映画「イエスタデイズ」 平成20年11月1日公開 ★★★★☆
原作本 「FINE DAYS 恋愛小説」より 本多孝好作 祥伝社 → イエスタデイズ①

読んで♪観て♪


ある日、聡史はガンで余命わずかな父から連絡を受け病院へ駆けつけた。
しばらく疎遠になっていた父と息子だったが、久しぶりに会った息子に、
父は心にしまってきた大切な願いを話し、一冊のスケッチブックを託す。
戸惑う聡史だったが、父の熱意に心動かされるように、
32年前に想いを馳せながら父の青春の軌跡をたどり始める。
スケッチブックに描かれた絵に導かれるかのように訪れた場所で、
聡史は不思議な体験をする…。(GOO映画)

原作はずいぶん前に読みましたが、
こういうタイムスリップものは小説では受け入れられても、
映像にするとあちこちの矛盾が気になり、
破綻してしまうことが多いです。
「タイムスリップして若いころの父親に会う」という設定は
「地下鉄にのって」もそうでしたが、
映画の方は残念な結果でした。なので、
このストーリーも映像にはしない方がいいと思っていました。
ところがこの映画、けっこう評価が高かったんですよね。
それが不思議で、ずっと観たいと思っていました。

普通の真面目な青年なのに、父親だけには素直になれずに
とんがっている息子の塚本高史、
昔はワンマンですぐ手のでる怖い父だったけれど、
病気になって息子の言葉に耳をかたむけられるようになった
ファミレスチェーンのオーナーの父親、国村隼。
この二人は、多くの言葉がなくても
設定が手に取るようにわかって、最高のキャスティングでした!
似たもの親子だったからこそ、反発しあう二人。
だからこそ、いったん誤解が解けると、
するするといろいろなことがわかってきて、
言い訳や説明はいらないんですね。

それにしても、親の結婚前の恋人に会うというのは、
子どもにとっては、かなりビミョーです。
もしその人と結ばれていたら、自分の存在自体も
なくなるわけですから。
それがわかりながら息子に託す父。
「見しらぬ兄弟がいたらいい気はしない。
自分の気分の問題だ」といいながら請け負う息子。
タイムスリップして同年代でであっても
意気投合するのも納得です。

原作にはない、ピアニストの娘、牧村あかねや
カンニング竹山演じるファミレスの元店長の
サイドストーリーもバランスよくちりばめられていました。
あかねが、ピアニストの母親の愛情をうけられずに育ち、
ファミレスの明かりの中の家族連れがうらやましく、
「ファミレスは小さな夢の国」と彼女にいわせるのは
「うまい!」と思いました。

タイムスリップの部分も、タイムマシンにのるわけではなく、
スケッチブックにかかれた場所で、
スケッチブックのそのページを開くと、短い夢をみる・・・
という「お約束」なので、そんなに矛盾はなかったです。
NIKE→ニケ、とか、
喫茶店の支払いで千円札が野口英世しかなくて
(当時は伊藤博文でしたっけ?)払えないとか、
先回りして説明してくれちゃうので、
あんまり「あらさがし」もできませんでした。

「傑作」ではないかもしれないけれど、
よくできた作品に仕上がっていて良かったです。