映画 「コズモポリス」 平成24年4月23日公開 ★★★☆☆
原作本 「コズモポリス」 ドン・デリーロ 新潮文庫
28歳という若さで巨万の富を手に入れたニューヨークの投資家のエリック・パッカー(ロバート・パティンソン)。
白いリムジンの中で金を動かし、天国と地獄が隣り合わせで一瞬先は闇という投資の世界に生きながら、
一方ではセックスの快楽に夢中になっていた。
しかし、エリックの背後に暗殺者の影が忍び寄る。さらに、自分自身わかっていながらも、
破滅の道へと歩みを進めるエリックは……。(シネマ・トゥデイ)
原作は何度もノーベル賞候補になっているというドン・デリーロの小説。
当然難解で、私には全く理解不能・・・・な状態で映画館へ。
エリックは相場のアナリストで財産を築いた若き成功者で、新婚の妻は大富豪のエリーズ、という絶頂状態。
「リンカーン弁護士」という車で仕事をする弁護士がいましたが、
彼もハイテク機器搭載の白いリムジンであらゆることをすませます。
乗車時間はエリックのほうがはるかに長いです。
とにかく生活活動はほぼすべてがリムジンの中なのですから。
「床屋にいきたいんだ」
ある日の彼のメインのスケジュールはリムジンに乗って床屋にいくこと。
その日は大統領がきていて交通規制がひかれ、有名人の葬儀や事故が重なって
車は歩くより遅いスピードでのろのろ走り続けます。
彼の車をみつけていろんな人が乗り込んできて、ひとしきりしゃべって去っていくのですが、
なんだか禅問答のようで意味不明。
美人の妻がありながら中年女(といってもジュリエット・ピノシュですが)とSEXしたり、
医師の定期健康診断を毎日(!)受けたり・・・
↑の画像は、たしか車の中で部下の女性と話をしながらも下半身は医師の直腸触診をうけている
・・・という奇妙なシチュエーション。
健康に気をつかうあまり、「一日一回健康ドック」という徹底ぶりなんですが、
これ必要か?って思いますが・・・
たしか原作では、彼は毎日の筋トレで身体もパーフェクトに鍛え上げている、と書いてあったので
きっと今回ばかりは大胸筋もばりばりに作りあげてきてるのかと思ったら、いつものなまっ白いロバート・パティンソンでした。
世の中には彼の顔が大好きな人が多いのでしょうね。
月刊スクリーンの付録なんかには彼のポスターやブロマイドがきまって付録につきますけど、実は私は大の苦手です。
中途半端な胸毛とか、そり残した髭とかも、もう勘弁してほしい(失礼・・)
本作では彼はまさに「出ずっぱり」で。せりふの量も膨大。
彼を一日ずっとともに過ごして、食事をしてSEXしてトイレのシーンまで見ちゃったらもう、
他人とは思えなくて、好きになれないとしても「耐性」はできた気がします。
彼以外に若い男性だれも出ないし、もうこれはあきらめの境地でしたね。
まあいろんな人たちが登場しては退場していくんですが、
マチュー・アマルリックとかポール・ジアマッティが出ると、いきなり面白くなるから不思議。
リムジンの中からはNYの街中がゆっくり流れ、まるでそれは虚構の別世界のようです。
暴動が起こり、焼身自殺する者があらわれても、リムジンの中は安全で平和な空間です。
キイひとつで高価なものを買ったり、巨万の富を得たり、逆にすべてを失ったりするものの
バーチャルな世界でおこっていることのように実感はなく、
食欲や性欲が満たされた時の快感や体を傷つけたときの痛みをいつも求めているかのように思えます。
リムジンで2マイルほど走って床屋に行き、車をおりる。
その彼の人生を一変させる(おそらく)最後の一日を描いた・・・・ということでは
コリン・ファースの「シングルマン 」に近そうにも思えます。
あちらは隅々までスタイリッシュに仕上げていましたが、
「コズモポリス」は、いちいち理屈っぽくて、しかも下世話です。
不愉快ですが、意外と面白かったりして、人によって評価が分かれそうですね。
「預言者」とまで言われるほど情報分析で未来を予見できる彼でも
自分という人間はデータ化できない存在です。
スタンガンを打たせたり、自分で手を打ち抜いて痛みを実感しようとあがき、
命がねらわれているのを知りながら危険にむかっていこうとするのは
共感はできないけれど、そんなものかな、とも思います。
ところで「前立腺が非対称」というのは深刻な状況なんでしょうか?