映画 「L.Aギャングストーリー」 平成25年5月3日公開 ★★★★★
原作本 「L.Aギャングストーリー」 ポール・リーパーマン 早川文庫
1949年ロサンゼルス、
ギャング王ミッキー・コーエン(ショーン・ペン)はドラッグや銃器売買、売春などで得た金で街を牛耳っていた。
警察や政治家も意のままに操るコーエンに誰も歯向かえずにいたが、街の平和を取り戻すべく6人の男たちが立ち上がる。
ロサンゼルス市警のジョン・オマラ(ジョシュ・ブローリン)とジェリー・ウーターズ(ライアン・ゴズリング)らのチームは、
身分を隠し闇社会に戦いを挑んでいく。(シネマトゥデイ)
ブラピの「ジャッキー・コーガン」観る気満々でいたのですが、
どうやら盛り上がりゼロの薄味映画だそうで、かわりに今日公開のこちらを鑑賞。
こちらも実在の大物ギャングのお話なんですが・・・・もうお腹いっぱい。(いい意味で!)
ジェイソン・ステイサムとかダニエル・クレイグみたいなアクション要員がそろっているならともかく、
大物・ベテラン・若手・・・スターのなかでも演技派と言われる人たちがめちゃめちゃ戦います。
ミッキー・コーエンはユダヤ系の元ボクサーで、ロスに帝国を築き上げた凄腕のギャングの親分。
悪党でもそこらへんのチンピラとは格が違うし、こだわりや美学もあって、なんかクールなんです。
ショーン・ペン演じるコーエンは、十分魅力的なキャラクターで、
「アメリカンギャングスター」のモーガン・フリーマンとか
「ヒート」のロバート・デニーロみたいに、映画ではパブリックエネミーズのほうが主役なことが多いんですが、
主役は完璧にロス市警のジョン・オマラ率いる凸凹警官グループ。
これはゆるぎないです。
1940年代末、LAはひとりのギャングにすっかり占領されていました。
「ローレン・バコールにそっくりだ」
「カメラテストするから来てください」
言葉巧みにうぶな女性をコーエンの売春宿に引き入れるのを目撃したジョン。
同僚の制止を振り切って一人で乗り込みます。
ポン引きたちを逮捕して女性を救い出して・・・・
普通ならお手柄なんですが、
警察も判事もコーエンに買収されているから、立件すらできず即釈放。
この恐れ知らずの逮捕劇にコーエンは動揺することもなく
「奴は女を救った。英雄だよ」
そして
「すべて燃やして保険金を手に入れる」
へまをした部下も情け容赦なくその火の中へ・・・・
そう、この映画、R15だけあって、グロい描写ありますのでご用心。
「身体真っ二つ」とか「ドリルでギャー」とかの凄惨なリンチは、裏切り者だけでなく、観客にも覚悟を決めさせてますね。
それに、最初のシーンなんて、あのショーン・ペンのマッチョなボクサー姿ですよ。
回想とはいえ、激しいファイトシーンからはじまりますから、
これでもう、ここではいつものショーン・ペンでないことも一瞬でわかります。
「悪を栄えさせるのは、善人が何もしないからだ」
ひたすら正義に燃えるジョンも、家に帰れば身重の妻コニーが待っています。
「危険なまねはもうしないでね。貧しくても私は平気」
「私は英雄よりやさしい夫が欲しい」
このあたりのセリフは一般的な妻なんですが、
このコニーという女性、すごくメンタル強くて、おどろくばかり。
ロス市警パーカー本部長からコーエン帝国の抹殺のための極秘部隊の人選をまかされるジョンですが、
「夫は勇敢だけど優先順位がわからないの」
「だから私がメンバーを全部選んだのよ、あのメキシコ人以外は」
そう、ジョンの性格を知り尽くした妻が候補者の中から、夫を助け支えてくれるチームメイトを選んだ、ってすごいですね。
早撃ちやナイフ投げの達人とか盗聴の名手とか、少数精鋭のギャング部隊は、バッジをはずし、警官の特権を捨て、
愛するLAをコーエンの魔手から救い出すべく、乗り込んでいきます。
強盗だったり無差別発砲だったり、やってることはほかのギャングと変わらないので
普通に逮捕されちゃったりするんですが、警察はコーエンの申し出に応じて彼らを引き渡す段取りに。
それは何とか免れるものの、いつ死んでも不思議じゃないほどの銃撃シーンの連続です、
カーチェイスもクラシックカーだから、CG満載のいつものとは大違い。
拳銃とかファッションとか音楽とか家の内装とかも古き時代をほうふつとさせられます。
ともかくやってることはギャングそのものだから、
ライバルのドラグナとかが疑われて殺されちゃうのは気の毒でしたが、
まったくお金に手をつけていないことから、コーエンは警察官を疑い始めるのですが・・・
ミッキー・コーエンは実在の人物だそうですが
余裕あるように見せて、常におびえている小心者だったり、
金儲けの才覚とか、撤収のタイミングの取り方とかに優れたやり手の親分。
彼の愛人で、チームのおしゃれ番長ジェリー(ライアン・ゴズリング)とも関係のあるグレイスもまたメンタル強い女性で
彼女が報復を恐れず「殺人の証人」となることを申しでたから、コーエンを裁判にかけることができたんですね。
最後のほうで、ジョンの留守宅がコーエンの手下に襲われ、妊婦のコニーがあわや・・・
というシーンがあるんですが、ここでも彼女はすごく立派で、思わず拍手、です。
ギャング映画は観客層が男性に偏るので、出てくる女性はたいていベッドシーン要員で
「脱いでなんぼ」というのが腹立たしかったんですが、この映画は違いますよ。
なので、女性もせひ見てくださいね。
原作本はちょっとだけ読んだんですが、こちらはノンフィクションなので、本物の写真とかも乗っています。
コーエンとパーカー本部長は実在、というのは聴いていたんですが、
主人公のジョンオマラと妻のコニー、コン・キーラー、ジェリー・ウーターズ、ジャック・ウエイレン・・・
みんな実在の人物でした。
それならエンドロールで写真をだせばいいのに、と思いましたが、
昔懐かしい絵葉書みたいなエンドロールも洒落ていました。
いつもはちょっとズレたおかしな性格の準主役の多いジョシュ・ブローリンが
まっすぐで男気にあふれたジョンを好演。
いろんな出身地の個性豊かな俳優の競演も楽しめるし、すべてが楽しい。
こういうのはさすがに邦画はハリウッドに太刀打ちできませんね。