シン・新社会人になった君達に送る、下克上映画五選(各国選りすぐり編) | 湿った火薬庫

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※この記事は坂バさんのこちらの記事、どいつもこいつも辞めちまえ!【映画に学ぶ!この退職が熱い!!!】 - Midnight Invincible Children、へのリスペクトです。

※もしお暇がありましたら去年書いた姉妹編も宜しくお願いします。多分スッキリします。

※水曜日のキーワード「

 

 

梶原です

今年も早い物で、もう4月中期になってしまいました。このブログを読んでくださっている皆さんの中には、全く新しい環境に身を置く事になる方もいれば、生活自体は変わらずに気持ちだけ心機一転しようという方もいらっしゃると思います。その中で特に、長かった学生生活を経てそれぞれの選んだ会社で社会人として記念すべきスタートを迎える新社会人の方に向けて、今回の記事を書いています。

今後起こりえる様々な困難……。例えば上司からの理不尽な命令やお叱り、得意先からの無茶振り、モンスタークレーマー……等等の想像しただけで肩が重くなる様な事態が襲ってくる事もあるかと思います。

 

そういった出来事に見舞われた際、少しでも気が晴れる様な、あるいは元気が貰える様な、いわば登場人物達が色んな意味で「下克上」を見せ付けて来る映画を僕なりの観点で集めてみました。観点というか、タイトルにある様に世界各国……アメリカ、日本、韓国、イギリス、そしてドイツの五カ国からこれマジ下克上元気出るー!な作品を選りすぐってみました。

 

大して実用的にならないどころか気休め程度にしかならないかもしれませんが、苦しい時辛い時にそういえば梶原がこんな映画を紹介してたな……。暇つぶし程度に見てやるか。程度に頭の片隅に置かせて頂いて、おっ面白いじゃんって感じで仕事の疲れをリフレッシュ出来るのであれば、これ以上の幸せはありません。勿論新社会人の方だけに限らず、4月からの生活で気疲れしてたり疲労が溜まっている方にとっても気分転換の一環となればいいなと思ってます。と、取りあえず時間だけを潰したい校長先生の長話みたいな前置きもそこそこに、本題に入りましょう。

 

これから紹介する作品に目安票を付けていきます。

主に下克上する事柄(非常に勝手な基準と共に、下克上度が上がれば上がる程★の数が多くなります。上限は10個です。軽い物語の説明と、どこら辺に元気が貰えるかの解説と共に、最後に明日から使える映画内の台詞を適切な状況と共にご紹介します。

それでは宜しければ最後までお付き合い、お願い致します。

 

アメリカストレイト・アウタ・コンプトン

 

 

<下克上ポイント:理不尽な社会や金儲けばかりに走る輩

<下克上度:★★★★★★

物語:アメリカで絶大な人気を誇り、伝説的存在として知られているヒップホップグループ、N.W.A。そんなN.W.Aが生まれてから、イージー・Eが亡くなってからの現在……。中核を成していたメンバー、イージー・Eと他メンバーとの確執や、凶悪なプロデューサー、シュグ・ナイトとドクター・ドレーの対峙、メンバーの頭脳役、アイス・キューブと親会社との衝突等、その重圧な歴史の裏に潜む出来事を時に赤裸々に、時にドラマチックに、そして感動的に描き出す。

 

解説:一見、上映時間の長さもあり取っ付き悪そうな題材の作品ですがこれがNWA自体を知らなくても、純粋にメッセージを届けたくて音楽を愛した青年、生きる為に仲間から離れてしまう青年、あるいは才能を認めながらも次第に理想が食い違ってくるプロデューサー…・…と、とても人間臭い人々の青春群像劇としてガッツリと楽しめる作品なんです。

特にアガるポイントはメインメンバーのアイス・キューブやドクター・ドレーが行う、s会社や社会が押し付けてくる理不尽さやへの下克上っぷり。自分達の挙げた成果を利用して、甘い汁を吸っている親会社に物理的直談判したり。

 

自分達を暴力的集団として見下して監視してくる警察へ、観客を巻き込んだ挑発をぶちかましたり。

 

アイス・キューブもさる事ながら、終盤の超絶悪徳プロデューサー、プロデューサーに対して、自身のレーベルを立ち上げる為に離反する際のドクター・ドレーの台詞はきっと誰もが何か有事の際に使ってみたくなる事必死です。

苦しい時、しんどい時にこれを見て、いつも心にアフターマスを。そして最後まで音楽を愛していたイージーE。本当にお疲れ様。R.I.P、イージーE。

 

明日から使いたくなる名言

心機一転だ。自分自身のボスでありたい。

 アフターマス

(色々モメて退職する際に、次はどこいくの?とか半笑いで上司に聞かれたら使いましょう)

