映画「感染列島」 平成21年1月17日公開 ★★☆☆☆
ノベライズ本 「感染列島」 涌井学 作 角川書店★★★☆☆ → 感染列島②      

読んで♪観て♪



正月明け、市立病院に務める松岡剛の元に1人の急患が運ばれてきた。
新型インフルエンザに類似する症状だがワクチンが通用せず、患者は死亡。
やがて同僚の安藤医師や他の患者に感染が広がり、病院はパニックになってしまう。
WHOのメディカルオフィサーで松岡の元恋人・小林栄子が事態の収拾と調査に乗り出し、
松岡も彼女と共に戦うことを決意するが、感染は日本全国に広がってしまい……。
                                [ GOO 映画 ]

WHOのメディカルオフィサーときいて、
2年ほど前、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にでていらした
進藤奈邦子さんという人物を思い出しました。
彼女はまさにWHOのメディカルオフィサーで、
世界各地で鳥インフルエンザの封じ込めに成功し、
自らの命を危険にさらしつつも
子どもを育てる母親でもあり、とても魅力的な方だったので
強く印象に残っていました。

壇れい演じる小林栄子も若くして病院の総指揮をとることになり、
病院のトップやスタッフたちとの衝突や、患者の隔離、冷酷なトリアージなど、
おそらく進藤さんも経験したであろうシビアな事態のなかで、
冷静に判断を下していく栄子(私のなかでは主役は彼女!)を
応援しながらみていました。

でもでも、途中から妻夫木演じる松岡と病院内の抱擁シーン・・・
すっかり引いてしまいました。
それっぽい音楽もかかって、タイミングよく雪まで降ってきて。
なんか大衆演芸の濡れ場みたいで、笑うしかなかったです。
「タフそうにみえて、ホントはぎりぎり頑張ってるか弱い女性」
ということなんでしょうが、壇れいはミスキャストでしょうね。
「壮絶な死」であるべきところも、最後まできれいなお顔で、
「血の涙」がひと筋・・・伝説のマリア像みたい・・・
誰もが思うことでしょうが、
まるでデボラ出血熱のような血みどろの最期が多いなか、
きれいな女優さんは発症してもよよよ・・と倒れて
すっと死んでしまうんですよね。変なの!

冒頭のフィリピンでの空撮とか、本気が伝わってくる
お金のかかっていそうな映像で、つかみはOK.
パンデミックを扱ったパニック映画としてはまあまあだったのですが、
恋愛をクロスさせちゃったのが、欲張りすぎというか、
ワケわかんない映画になってしまいました。

親子愛とか家族愛だったら、すんなり受け入れられるのですが、
主役のふたりも、養鶏場の娘と同級生も、
ある日突然「最愛の人」になってしまうので
エモーショナルな音楽をかけられても、
ちょっとも感情移入できませんでした。
メンタルな面の描写が最悪でした。
もっとフツーにやってくれ~と叫びそうになりました。

TBSとかスポンサーとかキャストの事務所とか
いろいろ大人の事情があるんでしょうが、
観てる最中からそんなことが気になる映画って・・・
何なんでしょ?


自分の危険もかえりみず、治療や看護に奔走する
医療スタッフの熱意はすごいと思いましたが、
最初の患者への聞き取りとか、実際はもっとしっかりやるでしょうし、
(そうでなけりゃ困ります)
本人がしゃべりたがらなくても、
アボン共和国で医師をしている実の父が帰国したことなど
ちょっと調べればわかりますよねっ。
治療の最前線にいる一介の医師がアボンに向けて出国するなんて
絶対にありえないでしょうし、
国連にも加入していないアボンの人たちがなぜか
英語ぺらぺらなんですよね。 変なの。


ラスト近くなって、松岡と栄子の回想シーンがはいるのですが、
そのなかで、栄子が医師になったのは、
脳腫瘍で亡くなった弟が最後にいったことば
「明日地球がほろびようとも
今日君はりんごの木を植える」
(たしかこんなような言葉だったと思います)

前半でもこの言葉への伏線が敷かれており、
結局このことを言いたいがための2時間半だったのかと思いました。

たしか、HNKの番組で進藤医師も
脳腫瘍で亡くなった弟から
「重病の患者に明日があるよといってあげてほしい」
といわれたのが、医師になったきっかけだとおっしゃっていました。

とすると、彼女がこの映画のまさにモデルなんですよね。

わざわざお金を払って映画をみにいくより、
家で「プロフェッショナル仕事の流儀」を
みてた時のほうが、うんと感動しました。
残念ですが・・・