映画 「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」 平成22年6月12日公開 ★★★★☆

読んで♪観て♪

ケンタとジュンは、孤児院で兄弟のように育った幼なじみ。
工事現場で電動ブレーカーを使い、
ひたすら壁を壊すだけの解体現場で働く日々を送っていた。
低賃金と過酷な労働環境、そして職場の先輩・裕也の陰惨ないじめに、
行き場のないいら立ちを募らせていた。
ある日ナンパに出掛けた二人は、カヨちゃんという女の子と出会う。
それ以来、ジュンはカヨちゃんの部屋に転がりこんでいた。
                          [GOO映画]

親にも見捨てられ、施設で育ち、お金も学歴もないふたり。
解体現場でひたすらコンクリートに穴をあけるシーンがずっと続きます。
「はつり」という作業らしいんだけど、これ結構キツそうです。
彼らなりに真面目にやっているように見えるんだけど、
「何でまだ終わってねーんだよ」
「お前、仕事おせーんだよ」
「お前、バカだろ」「アホ兄貴と同じか」

先輩の裕也の言葉の暴力と虐待にたえる日々。

「何もかもぶち壊して新しい世界へいく」
ある日、事務所と先輩の車をフルボッコ。
バイクとか電線とかも盗んでケンタの兄のいる網走へ・・・
ジュンがナンパしたカヨちゃんも連れて
北へ向かうロードムービー
・・・って、もうこの時点でハッピーエンドは望めないし、
倫理的にもそうなったらダメです。

「世の中には自分で人生選べる人と選べない人がいる」
そして、不幸なことに、ケンタとジュンは「選べない」ほう、
ということなんだけど、
選べないまでも、最善次善の行動はあると思うんですけどね。
職場は裕也以外はまともな人たちで、飯場の雰囲気、何気に良かったし。
それなのに犯罪を重ねて堕落していく二人。

「ブスでバカで〇〇〇な」
でも愛されたくてたまらないカヨちゃん。
施設の中しか居場所のない障害者たち。
飼い主をかみ殺して殺されそうになった闘犬。

彼らも「選ぶことのできない」社会的弱者として
小出しに登場するのだけど、
それは絶対、一緒にしてはイカンです。
ジュンの言葉をかりるなら
「オレたちとは、違くねぇ?」

彼ら、生きてくのに最低必要な脳みそしかないから、
会話が広がらない、面白くない、
だから結構会話はイラッとします。
多分仕事だって、力任せじゃなくて、
コツや理屈がわかったらもっと手早くできるんでしょうよ。
やっぱ、学歴は無くても脳みそは必要だわ。

明らかに犯罪なのに公的権力が介入せず、
すべて私刑が器物損壊で解決。
あり得ないほど偶然の遭遇が二回。
松田翔太と高良健吾だったらナンパは100パー成功でしょう、
とか
ホームレスみたいな生活なのにケンタの口ひげ整い過ぎ、
とか
いいだしたらきりないし、
とにかく、こういう
監督のドヤ顔がスクリーンの向うにみえるような映画って
私の大嫌いなタイプで、しかも
エンドロールの岡林の歌がこれまた
虫酸がはしるほど嫌いな歌(昔も今も)なのですが、
悲しいことに
こちらの心にずっしり届く映画でした。
ストライクゾーンは絶対はずれてるんだけど、
なんか知らないけど、ミットのなかに
ズコーンと入ってしまった、そんな感じ。

ところで、
カヨちゃんの安藤サクラ。
いつも性格ブスや顔ブスの役ばかりの彼女が
やっとヒロイン!と思ったら、
今まで以上の強力な痛いキャラ。
あの犬養毅のひ孫だというのにね・・・

触られたくないところをちくちく刺激してくる
不愉快千万の映画なのですが、どうにも引き込まれる作品です。
これはDVDでなく、劇場でぜひ観て欲しいけど、
楽しい気持ちには絶対になれないから、
そこはよろしくです。