映画「ぐるりのこと。」 平成20年6月7日公開予定 ★★★☆☆

原作 なし たまたま同名のエッセイはぐるりのこと


上映時間2時間40分。

翔子とカナオ(リリーフランキー)に訪れるのは、

フツーの夫婦にフツーに起こるレベルのできごと。

にもかかわらず、

長い作品なのに全く退屈することもなく

気がつくとエンドロールが流れていました。


なんでもきちんとやりたい翔子にとって

夫のカナオはあまりに頼りない。

職場でも、非常識な後輩に

それをしかれない上司。

身内もひどい。

怪しげな健康療法や宗教にはまる母。

兄もバブル時代は羽振りがよかったものの

今残っているのは借金と、無神経な嫁、

行儀の悪い子どもたち・・・


まあ、これくらいのストレスはだれもが

抱えていますが、

初めての子どもを亡くしたことで、

がんばってきた翔子の心は

プツンと折れてしまいます。


地団駄を踏んで泣きわめく翔子を

カナオはやさしく受け止めます。


「子どものことは時々おもいだしてあげたらいい」

「考えすぎたらあかん」

「みんなに嫌われてもいい
  好きな人にたくさん好きになってもらえばいい」

「ちゃんとせんでもいい、いっしょにおってくれ」


次第に翔子は今までの明るさを取り戻し、

ずっと書いていなかった絵を描き始めます。


世の中は1990年代。

連続幼女誘拐殺人事件、地下鉄サリン事件、

護国寺園児殺人事件、高級官僚汚職事件、

大阪児童殺傷事件・・・・

カナオは新聞社の「スケッチさん」(法廷画家)で

裁判を傍聴して被告人を

間近でみることができます。

裁判シーンをとおして、私たちも

この病んだ世相をつくづく

考えさせられます。


それでもこの世の中を私たちは生きていくのです。

「絵を描くことも技術なら

生きることも技術」

尼さんの言葉が印象的でした。


この映画は、当たり障りのない無難な映画ではありません。

前半にしつこく出てくる下ネタは、本当にお下劣で、

私は正直不愉快でした。(たぶん翔子もそうだと思います)

法廷での被告の態度などは、(あきらかに実際の事件を

なぞったものなので)

被害者の家族の方たちがみたらどう思うだろう・・・・

ある意味、問題作、かもしれません。


人間はもろくてあぶない。

でも、人間っていいな・・・・

最後は勇気と元気がでる映画です。