映画 「東京家族」平成25年1月19日公開予定 ★★★☆☆


読んで♪観て♪


瀬戸内海の小さな島で生活している夫婦、平山周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)。

東京にやって来た彼らは、個人病院を開く長男・幸一(西村雅彦)、

美容院を営む長女・滋子(中嶋朋子)、

舞台美術の仕事に携わる次男・昌次(妻夫木聡)との再会を果たす。

しかし、仕事を抱えて忙しい日々を送る彼らは両親の面倒を見られず、

二人をホテルに宿泊させようとする。

そんな状況に寂しさを覚えた周吉は、やめていた酒を飲んで騒動を起こしてしまう。

一方のとみこは、何かと心配していた昌次の住まいを訪ね、

そこで恋人の間宮紀子(蒼井優)を紹介される。 (シネマ・トゥデイ)




公開前なので、ストーリーを詳しく書くのは辞めようと思ってたんですが、


「のう、昌次、かあさん死んだぞ」


屋上で父が息子に語るシーン、

予告編の最初にいきなり流れて、かなり焦りました。

これって、予告編で言っちゃっていいの?

「母の死」はあまりに唐突で、あっけにとられて呆然とし、

やがて激しい悲しみが襲ってくる・・・・

そうであってほしいと思うのに、

これでは「こんなに元気なのにいつ死ぬんだろう?」なんて思っちゃわないか?


いずれにせよ、小津監督の「東京物語」をご存じの方なら

「母の突然の死」は想像がつくのでしょうが。


なので、予告編に承認された形で、ネタバレありで書かせていただきます。



「東京物語」から60年を経て、この名作のオマージュをちりばめた・・・

というのは承知していましたが、

これはもう「リメイク」ですね。いや「リユース」かな?


時代が現代になっただけで、設定はほぼ同じです。


・瀬戸内海の小島から老夫婦が子供たちの住む東京にやってくる。

・長男は開業医、長女は美容師。

・成功してると思ってた彼らは忙しく親の面倒が見られない。

・父は旧友を訪れ、泥酔する。

・母は心配の種の二男を訪れ、気立てのいい婚約者紀子(蒼井優)と会う。

 (東京物語では、紀子は戦死した二男の妻(原節子)です)

・元気だった母が急に倒れ、そのまま68歳で亡くなる。

 (東京物語では、島に帰ってから)



読んで♪観て♪


↑これが「東京物語」の出演者たち。

原節子さん(後列左)は引退して92歳でご存命のようですが、

子役以外、ほとんどの方が鬼籍に入られてると思います。


両親への愛情よりも「責任」としてついつい接してしまう長男、

実際に世話するよりも先に、ついつい口がでてしまう長女。

このあたりは、家制度がなくなって、親の扶養が平等になった今でもなお

60年前とあんまり変わってないことに驚きます。


開業医→成功者、セレブの印象

美容師→自立した女性の印象


長男長女の職業も変えていませんが、これもさほど問題ないです。


とはいえ、60年という歳月はあまりに長く、

世代が二回りくらいしてますからね。

「戦死した二男の嫁」なんて設定は今となってはありえないし、

生活様式だって一変しています。


昭和20年代の作品だったら「日本の古き良き時代のお話」として素直に受け取れるんですが、

これを「平成版」に書き直すとすると、

ピンポイントで対象年代と思われる、私たちの世代からすると

すごく現実重視で観てしまうので、ちょっとした違和感が気になって仕方ないです。


せっかく何十年かぶりに両親が上京するなら、

滞在期間くらいは兄弟でなんとか仕事の都合をつけて、

寂しい思いをさせないようにするのは当然じゃないの?

ついた日の夕食のすき焼きの準備だけかよ!

お風呂も用意しないで「おやすみなさい」はないだろ!

とかおもちゃったのは私だけ?

組合の飲み会を自宅でするなんてそりゃないよね。

長男の家は多摩のほうでしたよね?

東京の地理も知らない老夫婦だけで、旧友の住む板橋とか

二男の住む池袋とか行けるものなんでしょうか?

なんか気の毒で泣けてきました。


60年前の68歳はそこそこおばあさんですが、

今の68歳なんてまだまだ若いですよね。

医者の家で突然倒れてすぐに救急車で運ばれて、そのまま死んでしまう病気って何?

医者である長男が家族に病名も告げず、治療法も示さず、

ただ「よくないんだ」といってあきらめさせるのは、納得いきません。


とはいえ、老夫婦が並んで座っているシーン、

何十年も共にすごした絆で、声なき会話が聞こえるようでした。

明るく天真爛漫な妻と寡黙で頑固者の夫。

ああ、こういう夫婦になりたいなって心から思えてきました。


兄弟のそれぞれのキャラクターもわかりやすく伝わってきました。

「東京物語」では原節子という天女のような女性を引き立てる悪役集団みたいでしたが、

共感できる部分もたくさんあったのは、こちらの年齢によるものでしょうか?


教育者によくあるような、できの悪い息子を断固認めない、頑固な父が

上京、妻の死を境に、息子と和解するシーン。

ストーリーの流れは思いっきりベタなんですが、

これはもう邦画の王道ですね。泣けます。


随所にクスッと笑えるところを作ったり、

本筋とは関係ない画面の隅っこで何かが起こっていたり

(手品してたり自転車がこけたり・・)

するのは、サービスと受け取っていいんでしょうか。

ただ、唐突に

東日本大震災関連が2度ほど登場するんですが、

「震災ネタをぶっこんだ」印象で、全く感心できないです。


「おとうと」「東京家族」とオマージュ作品が続き

次回作の「小さいおうち」も小説の映画化とか。

山田監督にはぜひ

寅さんや学校みたいな、すべてオリジナルな脚本で

これからも映画を撮ってほしいと思っています。