映画「俺俺」 平成25年5月25日公開 ★★★☆☆
原作本「俺俺」 星野智幸 新潮社
家電量販店で働く均(亀梨和也)は、何の変哲もない郊外の街で平穏に暮らしている。
彼の悩みは、実家の団地に顔を出した際に母親に文句を言われたり、
職場で上司のタジマ(加瀬亮)にいびられたりすることぐらいだった。
平凡な日々に飽き飽きとしていたある日、
ひょんなことでオレオレ詐欺を行った均の前にもう一人の自分が現われ……。(シネマトゥデイ)
いわゆる「振り込め詐欺」の新しい呼び名を公募して結局「お母さん助けて詐欺」になったそうですが、
これってどうよ?って思いますよね。
「おれおれ詐欺」というのは、「振り込め詐欺」が定着した2004年以前の呼び方だそうで、意外に古いんですねっ!
ネーミングの斬新さではこれが一番ですかね?
原作の「俺俺」は雑誌「新潮」に2009年から2010年にかけて連載されたそうで、「おれおれ詐欺」にインスパイアされたのは間違いなさそうです。
家電量販店で働くフツーの若者均が、他人の携帯にかかってきた他人の母から90万円の送金を受けてしまう。
結果として「成りすまし詐欺」を働いてしまった均のまわりで、世の中が少しずつ変わって見えるようになる・・・って話です。
基本不条理小説なので、世の中に「俺」がどんどん増殖し、一方でそれを「削除」する動きもでてきて
次第に収集がつかなくなっていきます。
自分が自分であると認識することは世の中で唯一絶対のことなのに
それさえもが他者との境がなくなってしまう・・・
こういう視点は文学や映画の世界ではそんな珍しいものではないですが、
三木聡独特の脱力の演出で楽しい作品になるはず、でした。
俺だらけの「俺山」のゆるい心地よさとか、いつものレギュラーメンバーのギャグとか楽しませてもらいましたけど、
基本は「亀梨くんの独り舞台」なので、なんかいつもの三木さんの映画とは違うって感じでした。
彼は想像以上の器用さで、すごく頑張ってたとは思うんですが。
33人の俺を演じ分ける、というのが「売り」の割には、ジャニーズ事務所だからか、
使える画像がほとんどなくて残念。
33人といっても、実際の「主要俺」は↑の三人。
左から、お調子者のいまどき学生のナオ、
エイデン勤務の永野均、
冷静なサラリーマンの大樹。
この三人は同じ画面で映ることが多いから、それだけでも撮影はけっこう大変だったかも。
・・・なんて思わせる時点で、個人的には楽しさ半減なんです。
33人をすべて認識できるか?とか、34人目の俺が実は○○○に登場していた、とか、
そういうプロモーションもあんまり好きじゃないです。
三木さんの映画は「副音声付きのDVD」で見るのが一番面白いと思っているので、
DVDになったらもう一度観るかも。
亀梨人気でそこそこヒットはすると思いますが、
こういう題材、日本よりヨーロッパなんかで受ける気がします。