「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧(おさ)えつけていた」ではじまる文章は、若者特有のなんともいえない焦燥感のようなものがうまく書かれていて、そういう気分だったことあるなあと懐かしいような、嫌な気分になった。
昔から読みたいなと思っていた本ではあったが、読む機会がなく放置していた。
全部で7ページしかない短編だと知っていれば、読んでおけばよかった、と当然後悔はした。
若い頃にしかわからない感情でもあっただろうし。
実際、短い小説なのに後半は、よくわからなかった。
文章の意味がわからないということではなくて、なんでそういうことするのかなあという感じ。
まだ若い頃に読んでいれば、読み取れた感情なのか、と自問してみるけれど、そんなこともない。
若い頃の僕は、もっと自分の価値観に陶酔していて、このような若者を見れば平然と切り捨てていたように思う。
もし、この本に近い頃があったとすれば、今から2年か3年ほど前。
自分の能力に対する自信が揺らぎ、社会に対する強烈な拒絶感を持ったあの頃だったら、この本を受け入れられただろうか。
受け入れることはできたかもしれないが、やっぱり理解はできなかったように思う。
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