映画 「珈琲時光」 平成16年9月11日公開 ★★★☆☆


読んで♪観て♪

2003年夏、東京。

古本屋を営む鉄道マニアの肇の力を借りて、30~40年代に活躍した

台湾出身の音楽家・江文也について調べているフリーライターの陽子は、

お盆の帰省で実家のある高崎へ戻った際、父と継母に妊娠していることを告白した。

相手は台湾に住む恋人。

しかし、結婚する気はなかった。

東京へ戻った彼女は、肇と一緒に文也の足跡を辿る取材に出かけるが、

その途中、気分を悪くする。

彼女の妊娠を知り心配した肇は、何かと世話を焼こうとするも、

その胸の内に秘めた彼女に対する想いを伝えることは出来なかった。

ある日、知人の葬儀に出席する為、両親が上京して来た。

あくまでも、シングルマザーの道を選ぼうとする陽子のことを心配するふたり。

だが、彼らもまたその想いをうまく口に出せない。

翌日、陽子は電車の中で眠ってしまう。そんな彼女の側には、

いつの間にか肇がいた……。              (GOO映画)


偶然ですが、公開されたのは8年前のちょうど今日、ですね。

ホウ・シャオシェン監督の作品らしく、何気ない日常が淡々と描かれ、

東京の街角の当たり前の風景がこんなにも温かく美しいものかと、優しい気持ちになれました。

小津監督の「東京物語」のように、

10年後20年後もう一度見たら「古き良き日本」を感じるんだろうなぁ~


神保町が舞台、というので見ることになったんですが、

「森崎書店の日々」のようにすべてが神保町、というわけではない。

誠の経営する「誠心堂書店」には残念ながら私は行ったことがなく、

(一誠堂なら知ってるんですが・・)

喫茶店エリカも(老舗だから存在は知ってますけど)入ったことなく

テンプラ屋「いもや」も私が食べたことあるのはこの店舗じゃないな~


最初の書店内のシーンが映った時、入ってくる日差しが絶対に北向きじゃなかったんで

「ホントに神保町でロケしてるの?」って思ったんですが、

誠心堂は東西に広がるいわゆるメインストリートからは外れて

白山通りを水道橋方面に北上した「東向き」のお店だったんでした。


神保町で本を探す人が一つのお店しか行かないなんてことはありえないから、

なんで他の書店が映らない?!って思っちゃうんですが、

友達の誠が膨大なデータベースから検索してレファレンスしてくれるってことでしょうかね?


神保町以上にロケ地として登場するのが雑司ヶ谷鬼子母神。

ここに陽子のアパートがあり、彼女は都電にのってあちこち出かけるわけです。

今だったら副都心線が開通しているから、すぐそばに雑司が谷駅が出来て

神保町までメトロを乗り継げば190円で行けちゃいますが、

陽子のルートは、鬼子母神前から都電で大塚駅前、大塚からJR山手線で秋葉原で乗り換え・・・・

ええッ!これ遠回りじゃないですか?

私だったら交通費節約で、目白まで歩いてJRか、東池袋まで歩いてメトロ利用しますね。

都電を使いたければ、新庚申塚で降りて西巣鴨から都営三田線に乗れば、

水道橋でも神保町でも直に行けるのにね。


これはもう、JR総武線から見える神田川の風景を撮りたがってるとしか思えません。

御茶ノ水のあたりで聖橋をバックに本郷台地から地上に一瞬出て日の光をあびる

丸ノ内線の車両が総武線や中央線とクロスする・・・

これは映像作家だったら絶対に撮りたいと思うだろうなぁ~


有楽町とか高円寺とか洗足池とか、彼女はフリーライターなので

取材や資料集めであちこち行くんですが、土地勘のあるところもないところも

東京の景色はいちいちいとおしいです。


上のあらすじを読むと、シングルマザーで出産を決意する強い女性の話なんですが、

それに備えての覚悟はホントにあるのか?

一番心配している両親も激高するわけでもなく見守るだけ。

仕事もそれほど頑張っている感じもないし、

赤ちゃん産むって大変なことですよ~

見てるこちらのほうが心配になりますが、映像からは何の心配も危機感もないのが

なんとものんびりしてますね。


脚本があるのかさえ疑いたくなるような自然な会話は、

映画を観ているというより、たまたま隣にいる人の会話が聴こえちゃった、という雰囲気です。


間違いなく東京は満喫できるので、10年後にもう一度見てみたいです。