映画 「ゴーストライター」 平成23年8月27日  ★★★★★

原作本 「ゴーストライター」  ロバートハリス  講談社文庫  ★★★★☆



読んで♪観て♪

元英国首相ラングの自伝執筆のために出版社より選ばれたゴーストライターの“僕”は、

ラングが滞在するアメリカ東海岸の孤島に向かう。

その矢先、ラングがイスラム過激派の逮捕や拷問に加担した疑いがあるというニュースが流れる。

このスキャンダルは国際刑事裁判という大騒動になっていく。

一方、“僕”は溺死した前任者の部屋から、ある資料を見つける。

それはインタビューで聞いたラングの経歴を覆すものだった…。 (GOO映画)




映画が始まるまでの待ち時間に読んでいたのが、「ザ・ホークス」の原作本。

これは、ハワードヒューズのライターに指名されたと大ウソをついて

彼の自伝をでっちあげる詐欺師の話です。


それにくらべたら、「ゴースト」の彼は、代理人をたててキチンと契約し

ちゃんと本人からインタビューして書いてますから、

ほんとに気が楽だったなぁ・・・・


実は私、この「ゴーストライター」の原作本も2カ月くらい前に読んで面白かったので

映画の公開も楽しみにしていたのですが

都内はヒューマントラスト二館だけで観そびれていました。

急きょシネリーブルでの公開が決まり、やっと観られて良かった!


そういうわけで、映画を観る前から、最後まで話もオチも全部わかっていました。

それでも、最高に面白かったですよ(こういう見かたはオススメはしませんが)



読んで♪観て♪



謎の死をとげた元英国首相のゴーストライターの後釜に雇われた主人公。

すでに完成している原稿に手をいれるだけで破格の報酬。

非常においしい話ではありますが、危険も覚悟しなくては・・・


それでも首相からは「相棒」と呼ばれ、夫人の信頼も得たようで

文章へたくそな前任マカラにくらべたら良いものが書けそうなんですが

資料からも近隣住民の話からも

彼の死に関しても元首相の経歴に関しても「怪しい臭い」がぷんぷん。

そして国家機密にふれるような大スキャンダルにまきこまれていく・・・・

みたいなストーリーで、

ミステリーとしては、予想外の展開というわけでもないし

つっこみどころも数あれど、VIPの私生活や身辺警護、

個性的な登場人物たちも魅力的で、なにげにリアルで上質な雰囲気が好きです。

主人公の存在感がまさにゴーストで、彼自身には「名前さえない」という設定は

映画のなかでも効果的でした。


最初、自伝を出版するラインハルト社での売りこみの時に

「私は政治には疎いから人物像に迫れる」

と彼はいうのですが、

この作品もトリックの精巧さではなく、それぞれのキャラクターを

浮き彫りにするような表現に説得力があるんだと思いました。


いつも楽天的で上機嫌の代理人のリックとか

舞台俳優みたいな本首相のアダムラング、

愛人秘書にカリカリしてる妻のラース、

そしてかなり緊迫した場面でもちょっと人ごとな感じの主人公のにやけ顔、

すべて原作のイメージどおりでした。


元首相の学生時代の写真とか

BMWナビの音声とか

パーティーでメモが手渡しされていくとことか

原稿用紙のちらばるラストとか、

この辺りは映像の勝利。

本では味わえません。


残念なことをあえていうと、

ライターならではの主人公の文章力。

虐待疑惑報道に対するアダムの声明の代筆。

攻めず怒らず高くも低くもなく・・といろいろ注文だされたあとで、

「命のあるかぎりテロと闘い続ける、

それが戦場でも法廷でも」

・・っていう声明文は映画でもありましたけど、

マカロの書いた退屈な元原稿に手を加えるところ。


「私の名前LANGは元来はLONGの意味です」

なんてつまんない冒頭をばっさりカットします。

だいたい「蛍の光(AULD LANG SYNE)」はOLD LONG AGO,

なんてこと、日本人で英語わかんない私だって知ってることですからね。

WIKIを写してるんじゃないかと思ってしまうような家系の紹介も却下して

視点をかえながらみるみる食いつきのいい文にしていくところもやって欲しかったな。(でも、たいしたことじゃありませんが)


ロマン・ポランスキーは高名な監督ですが

私は「戦場のピアニスト」と「オリバーツイスト」しかみたことがなく、

共通の作風というのものがよくわかりません。

でも、これを観て、昔の作品も観たくなりました。


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