映画「図書館戦争」平成25年4月27日公開 ★★★☆☆
原作本「図書館戦争」 有川浩 メディアワークス
メディアに対する取り締まりを正当化する法律“メディア良化法”が施行されてから30年がたった日本。
読書の自由を守るための自衛組織“図書隊”の隊員にかつて助けてもらった笠原郁(榮倉奈々)は、憧れの図書隊員になる。
担当教官・堂上篤(岡田准一)の厳しい指導を受け、女性で初めて図書特殊部隊に配属された郁。
そんなある日、図書隊とメディア良化委員会の対決が避けられない出来事が起きる。(シネマ・トゥデイ)
図書館の入り口やカウンター周りでこんな掲示を見たことありませんか?
私の利用している図書館にはたいてい掲げてあるから、掲示義務があるのかな?
有川さんはこの「団結してあくまで自由を守る」という一文に刺激されてイマジネーションを膨らませたんでしょうが、
この宣言自体はかなり現実離れしていて、どこの世界?と思ってしまいます。
あえていえば、現実的なのは第3項。
利用者の個人情報はもとより、どんな本を借りたり予約しているかについても秘密にすることですが、
子どもが借りてて返却日過ぎている本のタイトルを親にも教えられなかったり、
返却された時点で貸出履歴は消えてしまうので、何を借りたかも記録が残らず、
逆に利用者側からはけっこう不便だったりするんですけどね。
「検閲」なんて言葉がリアリティを失うほど何でも自由に読める環境は、先人たちの努力の証なのかもしれませんが、
本気で図書館の自由を言いたいのなら、古代エジプトのアレクサンドリア図書館までさかのぼらなくては。
焚書や知識人の迫害がまかり通る世の中でこそ、この宣言が輝きを放つはずです。
この悲劇は映画にもなっています→ 映画「アレキサンドリア 」
正化31年というのは平成31年に相当するようで、今から6年後。
この近未来にメディア良化隊と称する軍隊が図書館に攻め入って図書館隊と衝突するんですけど、
おしゃべりも飲食も携帯の着信音もNGのはずの図書館内に土嚢を積み上げてドンパチやるわけです。
大量の重火器使用の割には人的被害は少なめですが、施設も蔵書も大損害。
ホントに見るに堪えない図で、無駄に長い戦闘シーンは早送りしたくなります。
訓練や戦闘は自衛隊の教えを仰いだようで、そこそこのリアリティあるのがまた悔しいです。
せめてもっとゲーム感覚にしてほしい感じ。
アニメ版の「図書館戦争革命のつばさ」も(ブログ書いてないけど)見ています。
ベースになっているのが続編のほうの「図書館革命」で、「堂上が実は○○だった」というのがわかった後なので、
堂上と笠原のベタベタした関係が非常にうざくて、かなりいらいらしました。
実写のほうはエピソード1の「図書館戦争」の映画化なので、二人のツンデレな感じが面白くて、アニメ版よりは多少はマシ。
笠原の榮倉奈々、堂上の岡田准一、役名忘れたけど田中圭、福士蒼太・・・
配役はイメージにあっていて文句なしです。
そして写真だけですが、亡き児玉清まで登場して胸があつくなりました。
その昔「ドジでのろまなカメです」の大映テレビ「スチュワーデス物語」の鬼教官と新人スチュワーデスの話がありましたが、
やってることはそれに近い、なんかお約束の「プレイ」みたいなんですが
これだけの「茶番劇」をここまで爽やかに演じられるのって、逆に凄い!と思いました。
真摯にひたむきにやってるのが伝わって好感度↑。
だけど、お話がね。
作者が有川浩さんですからあんまりなこと書きたくないんですが、
あの「図書館宣言」に触発されただけなら、ショートショートかせいぜい中短編1本にしとけばいいのに
こんなとんでもなく長いシリーズになったのはなぜ?
ラノベの読者層に受けたのか?
あるいは、検閲に大反対のどこかの出版社とかどこかの勢力に強力に後押しされたのか??
良化隊の隊員が明らかに人殺しの形相で発砲してきたり、
泣いて嫌がる幼児の手から絵本を取り上げるシーンありましたが、
あちら側の言い分はまったく説明なし。
どれだけ悪者に仕立てあげたらいいんでしょう。怒る気にさえなりません。
メディア良化法というのは、おそらくそれぞれの自治体で制定されている青少年健全育成条例なんかを
100倍も1000倍も誇張してるんでしょうけど、
図書館利用者の立場で言うと、逆にもうちょっと頑張って規制してくださいよ!って思うくらいです。
具体的にタイトルは言えませんが、ちょっと子供には見せられないような書籍、
かなりの割合で図書館で閲覧できます。
さすがに閉架になっていたりしてますが、それでも予約はできるし、禁帯だって、閲覧は可能です。
今のなんの規制もないぬるい自由にも終わりがやってくるかもしれない。
と危惧することはあっても、こんな絶対にありえない悪の軍団が相手では危機感すら起きません。
結局、目指したのは、図書館と軍隊というミスマッチな意外性?
ミニタリー風味のラブコメ?
あんまり考えずにぼんやり楽しむのが良いかと思います。