SNSに2015/3/5に掲載

 

 不定期の旧刑事コロンボ制覇計画第二十二弾はジャック・キャシディ氏が二度目の犯人を演じた
第三の終章
Publish Or Perish
である。
 本作まず気になっていたのが被害者となる作家役がミッキー・スピレーン氏だということである。ミッキー・スピレーン氏はハードボイルド作家でマイク・ハマーシリーズで有名な刀のだけど、劇中で氏が演じる作家は性と暴力の物語に嫌気が差してシリアスなものを書きたくなっている、という設定なのだけどミッキー・スピレーン氏はまさにその性と暴力の作風で有名になった方である意味パロディになっていて作品を知っている人なら多分笑えたんだろうなと思う。自分は追悼の雑誌で短篇をいくつか読んだくらいで、少し興味があるのだけどなかなか作品が見つからない…
 ちなみにミッキー・スピレーン氏はその内容が問題視されて発禁処分を受けてしまったのだけど、後年は作家としてよりも俳優としての知名度が高かったそうである。自分は吹替え+字幕で観たので声の方はわからないのだけど、表情やら何やら自然に感じた。
 若い頃はかなり血気盛んだったそうだからこんな役は引き受けなかったと思うし、激怒したと思うのだけど年齢を重ねるにしたがって性格が丸くなったそうだけど、それだけ余裕ができたんだなと思う。
 まあ、他の役者さんの演技が気に入らずに自ら決定版としてマイク・ハマーを演じたり、本人役で3Dミステリー映画に主演したりと遊び心があるからこそできることだとは思う。
 ちなみにガイドブックで本作から連続する三作品はそのまんまキャスティングと紹介されていて次の作品では共犯役、最後の三つ目では犯人役とそのまんまなキャスティングが行われているそうである。

 さてさて本作は中期刑事コロンボを支えることとなり、後に原作者コンビと「ジェシカおばさんの事件簿」を製作することになるピーター・S・フィッシャー氏のシリーズ脚本初参加作品と言う記念すべき作品だったりする。
 本作は殺人をある条件をもとにある人物に依頼し、自分はアリバイを作り最終的にはその人物を殺害というトリックなのだけど、この殺人を依頼した人物エディ・ケーン(演ジョン・チャンドラー)の声を担当したのが俳優の橋爪功さんで知って聞いていても声が若いせいかわからないくらい自然で、演劇をきちんと学んでいる人は本当に声優としても上手だなと感じた。資料によると他にもアガサ・クリスティー原作の「なぜ、エヴァンスに頼まなかった」にも声で出演しているそうで気になっている…

 かなり入り組んだトリックなのだけど、途中で自分はコロンボが仕掛けた罠の予想がついてしまった。ミステリーではよくあるといえば、ある罠なのだけどそれでも終盤のその罠が明かされる場面はみていて痛快だった…ただ存在が隠されていたこともあり罠に引っかかる前にエディ・ケーンが殺害されてしまうのだけれども。
 本作もともとは90分枠で脚本が書かれたそうだけど74分と短い時間枠で製作されたそうである。前作もそうで脚本の段階でカットされたり撮影された場面をカット、ある人物の出演場面がまるごとなくなったりしていたのだけど、本作の場合は脚本が緻密すぎてあまりカットができなかったそうで、冒頭の殺人場面が分割画面で演出されるのは時間を短縮するための苦肉の策だったそうだけど、観ていて奇妙な緊張感があってある意味正解だったと思う。ただ、その分割画面演出がその場面だけで他の場面になかったのはちょっと統一感に欠けているように感じてしまった。とはいえ、分割画面を使うような場面は以降にはないから変に使うよりは効果的だったとは思うけれども。

 ちょっとおっと思ったのが、この作品に登場する作家は口述筆記を行うのだけどそのときの様子が少し描かれていたことである。口述筆記と聞くとテープレコーダーに直接吹き込んでいると思っていたのだけど、本作ではマイクを片手にしゃべっていて「あ、マイクがあるのか」と妙なところでビックリしてしまった。

マープル日記/Jキャシディ…被害者は本物のハードボイルド作家「第三の終章」 画像1

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