上巳の饗応
平成28年4月7日(木曜日)旧上巳/己未
アエノコト 上巳の饗応が開催されました。
上巳の節供は、4月の最初の巳の日。
巳(へび)のごとく脱皮を図り、自らの生まれ変わりを促し、
必要のないものを捨て去る日なのだそうです。
日本の風習とオリエンタルな文化が融合したようなエキゾチックな室礼は、
この日のお軸は川里哲也氏の作品でした。
山伏・宮下覚詮さんの法螺貝とともに開幕。
大地を目覚めさせるような深い轟音とともに、会場が浄化されていくのを感じます。
雅楽の演奏は
笙…田島和枝氏
篳篥・・・小林勝幸氏
龍笛・・・伊崎善之氏..
名称&旋律ともに美しい春の旋律「桃李花」を奏でていただきました。
この日はもう一人、スペシャルゲストに薩摩琵琶奏者・古屋和子さんをお迎えしました。
笙とのコラボレーションで、
謡曲「桜川」(世阿弥作)を琵琶と朗読、謡を交え、
すさまじい世界観を奏じていただきまました。
子どもと離れ離れになった母が、狂乱して子を尋ね歩く、子別れの狂女の物語。
九州・日向国の馬場の桜児(さくらご)は、母の貧しさを悲しむあまり、
自ら東国方の人商人にわが身を売り、国を立ちます。
それを知った母は氏神の木花咲耶姫(このはなさくやひめ)に我が子の無事を祈り、
その行方を尋ねて旅に出ます。
日向国(宮城)→須磨→熊野→駿河と渡り、
流れ流れて常陸国(茨城県)桜川へたどり着くと丁度桜の季節。
狂乱して桜川に流れる花を抄っているところへ弟子をつれた僧がやってきてワケを訪ねると、
失った子の名も桜児、この川の名も桜川、何か因縁があるのだろうが、
春なのにどうして我が子の桜児は咲き出でぬのかと嘆くと、
僧にお供していた小僧がその桜児だったことが分かり、母子は再会。
というあらすじなのですが、実はこの狂女が辿ってきた土地には
あの世の縁とこの世の縁を結ぶ意味を持つ二重構造の物語になっているそうです。
そして、新月の晩に起きて、巡り巡ってまた新月の夜にかえって行くという物語でもあります。
そしてまた、図らずもこの道筋が中央構造線断層帯をなぞっており、
言葉では言い尽くせない深い因縁とともに、
古の叡智というのか、自然観というのか、深い感慨を抱かずにはいられません。
特殊な美の空間を体感した後は、お待ちかねのお食事タイムです!
春を告げる滋味や、桜の花やヨモギ、アサリやハマグリなど、
桃の節供にお目見えするような献立がずらり!
●小松菜の和え物
●高野豆腐
●ひじきと豆のサラダ
●大根のソテー(モッツアレラチーズをのせていただくと美味!)
●ph調整材を使っていないブラウン牛のモッツアレラチーズ
●石神さんの天然酵母パン
耳にも目にも体にも、春の息吹をたっぷりと取り込みことができました。
この日の帯は、もちろん、「桜川」を見立ててらっしゃいました!
お濠の桜も、日中の強風に負けずに咲き誇って迎えてくれました。
「桜川」を聴いた後では、すっかり桜に対するイメージが変わってしまい、
夜桜は特に、美しさに秘められた畏れを感じてしまいます。不思議。。。
さて、アエノコトものこすところあと二回です!
次回は6月6日(月)端午の節供。
皆さまのお越しをお待ちしております。