映画 「映画は映画だ」 平成21年3月14日公開 ★★★★☆



読んで♪観て♪

映画俳優になりたかったヤクザのガンペ(ソ・ジソブ)は、ある日偶然、

映画俳優のスタ(カン・ジファン)と高級クラブで出会う。

数日後、最新作のアクション映画のファイトシーンを撮影していたスタは、

相手役の俳優に大けがを負わせてしまう。

相手役の俳優がいなくなって困り果てたスタは、ガンペに映画出演を持ちかける。(シネマ・トゥデイ)


やくざのことは韓国語でカンペというらしいので、

ガンペ(カンペ?)とスタ(スター?)って、ほぼ職業そのままで、

↑のあらすじを見ても、なんとなく展開が想像できそうですが・・・


韓国映画はあまり見ないのですが、

アイドル映画は恥ずかしげもなくベタな展開で

バイオレンス映画は徹底的にリアル追及…と言う印象。

やくざ役のソ・ジゾブはモデル出身の韓流スターと聞いて前者を予想したんですが、

どうしてどうして、現実と虚構の境目が分からないような迫力のアクションでした。


スタは生意気キャラのアクションスターで、恋人も性のはけ口としか思っていないような

人間としてどうよ?って人物なんですが、

きっちりトレーニングもかかさず、スクリーンの中では輝いています。

一方のガンペは暴力団では若頭的立場のクールな幹部なんですが、

昔にチョイ役で映画出演したこともあり、ホントは映画俳優になるのが夢だったとか。

あこがれの世界ではあるけれど、アクション映画の嘘っぱちは小ばかにしている、という

矛盾もあるんですが、それはそれ。


ついついガチのファイトシーンで相手役を傷つけてしまうスタの共演者探しに難航し、

スタ本人からの出演依頼に、こともなく応じるガンペ。

実際にはありえない話でしょうけど、

ノー天気キャラの監督は

「さすが本物はリアルだ」

「しびれた」

と超ゴキゲンです。


ついついエスカレートしがちの二人の格闘シーンは、リアルか演技かわからなくなり・・

というのを演じている映画なので、もう境界線はないも同然です。


日本のバイオレンス映画だと、残虐シーンとか、

もっとリアルにすることは技術的に可能でも、

「これはホントに傷つけていませんよ~」

「この生首も作り物ですよ~」

と、あえて表現しているように思うんですが、

韓国の映画だと

「よりリアルなのが勝ち!」ではないでしょうか。

(そんなに観てないから断言できませんが)



ガンペの正規の職業は「ヤクザ稼業」だから、

ボスのペク会長を守るためにはかなり危険で違法なこともしなくちゃいけない。

で、口封じにある人物を殺さなくちゃいけなくなったとき、

彼は気がかわって彼を逃亡させることにします。

「一生死人として生きろ!」

なんて映画のかっこいいセリフを口にして・・・・


ところが、現実は映画のようにうまくはいかないから、

このガンペの中途半端なやさしさが最後には彼の首をしめることになります。


ガンペは命を張ってヤクザ業務に汗をながしているのに、

映画のロケの時間にはきちんとやってきてスタンパっています。

セリフもちゃんと覚えているしね。

律儀はヤクザの基本でしょうかね?

このガチのバイオレンス映画が評判になり、

俳優になるガンペの夢も叶い、

美人女優との関係も順調で・・・・

なんていうハッピーエンドはもちろん用意されていません。


もちろんそれが自然だとは思うんですが、

そもそも、ガンペはなんで映画俳優に憧れていたのか?

最初スタと会ったとき、

「(映画なんて)苦労を知らない人が

人の真似をすること」

なんて言っていたのに、なんで共演をOKしたのか?

チョイ役で撮影現場をちょっとでも知っていたら、

逆にあこがれの気持ちも失せる気もしますが・・・

自分の力で映画にリアルを注入したいのだったら、

製作側のご意見番で参加すればいいのにね、とか

いろいろ考えてしまいました。


単に彼は「映画少年」だったんでしょうか?

「映画好き」と聞くと、個人的にはすごく親密感が湧いて、

お友達になりたくなってしまいますが、

最近大流行の「映画愛」はそれほどは感じなかったかな?



ともかく、怪我も半分くらいはホントじゃないかと思わせるくらいの

リアルなファイト。

人気スターにここまでやらせる韓国映画の本気度が伝わってくる映画でした。