映画「ホルテンさんのはじめての冒険」 平成21年2月21日公開 ★★☆☆☆

読んで♪観て♪

オスロに住むホルテンは鉄道の運転士。
規則正しい生活を心がける彼の生活も今週末で定年を迎える。
いよいよ退職前夜、同僚が送別会を開いて勤続を表彰してくれるが、
彼は翌朝の勤務に備えて早く帰ろうとする。
だが、誘われて二次会へ。
タバコを買いに出かけて戻ると、マンションに入れなくなってしまった。
工事用の足場を伝って他人の部屋に侵入するも、そこで眠りこけてしまい、
翌日運転するはずの列車に遅れてしまう…。   [ GOO映画 ]


ポスターでホルテンさんに抱かれている犬と目があってから
ずっと気になっていた映画でした。
ほのぼのとした・・・ハートウォーミング・・・
そんな雰囲気を期待してでかけたのですが、
実際は、ちょっと私には理解不能な映画でした。

ホルテンさんは勤続40年のベテラン運転士。
毎朝弁当をこしらえ、ポットにお茶を注ぎ、
小鳥の籠に覆いをかけて、同じ時間にでかけます。
運転室ではパイプのタバコをくゆらせながら
余計なおしゃべりもせずに、ただただ運転。
運転技術のとか、
非常時の対応とかでは(多分)なく、
長年無遅刻無欠勤無事故で仕事をつづけたことに対して
シルバー機関車の表彰をうけるホルテンさん。
ともかく、自己アピールの苦手な性格ですが、
定年を前に彼の
「判で押したように毎日同じ生活のくりかえし」が
評価されて、逆にちょっととまどうホルテンさんなのでした。

彼には家族もいないこと、
かなりのヘビースモーカーなこと、
おしゃべりはかなり苦手なこと、
高価なヨットを所有していること、
など、彼の人となりが少しずつ明らかになってきます。

自分の不注意で最後の仕事に遅刻してしまったとき、
自分の失敗がショックだったのか、それとも、
自分がいなくても代行で誰かが運転して
さほど困らないのがショックだったのか、
そのあたりは分からないのですが、
とにかく、彼の中で何かがプツンと切れて、
その場から姿を消してしまいます。

そして深夜のプールで裸で泳いだり、
空港で逮捕されそうになったり、
自称外交官の老人と知り合ったり、
その彼が急死してしまったり、
短時間にいろいろな出来事が
ホルテンさんに降りかかります。

こどものころから怖くて避けていた
スキージャンプに挑戦し、
勇気の出たホルテンさんは、
67歳にして、新しい世界の扉をあけるという
ハッピーエンドを予感させる終わり方。


ノルウェーの映画を観るのは初めてです。
①行ったことがないので、どんな国かわかっていない。
②言葉がわからないので、字幕以外のバックにながれる
   音声や、看板などの文字の意味がわからず、
   入ってくる情報量が極端に少ない。
③時代背景がよくわからない。
   最近の話なのか、ずいぶん前の話なのか・・・

北欧では禁煙が徹底されていて、オフィスもレストランも全面禁煙、
ときいていたので、仕事中もパイプが手放せないホルテンさんをみて、
2,30年前の話かと思っていました。
また、ノルウェーは、あのノキアのフィンランドに次ぐ
携帯電話普及率なのだから、運転士のような職種の人なら、
かなり昔でも携帯とかポケベルのようなものをもっていて当然、
なのに、自己管理にまかされているというのだから、
すくなくとも30年以上前の話と思っていました。
本国の人だったら、町の様子とか、車の型式とか、
運転士の制服とかで時代はすぐにわかるのでしょうが・・・

ところが、彼らの飲んでいたサントリーの「響」は
日本発売も平成にはいってから。
定年が67歳というのも、(調べてはいないのですが)
けっこう最近のような気もしてきて・・・

このあたりのことがわからないので、なかなか話に入り込めずにいました。

ラストは、気になっていた女性に告白して(?)
ちょっといい関係をにおわすショット。
「亡き母とすべての女性ジャンパーにささぐ」
のエンドクレジットで、さわやかな終わり方です。

それを考慮しても、
仕事中も空港の滑走路でもところかまわず煙草に火をつけ、
マッチもポイ捨て。
運転前の同僚の「酒で眠気覚ましだ」の一言も
冗談にしてもプロの運転士にあるまじきことばで、
私はどうしても聞き流せず、
最後まで気になって気になって仕方ありませんでした。


先週で東京発のブルートレインが廃止になるということで、
最後の車両に乗っていたベテラン車掌さんの特集が
NHKで組まれていました。
その方も30年間この道一筋なのだけれど、
乗るたびことおこる様々なアクシデントに
手際よく対応していく姿に感心しました。
車掌と運転手ではちがうけれど、
運転だって、毎日いろいろな事件がおきるでしょうし、
「たいくつなルーティンワーク」の一言で40年を
片付けてしまうのは、ちょっとね・・・

ノルウェーでは、62歳まで勤めあげれば
年金は満額支給。(じきに67歳にひきあげるそうですが・・)
67歳ぎりぎりまできっちり働いたホルテンさんは
少なくとも経済的には何の心配もしないで
老後をすごせるのですね。

ニッサンや「響」など、日本の小道具が登場したのに、
ノルウェーのことをほとんど知らない日本人。
私とは相性の悪い作品でしたが、
「ノルウェーを知るための一作」にはなったように思いました。