映画「民族の祭典」 昭和15年6月公開 ★★★★☆



読んで♪観て♪

「美の祭典」と併せて“オリンピア”二部作となる、

36年ベルリン・オリンピックの記録映画。ギリシャ古代遺跡に始まり、

その彫刻と同じようにポーズをとる裸体美の描写などから第三帝国の美の基準がかいま見えもするが、

同大会において初めて試みられたという聖火リレーの象徴性に満ちたモンタージュなど、

リーフェンシュタールのビジュアリストとしての力量にやはり感嘆せざるを得ない。

ヒトラーご満悦の開会式に続いて、ここで見られる競技と言えば陸上だけだが、

その見せ方にも工夫が凝らされており、100mを走者と同じ速度で併走する移動撮影装置で撮られた映像など、

鶏が先か卵が先か……ではないが、競技と映像の主従関係が逆転した感を抱かせる。

この大会での最大のスターだった“黒い弾丸”、アメリカのオーエンスの勇姿はさすがに印象深い。
<allcinema>



タイトルからは「総天然色!!」のイメージだったんですが、

なにせ70年以上前の映画ですから、もちろん白黒です。

オープニングはアテネからの聖火リレーを幻想的に描いていて、当時としては画期的だったんでしょうが、

いかんせんモノクロではちょっと見づらい印象。

開会式も国旗やブレザーの色もわからずちょっと残念。

その中で日本選手団の掲げる日の丸はモノクロでも一目瞭然!

でもこのアジアからの数少ない選手団のユニフォームは、地味な軍服のようで、かなりしょぼい。

このあと戦争で負けて、オリンピック出入り禁止になったのに、

戦後わずか20年足らずでオリンピックを開催できた日本人のタフさに脱帽です。


映画「オリンピア」は一部の「民族の祭典」二部の「美の祭典」の二部構成。

今回観た「民族の祭典」には開会式と陸上競技が収められています。

日本人選手ももちろん活躍。

一番有名な「前畑がんばれ」は残念ながら「民族の祭典」にはおさめられてませんでしたが、

三段跳びで世界新を出して金メダルをとった田島直人はしっかり映っていました。

銀メダルと銅メダルを分け合った棒高跳びの西田と大江も。

当時から花形競技だった100m走を制したのはアメリカのJCオーエンスでした。


「オリンピック総集編」のように、メダルをとった演技のつぎはぎ画像ではなく、

いい記録を残せなかった選手や競技開始を待つ選手たちの様子、観衆たちの反応とか

単なる記録映画にとどまらず、臨場感にあふれた生き生きとした作品です。

先日観た「東京オリンピック」は完全にこのあたりパクッてますよね。


優勝した演技は途中からスローモーションになったりするんで、事前に多少はバレちゃうんですが、

このスローモーションという表現自体も、当時としては画期的だったのではないでしょうか。


ラストを飾るマラソンは、有力選手が途中棄権する中、当時日本の植民地だった朝鮮の孫選手が優勝します。

たしか1988年のソウルオリンピックの開会式に70歳を超えた本人が登場し、

「(自分は日本人と思っていないのに)日の丸をつけて走るのが辛かった」的な発言があって、

日本人としてはこれを聞くのもつらかったのですが、

この映像では、となりのイギリスの選手と話しながらけっこう楽しそうに走っていて、ちょっとホッとしました。

銅メダルも日本の南選手で、電光掲示板には「NAN」となっていたので、彼も朝鮮出身のようですが、

なんか全然知らなくて、ごめんなさい、と思いました。


この映画、一般的には「ナチス礼賛映画」といわれてあんまりメジャーじゃないですが、

たしかに開会式ではヒトラーが度々映っていましたけど

フツーにスポーツやアスリートたちの素晴らしさを伝えるいい映画でしたよ。

極東から地味に参加の日本選手は体格やユニフォームなんかも明らかに見劣りしますが、

(同盟国ということもあるでしょうが)温かく好意的に描いてくれています。

すくなくとも「東京オリンピック」のように、

「この東洋人の平べったい顔で笑いをとろう」なんて思ってないです。


「ユニフォームがしょぼい」というのは実は私の思い込みなのかもしれませんが、

これは数年前に昭和館で見たある展示があまりに印象的だったので。

(以下、映画とは全く関係のないことを書きます)



「オリンピック 栄光とその影に ~アムステルダム大会から東京まで~」という平成20年の特別展で、

そのなかにあった展示がこれ↓


読んで♪観て♪

これは1932年のロス五輪で日本男子選手が着用した競泳水着の本物です。

日本国内ではフンドシで泳いでいたんですが、当然それじゃオリンピックには出られず、

合成繊維がない当時は競泳水着は絹製で高価だったため、全員分が用意できず、

競技を終えたら裏で脱いで次の人がそれを着て泳いだそうです!

年月がたったこともあるでしょうが、サイズもかなり小さく、すそもペロンペロンで、

今にもポロリ?してしまいそうで、こんな水着でちゃんと実力を発揮できたのか、

今更ながら心配になりました。

この展示を見たときはスピード社の高速水着が話題になってたころなので、ものすごく強烈に印象に残っています。


この水着は画像検索ではまったくヒットせず、たしか「秩父宮記念スポーツ記念館所蔵」と書いてあったことを思い出し、

そこのサイトにいったら出合うことができました。

常設展示しているそうなので、興味があったら千駄ヶ谷の記念館でご覧になってください。


また、開会式の映像からは「軍服みたいでしょぼい」と思った日本選手団のユニフォームの展示もありました。

画像がとりこめないので、記念館のサイトからどうぞ→ こちら

意外にもシックで素敵なユニフォームでしたが、こんな帽子をかぶってモノクロ映像だったら

やっぱり軍服に見えてしまいますね~



2020年の東京オリンピック開催が決まって、国内は浮かれてますけど、

前回のオリンピックを実現した人たちの努力は今以上でしょうし、

オリンピックの歴史を振り返るいい機会かもしれません。