若者にツケを回し未来を奪う、そんな社会に未来はあるのか?この先に待つのは過酷な未来なのか?
これまでの記事の中で総務省統計局の労働力調査をもちいて
非正規雇用者の実態を様々な角度から検証してまいりました。
その中に下記の記事のように年齢層別の非正規雇用者の実態を取り上げた物があります。
(Ⅰ) 増加する非正規雇用のしわ寄せはどこへ?実感からかけ離れていく形骸化した完全失業率
(Ⅱ) 氷河期世代は本当に苦難の世代なのか?就職氷河期がもたらした無残な爪痕の正体に迫る
これらの記事の元になっているデーターはせいぜい単純に15歳以上の人口を
性別や年齢層別程度の属性に分けて比較した物です。
しかし、実際のところ15歳以上の人口を性別や年齢層別程度の属性という
大まかな区分で分類しただけでは婚姻や在学などの属性が考慮されておらず
いまいち詳細な実態が掴み難くなっていると感じられる方も多いと思われます。
社会に進出してない在学者や婚姻によって就業形態が変動する女性を
15歳以上の人口に一色単に加えてしまうとそれらの影響によって
真相が歪んでしまっているかもしれません。
そこで、今回は15歳以上の人口に性別や年齢層別といった属性だけでなく
在学や婚姻といった属性の影響を考慮して、在学者と婚姻女性を除いた
卒業男性と卒業未婚女性という、より積極的に働く事を中心に生活する事が出来るであろう
15歳以上の人口に焦点をあてて、新たな角度から現在の雇用環境の真相を検証してみたいと思います。
①と②は15歳以上の卒業男女から婚姻女性を除いて
より積極的に就業できる立場にあるであろう人たちの現在の就業状態を
比率と人数でグラフにした物です。
上記(Ⅰ) の記事
でグラフ化した15歳以上人口の男女のグラフ
と②を比較すると
その数字が大きく違っている事がわかります。
②と比較すると氷河期世代の代表的なサンプルとして扱っている 25~34歳の年齢層の人口が
65歳以上のリタイヤ世代を除く、その他の各年齢層よりも突出しているのがわかります。
(※実際にこの世代の人口が多いと言う事ではありません。)
この25~34歳の年齢層は未婚率が高い世代 であり
15~24歳の年齢層と比較して在学者も激減するため、このような結果になるのもうなずけるところです。
25~34歳の年齢層は最も積極的に就業できる人々が多い年齢層だと言う事でしょう。
それは逆を言えば同世代の在学者や女性の婚姻者が就業する時に
同じ年齢層により積極的に働ける立場の競争相手が多く存在すると言う事にもなります。
この25~34歳の年齢層は家事や育児に手を取られるような
積極的に働く事に対する障害をかかかえていると
同世代の中でより不利な立場になってしまうという、他の世代と比べた厳しさが伺えます。
ちなみに非正規全体で見ると②の卒業者である男性と未婚女性の総数は671万人です。
非正規は平成18年平均の労働力調査では総数で1677万人存在するという数値が出ています。
(17年平均では1633万人なので前年比+44万人、+2.69%と言う事になります。)
ですから非正規1677万人のうち40.01%が卒業者である男性と未婚女性だと言うことになります。
③の非正規雇用者全体に占める年齢層別の比率から見ると
15~34歳の比率だけで全体の2分の1にも達しており、その数は②から334万人にも達しています。
(25~34歳の年齢層に限って見ると198万人)
注目すべき点はこれはあくまで卒業者である男性と未婚女性に絞った比率であると言う事です。
これら卒業者である若年層の男性と未婚女性は社会における位置付けを考えると
将来親から自立し、自らが生計を立てていかねばならない年齢層だとも言えます。
平成18年平均の労働力調査で1677万人存在するという非正規のうち
40.01%である671万人が卒業者である男性と未婚女性で
そのうち19.92%にも達する334万人が将来自立しなければならない
15~34歳の若年層で占められているという数値は薄ら寒い物を感じさせます。
もちろん若年層の女性は将来婚姻すると言う見かたもあるのでしょうが、
それは今の若年層未婚化社会という現実から考えると
かなり都合のいい楽観的論だとしか私には今のところ思えません。
しかし問題は非正規だけではありません。
そうですまだ完全失業者や非労働力人口と言った水面下の人々が存在します。
④は卒業男性と卒業未婚女性の完全失業者を年齢層別に比率で現したグラフ
⑤は卒業男性と卒業未婚女性の非労働力人口を年齢層別に比率で現したグラフです。
②を見ると若年層である15~34歳の卒業男性と卒業未婚女性の完全失業者は108万人と
卒業男性と卒業未婚女性の完全失業者総数である210万人の半数を超えており
④を見ても比率は51.42%にもなっています。
