映画 「外事警察 その男に騙されるな」 平成24年6月2日公開 ★★★★★

原作本 「外事警察」 麻生幾 日本放送出版協会



読んで♪観て♪

東日本大震災の混乱が続く2011年の日本。

原子力関連部品のデータが、某大学の施設から盗み出される事件が発生する。

警視庁公安部外事課の住本は、不正輸出にかかわっているとマークしていた奥田交易に目を付け、

その社長夫人・果織の経歴や行動パターンを調査。

彼女を協力者(=スパイ)に取りこむことに成功した住本だったが、何者かに刺されてしまう。

やがて、その襲撃が日本にひそんでいる韓国人工作員から警告であることが判明し……。
                                              (GOO映画)


「臨場 劇場版」とほとんど同時公開で、どっちを観ようかと迷った挙句

(テレビ版は両方とも観ていなかったので)

原作者の「横山秀夫vs麻生幾」で「臨場」のほうを選んで大失敗!

同じ警察小説でこうも違うかと思うくらい、「外事警察」の大勝利ですね。


国際テロを水際で未然に防ぎ国益を守る・・・

FBIやCIAに比べたらかなり地味ながら、その存在が目立たない分、

ミステリアス性の高い日本の外事警察。

「公安の魔物」といわれる住本はさすがに「ドラマの主役」っぽいですが、

武器の携帯とか発砲行為とか(諸外国に比べたら)極端に制約された中で

重い任務を遂行しなくてはいけない彼らが

今のこの時もひっそりと働いているおかげで今の日本があるのかと

ちょっとぞくぞくしてしまいました。


尾野真千子と真木よう子という、最高にクールな二人をWキャスティングしたのがいいですよね。

もちろん渡部篤郎の抑えた演技も良かったです。

荒々しく恫喝したり、(臨場みたいに)会議中にカブをかじったりしなくても、

丁寧な物腰でやさしく説得する場面と、冷たく言い放ち判断を強要する場面との落差で

充分に迫力は感じられました。

銃撃シーンもちょっとはないと映画として物足りないですが、

これは、韓国の国家情報院の捜査官たちがちゃんと発砲してくれていました。


日本と韓国の国益が全く一致することは考えにくいですが、

(北朝鮮はともかく)韓国を悪者にすることもなく、

ちゃんと無難に見せ場を演出していたのも納得。


ハードボイルドな警察ドラマなんですが、

通常のミステリー以上の「騙し」を何重にも仕掛けてくるから

目でも頭でも楽しめます。


映画の中に「東日本大震災」関連をわざとらしく入れてくるのは個人的に嫌いなんですが、

本作では「事件」を挿入しただけで、

「悲劇」とか「希望」のようなメンタル抜きだったので気になりませんでした。


「日本は核兵器にはあくまでも無縁でありつづける」

ときれいごとを言い張る政治家たち。

それはたまたま結果オーライだっただけで、

実はかなり危機的状況だったことがあったんじゃないか、

近い将来そうなる危険があるんじゃないか・・・

映像の中で日本が壊滅するようなシーンが映し出される以上に

そら恐ろしいものを感じました。


こういう一国の存亡をかけるような映画には、

たいていギャラ高そうな大御所俳優が登場しそうなものですが、

多分一番偉い人でも、内閣官房長官の余貴美子。

それでも重厚感にあふれていたのはキャスティングか脚本か?


そうそう、脚本は古沢良太でした。

彼の書くものにはずれはないので、「少年H」とか

「探偵はBARにいる2」とか今年も期待したいと思います。