地域ブランドを含む「ブランド構築」、そして、それらを一部に含む「知的資産」に関する本を読み返しています。


 知的資産は、人に蓄積される知識や経験などの「人的資産」、組織に蓄積される企業文化や知的財産権などの「構造資産」、企業と顧客や供給業者などとの関係性に由来する「関係資産」に分類されます。


 知的資産は、計量化しにくく、見えにくいものですが、企業の経営において非常に重要なものです。


 これを可視化して、知的資産相互の複雑な関係性を認識することで、将来に向けた経営戦略の検討に役立ったり、創業者から2代目への事業承継などにおいても有効なものと考えられています。


 可視化のためには、仮説に基づく計画的なインタビューを行うことが一般的ですが、そこで得られた回答については、そのまま真っ直ぐ言葉どおりに捉えることができない場合もあるそうです。


 メモ


 私は、震災直前に、東北経済産業局主催の「知財戦略スペシャリスト育成研修」というものに参加しました。

 東北地方の弁理士・弁護士・中小企業診断士などが仙台に集まり、3回の合宿を行い、座学の他に、企業経営者の方へのインタビューを実施しました。


 インタビューは2名の経営者の方に対してグループで実施し、その回答を踏まえた検討を行い、それぞれに知財経営戦略を提言することになります。


 特に、2回目のインタビュー後のグループ討議では、「どうやら、社長さんは知的財産の問題というよりも、人材に関する課題を抱えているような気がする。」というのが、グループ員の感想でした。


 その研修では、「特に弁理士の場合、知財経営戦略というと技術戦略に偏りがちであるので、それを自覚したうえで技術戦略に過度にこだわらず、経営者が真に欲している提言を行うべきである。」という考えが基本テーゼとして根底に流れていました。


 時計


 合宿1日目にインタビューを行い、研修日程終了後の夜もグループ討議を継続し、翌日に提言を行うことになります。


 私たちのグループでは、知財に関する提言も当然含めましたが、それ以外に従業員のモチベーション向上や動機付けに関する提言を行いました。

 そして、それまで各グループの話を静かに聞いていた経営者の方が、私たちの人材に関する提言を聞いて、手をたたいて喜んでくれました。


 インタビューの回答の裏に、経営者が本当に欲していることが隠されていることを実感した瞬間でした。


 ひらめき電球


 振り返って考えると、その時に学んだ「知財経営」とは、「知財=知的財産」というよりは、「知財=知的資産」という認識に立ったものだったような気がします。


 そういう意味で、私の事務所の「知財経営」とは、狭い意味での「知的財産経営」ではなく、「知的資産経営」に非常に近いものと考えています。