映画「きみの友だち」 平成20年7月26日公開予定 ★★☆☆☆

原作「きみの友だち」重松清作 新潮社 ★★★★☆ きみの友だち①






あの重松清の感動作の映画化!

ということですから、原作と特に矛盾しているところはないです。

ただ、なんか、よけいなことはせずに

そのまま、淡々と映像にして欲しかった気持ちもあります。


原作は、同時進行オムニバスというのでしょうか、

10の話に8人の主人公。

全ての人たちがどこかでつながっているので、

もうそのまま映像にしてくれたら映画になるのに、

やっぱりそういうわけにはいかないんでしょうか??


冒頭はフリースクールのオチのないドキュメンタリーっぽいシーン。

柄本明がでてるので、ぎりぎり映画として成立してるレベルです。

こどもたちのひとりひとりの表情がアップになるんだけど、

けっきょくたいした意味もなく、本編がはじまります。


主人公の恵美がたまたま足が悪くて杖をついているので

彼女だけはいつの時代も恵美と認識できますが、

他の子たちは(私は原作を読んでいるのである程度は

わかりましたが)観客に理解できたんだろうか??

原作を読んでない「連れ」は、

最初に出てきたフリースクールのこどもたちが

どこかでまたでてくると信じていたようです。

おなじみの俳優はほとんどでないから、

最初はみんな緊張して一生懸命顔を覚えようとするよね、

残念でしたぁ・・・


5年生のとき、縄跳びができない、という理由で

自動的に「回し手」にされた恵美と由香。

二人以外のクラスの子たちが盛り上がるなか

「はじかれた二人」でスタートした友情。


原作では「クラスのみんな」

つまり、なかよしグループ、女の子の派閥争い

みたいなものに振り回されている「みんな」とは

別世界にいる「二人」が

いつも際だっていたのですが、

映画では、それとわかるのは、

縄跳びの役決めのときだけで、

中学生では「みんな」の役を

実質ハナちゃん一人で奮闘しているので、

それはバランスとしておかしいでしょ!

と思いました。


この映画の主題は

(ことばはうろ覚えですが)

「私はみんななんて信じない。

ホントに大切な人がいればいい」

だと思っています。


恵美と由香は性格はちがうし、

年中気まずくなるし、

クラスの人脈とはかけ離れたところにいる

「はじかれた二人」ではあるけれど、

一生忘れられない密度の濃い5年間の

友だちでした。

保健室のベッドのところで由香が

「私は(何人もの友だちはいらない。

それより)恵美ちゃんとずっといる方が楽しい」

とハナちゃんにいうところと

(話は前後しますが)

雨の日に

「いっちばん大きい傘できたの」といって

恵美を迎えに来るシーンで泣きそうでした。



恵美の弟ブンちゃんと転校生のモトくん。

彼らは成績が良くて、サッカーも強い。

生徒会の会長と副会長で

性格もよくてクラスの人気者

という、申し分のないライバル兼親友です。


こういう申し分のない子は、

(実在はしますが)あまり小説の主人公には

なりにくいのですが、

重松さんはあえてこの二人の友情を書いています。

なのに映画ではばっさりカット・・・残念です。


どこの町中にもある児童公園と

駄菓子屋(「なかむら屋」)

日本の原風景という感じです。

全体的にこの映画は

(台詞だけははっきり聞こえる)

引きの映像が多く、

人物の特定はしづらいでしたが、

空やまわりの風景は堪能できました。


中原のせりふに

「(ぼくが取材にきたのは)

フリースクールのことをみんなに知って欲しかったから」

というのがあります。

それはけっこう、おおいにけっこうですが、

この映画の監督も

フリースクールのことをみんなに知ってもらいたくて

この映画を作ったのかな?

まさかねっ!


次から次へと饒舌な語りで盛りだくさんの

エピソードの繰り出される

ボリューム満点のお買い得弁当の原作。

笹とか食えない葉っぱや飾り物の多い

見た目はきれいなローカロリー弁当の映画。

というのが正直な印象です。


せりふの間合いも異常に長い。

で、長い割に、それほどたいしたことも言ってないので、

気まずい雰囲気だけが残ります。


実は今日は舞台挨拶つきのプレミア試写会だったのですが、

キャストの挨拶や返答が(全員じゃないですが)

すごくつまらなくて、その時点で

テンションが下がってしまっていました。

見せて頂いて申し訳ないのですが、

テンポ良くパッパと進行しないとイライラする

せっかちさんには、原作をとうぞ。