映画 「うまれる」 平成22年11月6日公開  ★★★★☆

原作本 「うまれる」 豪田トモ PHP出版




読んで♪観て♪


両親の不仲や虐待の経験から、親になることに戸惑う夫婦。

出産予定日にわが子を失った夫婦。

子どもを望んだものの、授からない人生を受け入れた夫婦。

完治しない障害を持つ子を育てる夫婦。

そんな4組の家族が織り成す笑いと涙と愛のドラマを通し、

生きることの意味や大切さを問い掛けていく。(シネマトゥデイ)


出産という行為は人間が長い歴史の中で繰り返してきたことであり、

きわめて日常的なことでもあります。

そしてもうその題材だけで人の頭で考えだしたドラマよりずっとドラマチックですから、

これを映画館でやるのって、

「ちょっと反則!」って思ってしまいました。


一方で私は(結果オーライだったから良かったけれど)

かなり危険なお産の体験者でもあるので、

忘れようとしていたことがよみがえる心配もあって・・・

でも、だからこそ、「観る」選択をしました。


冒頭は「体内記憶」の話。

未婚の母を選択した女性が

「私なんかが母親になっていいのかしら?」と思っていたら

娘の「ママを選んで生まれてきた」という言葉に励まされた・・・

みたいなエピソードが続きます。


胎児は感覚も意識もないとされてきたけれど

実際は人格はあるんじゃないか?

なんて、子どもを待つ身にはファンタジーでも

堕胎を考える人たちには脅しになるかも?

臓器提供のために作られるクローンを扱った

映画「アイランド」を思い出しました。


私は自身の体内記憶はないのですが、

幼い時によんだ「青い鳥」のなかの「未来の国」

(私が読んだ本では「青いこどもたちの国」でしたが)

これから生まれようとする子どもたちの話が

潜在記憶の中にはすりこまれていました。

それはもういくら胎児の成長過程を学んだところで

「胎児時代の記憶はある」と信じ込んでいましたので、

このシークエンス自体は

それほど衝撃的ではなかったのですが・・・


本編は、出産を間近に控えたひと組の夫婦を追いながら、

それに難病・死産・不妊という3組の夫婦のエピソードを絡める構成。


出産にかかわる日本の医療技術は格段に進歩していて

60年前は出産時に年間4000人もの妊婦と

20万人の赤ちゃんが亡くなっていたのが、

現在はわずか50人。

20週すぎに亡くなる赤ちゃんも4000人まで減少しています。

数字の上では出産のリスクは低くなってはいますが

望む両親のもとに健康な赤ちゃんがみんなやって来る、

というわけではないということ。


18トリソミーの染色体異常で生まれた息子が

奇跡的に命をながらえ、

「毎日できることがちょっとずつふえるのが嬉しい」

と1万枚以上の写真を撮り続ける松本夫妻。

9割以上が1年以内に亡くなるなかで

1歳の誕生日を迎えた息子に

「短距離を駆け抜けて戻っていく日がいつかはくるけれど、

その日まで育児を楽しもう」

と明るく語る姿に涙がこぼれました。


出産予定日のその日に心音が消え死亡が確認されても

お腹にとどめておきたい妻に

「早く出してだきしめてあげよう」

と説得する夫。

自分をせめつづける妻の心を救ったのは

「わたしは永遠にあなたたちのこどもです。

わたしはそのことを誇りに思っています」

という天国からの手紙。

娘は生まれる事ができなかったんじゃなくて

自分たち夫婦を選んでやってきてくれたと

ようやく思えるようになった関根夫妻は

赤ちゃんをまたのぞむ力がわいてきます。


9年間の不妊治療を経て

子どものいない人生を選択した東さん夫妻。

「人並みに妊娠しない」

劣等感や自分の体への嫌悪感への

女性の苦しみは想像以上で

「中絶する親のところに

何で子どもは選んでやってくるのか?」

そして

自然に授からない事望むのもまた、人間のエゴか

本能か・・・

悩みつつも、冷凍保存した受精卵を

なかなか処分できない気持ち。


そして、最後のクライマックスは

いよいよ迎えた伴夫妻の出産の日。

彼らは出産自体にはなんの問題もないですが

妻は母親に虐待されて育ち、

夫は両親の不仲のなかで成長し、

ともに「自分は親として不適格ではないか」

と悩みを抱えていたんですね。

なので、自分の遺伝子をもった子どもを持つことは怖いし、

夫にとって子どもは妻より大切な存在にはなりえない

「永遠の二番手」といっていたのが

父親になってどうなるか・・・・

出産と同時に自動的に「父親」とされるわけですが、

子どもの力で日々本物の父親に成長させてもらうことも

画面からは伝わって来ました。


「命をリレーして生まれることは感謝と奇跡」

「子育ては愛し方をさがす旅」

「生まれることはそれだけで明るい出来事で

夫婦の絆をより深め、

新し家族の絆が生まれるlこと」


うーん。いい映画でした。

実はかなり難しい出産を体験した私にとっては

初めて知ることも、初めて考えることもほとんどなく、

構成も悪く言えば「ありきたり」で、

ものすごく画期的な部分はほとんどないのですが、

今まで出産についてほとんど無知だった製作者が

命のすばらしさに感動し、その驚きが素直に伝わるのが

心に響く原因かもしれないです。



共通して言えるのは、夫たちがみんな素晴らしい!

出産に対しても妻に対しても

真摯で思いやりあふれるた対応に感動です。

生理的に男には絶対に理解できないとわかりつつ

何かできない事はないかとそれは一生懸命。

こういうパートナーがいてこそ、

どんなハードルもクリアできるのでしょう。

だからといって、必ずしも

出産奨励!育メン奨励!

してるわけでもなく、

国や自治体の少子化対策なんかに利用されてほしくないです。

ほそぼそと口コミで広がって欲しいな。


「反則」とかいってごめんなさい。

商業映画として、ぜんぜんオッケーです。


世の男性たちに特にぜひぜひ観て欲しいと思いました。