 

日本裏社会の男たち

 

 

<下克上ポイント:よからぬ事ばかり企んでる同僚や上司

<下克上度:★★★★★★★★

物語:多分近未来。現代社会でいわばヤクザと呼ばれている人々は隠れ蓑ではなく、正式に民間企業、もとい巨大総合商社WRCとして形を変えて社会に溶け込んでいた。そんなある日、WRCの会長である立花が突如として交通事故に遭い命を落とす。唐突に空いた会長のイス。水面下で何者かの陰謀が動き出す時、立花に忠義を尽くしてきた幹部の梅原や、梅原の親友であり自身もWRCに属する多田野が立花の死の真相を探る為立ち上がる。

 

解説:Vシネマに深く造詣と愛情があり、今や欠かせない重鎮である小沢仁志さんが監督名義をOZAWAとして6部作、のべ240分をかけて撮り抜いた、一大ヤク……じゃなかった、企業戦士サバイバルムービーです。とにかく悩んだり苦しんだりする要素は多田野に全振りされ、滅茶苦茶気持ちが良いのは小沢さん自身が演じる梅原の超格好いい企業戦士っぷり。何かと突っかかってくる同僚の田村に対しリボルバー片手に啖呵を切ってその場を制したり、ねちっこく絡んでくる刑事の佐野に対して3手くらい先手を打ち黙らしたり……。まるでヤクザ版島耕作の如きスーパーマンっぷりに痺れます。あ、企業戦士でしたすみません。

 

アクションも頭脳面も顔面もキレッキレな梅原の姿には、命の危険があってもこんな上司の元で働きたい!!となってしまう事間違いありません。

そんな梅原と多田野の織り成す社内改革は、何かと上下関係で悩んでいる貴方にとって戦うべき時に戦わねばと背中を押してくれるかも。新しき世界やインファナル・アフェアといったアジアアクションへのリスペクト溢れるバイオレンス描写も最高に面白いです。ちょっと上映時間でくらっとはするんですが、連続ドラマ感覚で週に一回のお楽しみな感じでで見れば大丈夫です。超お勧め!

 

明日から使いたくなる名言

俺たちゃ民間企業だろうが

(ムカつく同僚や上司が物理的に襲ってきて返り討ちにする際、ヤクザ呼ばわりされたら吐き捨てる様に使いましょう)

 

韓国アシュラ

 

 

<下克上ポイント:自分を蔑んだり利用してくる輩全般

<下克上度:★★★★★★★★★★

物語:重病の妻を持つ刑事ドギョンは、生活の為、妻の為に絶大な権力を誇る市長、パク・ソンベの悪事を揉み消す汚れ仕事に手を染め続けていた。その折、ソンベに敵愾心を抱える検事、キムにソンベの失脚を掴む為のスパイになれと弱みを握られるドギョン。部下だったがソンベの忠実な犬になってしまったソンモからの反抗もあり、次第にドギョンはソンベとキムの両方から追い詰められていく。地獄の様な状況の中でドギョンが最後に選ぶものは……。

 

解説:タイトルのアシュラが全く誇張でもなんでもなく、出てくる人間全員が阿修羅に見えてくる。現在絶賛公開中な韓国ノワールの新たな最高峰な作品です。とにかくひたすら心も体もボッコボコにされていくドギョンの不憫さもさる事ながら、それぞれ別ベクトルでこんな上司に目付けられたら絶対イヤだを全力で体現するソンベとキム。

環境変わったら滅茶苦茶イヤな奴になってた部下のソンモと、誰もがここまで極端でなくても、一人や二人似てる人が浮かんできそうな人間関係にドギョンと一緒に頭抱えたくなること請け合いです。そんな中でドギョンが最終的にしでかす行為、真意にははっきりと明るい快感は無いものの、やったれやったれ!となって見終わる頃には心が不思議にスッキリする事間違いありません、

 

もっともアシュラなのは誰か、その目で是非、お確かめください!

