『カフカとの対話』復刊! | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

絶版状態だった
『カフカとの対話』が、
みすず書房から復刊されるようです!


みすず書房 近刊情報

2012年9月10日発行予定となっています。
(追記:10月10日に変更になりました)

『カフカとの対話』はとても面白いです。
そもそも絶版状態になんかなっていてはいけない本です。
復刊はとても嬉しいニュースです。

カフカを知るには、まずこの本から始めてもいいかもしれません。
それだけ魅力があります。

カフカ自身が書いた本ではありません。
若い頃にカフカに詩を見てもらったりしていたヤノーホという若者が、
後に書いた回想録です。
カフカがこう言った、こうしたという思い出話が綴られています。

ヤノーホの書いたことが正確かどうかには、
かなり議論があります。
たしかに、この本のカフカ像というのは、
あくまでヤノーホの目を通したもので、
実像とはちがっているかもしれません。

また、カフカはヤノーホを評価していなかったようですし、
才能のある書き手とは言えないのでしょう。

しかし、そうしたマイナスをすべて勘定に入れても、
それでもなお、
この本は読み手を魅了します。

若者の、尊敬する作家に対するあこがれ、
その人の言葉のひとつひとつ、
動作のひとつひとつを見逃すまいとする熱心さ、
そうしたものが、
すべてのページにあふれています。

尊敬する作家を目の前にして、
その言葉を聞き、その動作を目にするとき、
そのすべてがとてつもなく輝いて映るものです。
その輝きが、
この本を読むほうにも伝わってきます。
そのことが、この本に、
とても瑞々しい魅力を与え、感動を引き起こします。

この本をきっかけに、
カフカに興味を持つ人も多いと思います。
とても大切な入り口のひとつです。
復刊が待ち遠しいです。