映画 「オカンの嫁入り」 平成22年9月4日公開  ★★☆☆☆

原作本「さくら色 オカンの嫁入り」 咲野月音 宝島社 ★★★★☆ → オカンの嫁入り①
 

読んで♪観て♪



月子とオカンの陽子は、母ひとり子ひとりで仲良く暮らしてきた親子。

ある日、陽子が酔っ払って若い金髪の男・研二を連れて帰ってくる。

「おかあさん、この人と結婚することにしたから」。

あまりに突然のことに、戸惑う月子は、とっさに部屋を飛び出してしまう。

母に裏切られたという思いから、月子は陽子に対しても、研二に対しても頑なに心を閉ざすが、

大家のサク、陽子の上司・村上ら月子と陽子を家族同然のように見守ってきた周囲の者たちが、

二人の間を何とかとりなそうと必死になる。

しかしこの娘と母はそれぞれにある秘密を抱えており……。  [ GOO映画 ]



小気味良い大阪弁でグイグイ進むテンポ感が

この作品の「売り」だと思っていました。

最初「角川映画」のマークが出てきたとき、

やーな予感がしたんですよね~


夜中に酔っぱらって大騒ぎして帰って来る、

そして「おみやげ~!」といって金髪男を連れてくるオカンは

ただものじゃないです。

おっ、これはコメディ路線!と誰もが思い、

娘の月子の怒り、オカンのしゃあしゃあ顔、

意外と腰の低い研二のからみがいちいちおかしく、

つかみは最高でした。

(原作通り、という意味です)


それがどんどんクダクダになっていくのは、

もう映画化は失敗をいわざるを得ない・・・・


だいたい、月子いつまでも怒りすぎ!

母一人娘一人の生活が長かったこと

自分には結婚の事何も知らされていなかったことを考えたら

気持ちはよくわかるけど、

掛けてあげたコートがきちんとたたまれていたこと、

犬のハチがお腹をみせて甘えてるのとかをみて、

「しゃくにさわるけど、悪い人じゃないみたい」

というのは、最初から彼女は充分わかっているんですね。

いくらなんでも引っ張りすぎ。


彼女の心的ストレス障害(PTSD・・でしたっけ?)

にもあまりに時間さき過ぎです。

実は私も(たいしたことないですが)

「顔の上に布とか掛けられると過呼吸になる」

という症状が3年くらい続いたことあるのですが

これって、原因のほうははっきりしていても、

ある日突然治ったりするような簡単なものじゃないと思うけど・・・

ていうか、この部分に無駄に時間さき過ぎ!


ようするに、宮崎あおいの出番を増やすためだけに、

ストーリーをいじっちゃったんだろうな・・・


あと、月子の交際相手は、あの初老の院長先生(國村隼)だったはずなんだけど、

これも書き換えられていたのは、宮崎あおいちゃんだから?


彼女のアップを増やすくらいならいいのですが、

時間配分の失敗で、

あの歯切れのいい大阪弁のリズムが最初から崩れてしまいました。


テンポよいコメディ路線から、研二の過去やオカンの病気とかの

ネガティブなエピソード。

でもきびしい現実にも負けない、明るく前向きな生き方を示す、

というのが、ま、普通のドラマの作り方ですよね?


7~8割笑って、あとの部分でちょっと泣かして欲しかったです。


「研二の過去」と書きましたが、

「ケンちゃん、けっこう苦労してるのに

いっつもヘラヘラしてるとこが好き」


映画ではオカンのこのセリフだけ。


「研二」と聞いたら、私と同年代以上の人は

「ジュリー(沢田研二)だ~!!」

と気付くはずですが、

そう、研二の母親はジュリーの大ファンで、子どもにその名前をつけて

「産みっぱなし」で消えてしまったのです。

借金取りに追われたり、ヤクザにぼこぼこにされたりの「苦労」も

映画では全くスルーでしたね。


へたに原作を読んでしまったために

いちゃもんだらけですみません。

収拾つきそうにないので、あとはいい事悪い事、思いつくまま箇条書きで・・・・


☆ 一戸建てなのか長屋なのか分からないような古い木造住宅。

土砂降りの雨の音や風の音、チクタク時計の音・・・

狭くて古いけれど趣きのある日本家屋が良かったな~


☆そして、ものにあふれた台所を研二がきれいに掃除して

「プロの台所」にするのですが、

研二(桐谷健太)の包丁さばきとか盛り付けとか

観ていてすがすがしかったです。


★大家のサクちゃんは、掃除したての空手道場みたいな

背筋のしゃんとした80歳、ということだったんだけど、

あれ、あれ?小太りのいつも食べてる

(しかも食べ方汚い)おばちゃんでしたね。

「癒し系」は村上院長だけでいいとおもうんだけど・・・


★  「ぼくは100年いっしょにおられる他の人より

たとえ一年しかおられんでも陽子さんがええんです!」

という、研二渾身のプロポーズは、本人にいってほしかったな。


★結婚式の「写真の前撮り」ならともかく、ただの衣装合わせでは

かつらあわせがせいぜい。

白塗りまではしないでしょう!!

それに、予告編で

「めっちゃ、きれい!」

というオカンの白塗りは、「めっちゃ 変!」

なんで?なんで?

ここはきれいでないとまずいと思いますが・・・!


★どうでもいいことですが、ジュリーの最初の奥さんは「月子」さんでしたよね。

ザ・ピーナッツのひとりで、もうひとりは「日出代」さん。

月子って、双子だったら「あり」でしょうが、

陽子(オカン)が自分の子どもにつける名前ではないと思うな~

ホントにどうでもいいことですみません。


映画自体は、けっして悪い事無いと思うのですが、

本を読んで私が「映画を想像しながら頭の中で動かした」

のよりは明らかにつまらなかったので、★二つにさせて頂きました。

関西色はうすまってましたが、キャストも良かったので

観て損は無いと思います。


原作本とはちょっと違うけれど、

原文はココログ でも読めるので、よかったらどうぞ。