。
リピート客が来ないというのも、なんか客商売としてはビミョー。
冒頭で妻のルクレスは臨月だったのですが、月満ちて生まれた二男のアランは
いつもニコニコ笑っているこの家には似つかわしくない赤ちゃん。
アランの笑顔に癒されて自殺を思いとどまる客も現れて商売あがったりです。
大きくなってからも性格は陽気でポジティブ。
友だちと楽しい悪戯に興じ、次第に姉のマリリンにも心の変化が訪れます。
一方で、父のミシマは経年のストレスから心を病んでしまいます。
ストーリーとしては(ほぼ予想通り)このアランの存在が家族や町の人たちを変え、
「生きてこその人生」を謳歌し、灰色の街も明るさを取り戻す・・・・的なありきたりなものですが、
そうでないとPG12くらいでは劇場公開できない作品になってしまいますね。
この「自殺用品専門店」という設定。
それだけでも何時間もあれこれ考えられそうです。
実際には「なんちゃって雑貨の店」やインターネット店舗以外には日本では考えられないですが、
ホントにあったら、すぐ警察に連絡がいって、監視がつくんだろうなぁ~
とにかく日本は安楽死をふくめ、理由を問わずすべての自殺がNO!だから、
まことに「死にづらい」国であります。
とりあえず、↑に出てきた「公共の場所での自殺禁止」の条例とかつくったほうが
駅や踏切に飛び込んで電車を遅らせたり、屋上から飛び降りて歩行者を巻き込んだりしないとおもうんですが、
そうすると「公共の場所でなければいいのか?」ってことになってまずいんでしょうか?
鉄道会社に払う賠償金の一覧表とか、凄惨な現場写真とか、死に損なった時のさらに悲惨な人生レポートとか・・・
自殺しようとする人を力技で引き留めようとしたらいろいろ手段はありそうですが、
「命の大切さ」を訴えるのが唯一無二の手段で、それ以外はダメのようですね。
でも「あなたを愛する人たちを悲しませることになる」というよりは
「こんな姿をさらすんだよ~」とか
「こんなにお金払うんだよ~」とか言った方が即効性ありそうですが・・・・
先日、自宅(アパート)に放火し、近所の家にトラックでつっこんで、その家の人をのこぎりで殺そうとして
自分は二階ベランダで首つろうとしたら通行人に助けられちゃった・・・という事件が川口でありましたが、
これ、(報道されているのがすべて事実だとしたら)サイテーなパターンですね。
民事でも刑事でもかなりの刑でしょうし、なにひとつ問題も解決されず、10倍増し!という感じ。
この「自殺用品専門店」が近所にあったらよかったのにね。
自分の命の価値が希薄な人は他人の命の重さも尊重できない・・・というのは事実でしょうから
命の教育、大いにけっこうなのですが、
死ぬことってもっと表舞台で話題になっていいんじゃないの?って思います。
私も中学生の時、毎日毎日死ぬことばかり考えていた時期がありましたけど(事実です)
自殺は自分がこの世からフェイドアウトすることでも、最初から自分の存在が消えるわけでもなく、
死ぬときも死んでからも、結局はいいことなんてありゃしない!
というのが考えて考え倒して出た結論なので、それ以来死のうと思ったことは一度もありません
最悪までは追いつめられていない状態のうちにいろいろ考えておくことはすごく大事だと思います。(実体験です)
「完全自殺マニュアル」なんて、すごく良い本だと思うんですが、学校の図書室には置かないんでしょうねぇ~
そうそう、R12ということは小学生でも親と一緒なら見られるんですよね?
文部省推奨にはならないでしょうが、オススメします。
最初のイメージでは「アダムズ・ファミリー」とか「コープス・ブライド」のようなダーク系のアニメのようですが、
ポップな絵も多く、音楽にもあふれていて、むしろ「ミュージカル」と言ってもよいほど。
エンターテイメントとしても楽しめます。
ただ、3Dの効果にはちょっと疑問で、たしかに立体ペーパークラフトみたいには見えましたが、
それよりは音楽をいいスピーカーで聞きたい感じでした。
ヒューマントラスト有楽町で3Dを見たことなかったので、当然2Dだと思っていて近眼メガネをかけて行っちゃったら、
渡された3DメガネがXpanD方式でやたら重く、重ねメガネで心底くたびれてしまいました。
原作はフランスでは2007年のベストセラーだったとか。
ほぼ映画と同じですが、最後の一行で大どんでん返しがあり、
あ、やっぱりブラックだわ~と思いました。