 

明日から使いたくなる名言

ケツでも舐めてろ

(パワハラ等で悪行かましてきた上司が左遷や解雇された際に恨み節をぶつけてきたらニヤニヤしながら使いましょう)

 

イギリスキングスマン

 

 

<下克上ポイント:上流で見下ろしてる連中全般

<下克上度:★★★★★★★★★★★★

物語:冴えない日々を送って悶々としている青年、エグジーはとある切欠からバーでチンピラ連中を一網打尽にする謎の紳士、ハリーに見受けられる。実はハリーはエグジーの亡くなった父親がかつて属していた、英国を陰で支える巨大スパイ組織、キングスマンのエージェントであった。今の生活を変える為、キングスマンの一員となるべく訓練生となるエグジー。その頃アメリカでは巨万の富を持つ大富豪、ヴァレンタインによる恐ろしい計画が始まろうとしていた。

 

解説:もう説明不要な気もしないでもないですが、皆大好き痛快スパイアクションの新たな金字塔になってしまった一本。

アクションやキャラクター描写の切れのよさは言うまでもないのですが、そこにマシュー・ヴォーンさんの持つシニカルさや悪趣味さが融合した結果、上流で俺らを見下してる頭お花畑な奴ら全員花火にしてやる!

な執念がそのまんま誇張ゼロで映像化された際には僕含め多くの人が溜飲をガッツリ下げたと思います。ここら辺の過激さが賛否両論を沸けている理由でもあるんですが、僕は支持派ですね。今後控える続編。ゴールデンサークルにこれを超えるデッカイデッカイ大花火があるのかどうか、滅茶苦茶楽しみです!

 

明日から使いたくなる名言

マナーが紳士を作る

(居酒屋やバーで部下や同僚相手にハラスメントを行う輩に傘などの武器を用意しつつ使いましょう。その際ドアを閉めるのを忘れずに)

 

ドイツノッキン・オン・へブンズ・ドア

 

 

<下克上ポイント:運命

<下克上度:測定なんていらない

物語:それぞれ重度の病気に見舞われており死期が迫っているマーチンとルディは偶然にも同じ病院で出会った。すぐに打ち解けた二人は酒の勢いを借り、どこぞの自動車を奪って死ぬ前にルディが見た事がないという海を見に行く事に決めた。自動車の中にある謎の大金の事もあり、ギャングや警察に執拗に追われながら二人は海を目指す。果たして旅の先に二人は海を見にいく事は出来るのか。


解説:脳腫瘍と末期骨髄腫という難病に侵されながらも、最後に願いを叶える為に時にユーモラスに、時にドタバタに、そしてシリアスかつ号泣必死な道中を繰り広げるマーチンとルディの姿は、見ている僕達に生きる事の楽しさと哀しさ、そして美しさを優しく教えてくれます。

 

 

その末に訪れる結末については伏せておきます。けれど最後のシーン、言葉は介さずに、それでもこれ以上ない二人の精一杯やれるだけやって生き抜いた事を示すラストに、震えながら何故か僕は毎度泣いてしまいます。

 

いや、皆泣きますよこんなの、多分。新社会人の皆さん、辛くなったらこの映画の二人に会いに来てください。そして海の話をしましょう。仕事頑張ってない?自分は他の人よりも頑張りが足りない?いえいえ、こうして毎日を頑張って生き抜いているだけでも貴方は大勲章物ですよ。マジで。

 

明日から使いたくなる名言
天国で流行ってることを?

 海を話題にすることだ
(同僚とか同期の友達が色々行き詰まった時に、急にこの台詞を振ってみましょう。何それ?と言われたらそれとなくノッキン~を薦めてください。それか一緒に見ようと誘いましょう。何かが変わります)


※※※

 

という所でそろそろ記事を終わりにしようと思います。
実の所最後まで暴力的というか、それこそ去年の特集みたいにザ・下克上な映画で固めようかと考えたんですが、
下克上って明確に人や社会だけでなく、自分自身に降りかかってくる不運や理不尽さに対して打ち勝つ事にも使えるんじゃないかと思い、最後の作品だけちょっと趣きを変えてみました。けど本当にノッキン・オン・ヘブンズ・ドアは変り種だからで選んだ訳でなく、懸命に生きる事、生きて前を向く事の尊さや格好良さをこれ以上なく熱く、そして泣ける(説教臭さなんて微塵も無く)作品なので、この五作品の中でも特に未見の方にお勧めしたい一本なんです。

映画なんか見て何が変わるのか。もっと他に有益な事をしたほうがマシなんじゃないかという考え方もあるとは思います。けど、映画内の登場人物達が必死に足掻いたり、また戦う姿を見て勇気を授かったり背中をぐっと押し出してくれた事って実は皆一度や二度あるんじゃないかなと。僕は何度もそういう経験があって、そういう感覚が今の自分を成形していたり……。

 

と湿っぽい自分語りはそこそこに、何にせよ少しでも、今新生活に悩んでいる、この記事を読んでいる人の重荷が軽くなれば、とても嬉しいです。お互いに頑張りましょう。そして迷ったらあの二人と海に行きましょう。ね。

では、こんな長々グダグダと最後まで読んで頂き、大変ありがとうございました。

 

 

梶原でした。またすぐお会いしましょう。