そのうち、もっとも完全失業者の比率が大きいのは
氷河期世代のサンプルとして扱っている 24~34歳で29.51%と約3割にも達しています。
平成18年平均の労働力調査における完全失業者総数は275万人であり
卒業男性と卒業未婚女性の完全失業者総数である210万人はそのうちの76.36%にもなり
そのうち若年層である15~34歳の卒業男性と卒業未婚女性が占める比率は
39.27%と将来自立をしなければならない若年層の若者がその約4割を占めています。
非正規雇用に占める15~34歳の若年層の割合と比較すれば若干劣るものの
やはり、これはかなり過酷な数値としか言えません。
非労働力人口ではどうでしょうか?⑤をみると非労働力人口のうち70.89%が
65歳以上の年齢層であり、その次に比率の高い55~64歳の世代の13.28%と併せると
卒業男性と卒業未婚女性の非労働力人口のうち84.17%が55歳以上の高齢者であり
これまでの非正規雇用や完全失業者とは大きく比率の構成が違ってきます。
高齢者になると非労働力人口数が急激に増加するのはリタイヤする人が高齢になると
増えて非労働力人口が増加するからでしょう。⑤のグラフは歪んでいると見るべきだと思います。
そこでもう一つの15~54歳の範囲に絞って卒業男性と卒業未婚女性の非労働力人口を
現したグラフを作成しました。
⑥の15~54歳に絞ったグラフで比率を見てみると15歳~34歳の比率が57.78%と
半数を超えており、僅かながら若年層での非労働力人口の比率が高くなっています。
どうやら非労働力人口における若年層の比率はたいした違いはないようです。
(平成18年年平均の15~54歳の非労働力人口総数は1635万人なので、その6.6%になります。)
しかし、ここで冷静に考えて見てください。
一般社会で中途採用をする場合、必要不可欠で前提になるのは即戦力とみなされる
年齢に相応した実務経験(正規になるなら正規としてのキャリア等)です。
この15歳~34歳といった若年層の卒業男性と卒業未婚女性の
非正規雇用や完全失業者の比率が③や④でいちじるしく多かった事を考えると
非正規雇用や完全失業者とは将来の非労働力人口の予備軍ともなりうる存在です。
この15歳~34歳といった若年層の卒業男性と卒業未婚女性の非正規雇用や完全失業者は
若いうちに将来に必要なキャリアを形成できない存在と言う事になります。
②から総数を考えると15~34歳では104万人、35~54歳では76万人と
非労働力人口中に自立しなければならない若年層の卒業男性と卒業未婚女性が
今現在35~54歳と比較して28万人も多く存在していますが
将来、ここに十分なキャリアが無く高齢化し、年長者となった
非正規雇用者や完全失業者が加わってくると考えると
果たしてこの28万人だけ多い、若年層の非労働力人口が多くないと言い切れるのか
と言われると私は多くないと言い切れる自信はありません。
もっとも非正規雇用者は今後も一生働けるし、完全失業者の中にも正規経験者が居て再就職できたり
正規になれなかった完全失業者は非正規雇用者としてなんとか生活できるさと考える方もまたいるでしょう。
楽観論が現実となるのか悲観論が現実となるのかは未来の事なので誰にもわかりませんが
将来自ら生計を立て自立しなければならないであろう
15歳~34歳の若年層の卒業男性と卒業未婚女性だけで
非正規雇用で334万人、完全失業者で108万人、非労働力人口で104万人の合計546万人と
平成18年平均による、日本の15歳以上の人口の総数である10997万人のうち5%も存在するという
数値は少子高齢化社会を迎えるこれからの時代にあって社会の大きな負担となる事は想像に難くありません。
そうです、この10997万人全てが就業者として今現在、社会を支えているわけではありません。
10997万人のうち6369人が就業者として社会を支えており、そこから比率を再算出すると8.57%になります。
今後、年長者が引退し始めれば6369万人の就業者の数は自然と減少する事が予想されます。
そこで更に546万人もの15歳~34歳の若年層の卒業男性と卒業未婚女性が社会の負担となれば
これから訪れる少子高齢化社会において社会を支える側の就業者にとって将来背負う事になる
大きなツケになることは間違いありません。
労働力調査の現実からみる限り、我々の未来はこのままでは過酷な現実が待っているの
かもしれないと言う事を警告して今回の記事を締めくくりたいと思います。
出典
総務省統計局 の 労働力調査、平成18年平均(詳細結果)
特別集計-第1表-年齢階級・教育・配偶関係,就業状態別15歳以上人口
文中の非正規、完全失業者、非労働力人口の単純総数は
報告書掲載表-第1表-就業状態,年齢階級別15歳以上人口
より引用、算出している。