映画 「カラスの親指」 平成24年11月23日公開 ★★★☆☆
原作本 「カラスの親指」 道尾秀介 講談社
ベテラン詐欺師のタケ(阿部寛)と、どこかマヌケな相棒のテツ(村上ショージ)。
ある日、ひょんなことからまひろ(能年玲奈)という少女と知り合ったのをきっかけに、
二人は彼女と姉のやひろ(石原さとみ)、
その恋人の貫太郎(小柳友)と共同生活を送るハメになってしまう。
全員が不幸な生い立ちを背負っていたこともあり、彼らは次第に奇妙な絆を育んでいく。
そんな中、タケが過去に自分が引き起こした事件が深く関わった大勝負に挑むことになる。
テツやまひろたちも一致団結し、一大詐欺作戦が動き出すが……。(シネマ・トゥデイ)
この映画、ずいぶん前に観てたんですが、なかなか感想が書けず・・・
というのも、観ている間はそこそこ面白がってたんですが、
あとで考えると納得いかなこと山積で、巷の高評価が信じられない・・・・
かといって、酷評するほどのアンチテーゼもなし。
もう一度原作も読み返してみましたが、
この映画、そこまでいいか??って感じです。
とにかくなにか書かないと前に進まないので・・・・
古くは「スティング」とか「コンフィデンス」とか、
詐欺師が主人公の映画は、まず楽しい。爽快。
サスペンス調だったり思いっきりコメディだったりいろいろでも
「テンポのよさ」は必須のはず、なのですが、
「カラスの親指」に限っては、ものすごくピッチが悪いのです。
サクサク進むのは冒頭の「競馬ネタ」まで。
尋常でない上映時間の長さもそこから来てるんでしょうが、
急に失速するわけでもないから、かなり最初のほうから
これは気長に付き合わなければ、と覚悟して
「頭悪いモード」に切り替えられるので、さほど支障はないです。
コンゲームの映画の常識を変えた「脱力系」という意味では
それだけでも存在価値あるかも、です。
あと、能年玲奈と小柳友の二人が既存の俳優さんにないフレッシュな演技で
すごく期待できると思いました。
ほめるとこ、ここまで。
原作読んだ時もちょっと思ったんですが、これ全体的に
アイデアにおぼれていて、あまりに現実感ないんですよ。
もともとの設定がいかにも「後付」っぽいです。
ミステリー風味のふりかけをかけて、かけて、かけすぎて、
もう何だかわからなくなっちゃった、って感じです。
どんでん返しも、いっぱいしたほうが「えらい」ってわけじゃないと思います。
テツのキャラクターですが、
原作ではたしか、鍵開けのプロだということ、
英和辞典を熟読して英語(会話ではなく英単語)にも詳しいんでしたよね。
(映画ではその設定あったっけ?)
これを村上ショージがやる、というので、けっこう感心してたんですが、
映画ではタケの足をひっぱりそうな、でもほのぼのした憎めないおっさん、という印象で
ずうっと通します。
これが(思いっきりネタバレですが)
最後で、すべて彼の掌で操られてた、って急にいわれても、なんだかなぁ~
それならもうちょっと演技できる人にしてほしかったな。
伏線は一応あるものの、なんでもかんでも
「それはもう織り込み済」ということが多すぎて、観てる方はあんまり愉快じゃありません。
それとアナグラムが多用されているんですが、
これって日本語でやると、かなり無理っぽいです。
入川鉄巳(いるかわてつみ)とか橋岸沢太(はしぎしさわた)とか、めちゃくちゃ不自然!
だいたい入川だったら普通「いりかわ」ですよね?
ただ、いんちき骨董品の作者「おのむさい」には笑いました。
茶碗の底に書いてあった文字もいかにもそれらしくて・・・
あ、部分的には楽しいこともあったりで、
だからこそ160分も退屈しないで見られたんでしょうが、
そこまでの内容はなかったでしょう!
できることなら90分くらいにサクッと終わらせてほしかったです。