映画「石内尋常高等小学校 花は散れども」平成20年9月27日公開 ★★☆☆☆
シナリオ「石内尋常高等小学校 花は散れども」新藤兼人 脚本 岩波現代文庫 
★★★☆☆ → 花は散れども①

読んで♪観て♪


広島県の山の中にある石内尋常高等小学校。
ちょっと破天荒な市川先生は、授業中居眠りした生徒がいても、
田植えの手伝いをしていた事が分かると咎めず、
修学旅行では他人に田舎者と罵倒されると喧嘩する。
教え子の良人、三吉、みどりは大の仲良し。
ある日、良人の家が破産し、村を去っていく。
30年後。良人は東京で売れない脚本家となっていた。
村の収入役となった三吉が、市川先生の定年祝いに
かつてのクラスメイトを招集する。     [ GOO映画 ]



監督の少年時代と駆け出しの脚本家時代の自伝的映画ですから、
95歳の人間の脳内をみるような映画でした。
何十年たっても印象に残っている言葉や情景が突出していて、
その前後はかなりあいまい。
場面もぶつぶつ途切れて・・・・

なんたって少年時代は大正末期ですよ!
そして卒業して30年たった昭和30年くらいには
先生は定年(当時だったら55歳くらい?)で、生徒たちは45歳くらい。

昭和30年代が舞台の映画、ずいぶん観ましたが、
これらは、そのころ子どもだった人の話。
これは「現代パート」が昭和30年。
さらに一世代前の人たちの話なんです。

卒業後30年の間に戦争がありましたから、教え子たちは
揃いも揃って、戦争未亡人になったり、原爆で被災して大やけどを負ったり、
辛い体験をしているわけです。
広島だから、きっと原爆で命を落として同窓会にでてこられなかった人も
いるんだろうなぁ。
今95歳で存命の人たちはこういう時代を生きてきたのかと思うと、
歴史上の人物でもない、普通の人たちの生きた時代を
映画にすることはそれだけで価値があると思いました。

前半は、小学校の熱血教師市川先生の破天荒なエピソード。
多分モデルになった先生もいるんでしょうし、
修学旅行で活動写真の撮影に遭遇したのもきっと事実なんでしょう。
(そしてそれが映画の世界に入るきっかけになったのかも・・・)

はじめは、30年の歳月を越えた先生と生徒の心の交流を描いた作品?
と思ったのですが、後半は新藤兼人監督の分身である良人(豊川悦司)と
初恋の同級生みどり(大竹しのぶ)の恋物語に終始します。
子どもの頃はほほえましいものでしたが、
40代になってからのは、いまでいう「不倫」
しかもみどりの一人娘は良人のこどもらしい・・・

「あんたの良人から 一字もらって
  良子ってつけたんよ」


ひえ~っ! 衝撃であります!
このあと二人は結婚するでもなく、どうやらそのままになってしまうような・・・

これも事実なのかなあ??
95歳の人にとっては、昔の鮮烈な思い出話ももう時効なんでしょうが、
今どこかに「兼子」という50歳代の女性が実在するとしたら、
その人の立場はどうなるんでしょう?
心配なんですけど・・・

フィクションにしてはあんまり面白くないし、
ノンフィクションだったら、
「これ、いいんですか?」という作品です。

キャストは、みんな熱演しちゃうタイプの俳優さんばかりなので、
正直疲れます。
あと、役の年齢がめちゃくちゃ。
川上麻衣子は市川先生の妻なのに生徒たちより年下で、
生徒たちの年も見かけもバラバラ。
昭和30年の40歳代なんて、今よりずっと老けていましたよね。
トヨエツは実年齢とは近いけれど、こんな若い40代いなかったはず。
しかも彼と大竹しのぶだけは、子役とぜんぜん雰囲気が似ていないの。

自分の役をかっこいい俳優さんにやって欲しいと思うのは当然だけど、
「私小説」ならぬ「私映画」ではないかと・・・

現役最高齢95歳の監督作品
ということが「売り」なわけだから、
見る人は承知で見ているわけです、多分。
だからきっとみんな優しい気持ちで見るんだろうな。
だからきっとこれでOKなんでしょう。