自分は東京創元社のメルマガをとっているけれど今回の新刊案内を読んでいてちょっと不思議に思った作品がある。それは以下のものである。

【創元SF文庫】(国内SF)
◇『海王星市(ポセイドニア)から来た男/縹渺譚(へをべをたむ)』今日泊亜蘭/日下三蔵編
戦後日本SFの黎明期に聳え立つ巨人の名作短編集を合本で贈る。

 どこが不思議と思うかもしれないけれど、たしかかなり以前に同じく創元SF文庫で同じ本が出ていたような気がする…
 新刊案内とはべつにちゃんと重版情報欄もあるし、同じく新刊案内にあったブラウン神父シリーズは新版とわざわざ書かれているし、これまでのメルマガを読んでいると復刊だとか書かれていただけになんだか初版のような書き方が不思議に思った。
 作者の名前や作品名が特徴的なことと、ちょっと懐かしさを覚えて当時気になっていたけれどすぐにネットでも品切になりものすごい中古価格をつけられていた記憶がありそういったこともあって覚えていたのである…

 小学生の頃、お小遣い制&本屋さんがない(取り扱いは雑誌のみである時期から本の取り寄せもできなくなった・苦笑)ことから読む本は度々書くように亡くなったおば(祖父の姉)とおじさん(父の兄)が本をよく読むことからそこからか近くの小さな図書館で本を読むことが多かった。
 高校生時代まではよくその図書館に行っていたけれど色々と忙しくなってから足を運ばなくなった。そして数年前にふと何気ない気持ちでその図書館に行くと大改装がされていて古い本はのきなみ処分されていた…
 小さい頃に読んでいた本やいつか読もうと思っていた本がなくなっていてものすごく切ない気持ちになった。
 そしてそのなかにはSFベストセラーズというシリーズがあった。

 中学生の頃からミステリマガジンを読んでいることもあってSFはSFマガジンが隔月刊になって手をとるまでほとんど読んでいない自分だけれど小学生の頃はそのあたり意識せずに多少は読んでいた。
 そのなかでもSFベストセラーズが漉きでおいてあるものは大部分読んだと思う…今日泊亜蘭さんも子供心にも印象的な名前で読んだ記憶があったけれど…さてそれが何だったか。怪獣大陸だとかの題名だったと思うけれどさすがに小学生時代に読んだものだからかなり記憶があいまいになっている…

 光瀬龍さんの明日への追跡、SFと思わせて最後のどんでん返しに子供心に衝撃的だった福島正実さんの異次元失踪、ここからは作者は覚えていないけれど人類のあけぼの号、素晴らしき超能力時代、射手座の人びとが次々と自殺する射手座の少女などなど…
 そして子供心にいつか観たいな~と思ったのが既刊案内に書かれたNHK少年ドラマシリーズで次々とドラマ化という一文だった。ただ残念なことに大部分のフィルムが失われているということで自分が観たことがあるのは謎の転校生とタイムトラベラー(時をかける少女)の最終回…
 たまたまタイムトラベラーのサントラを手にいれたけれど保存状態がよくなくて発売の中止を考えたけれど資料として発売をしたと解説で書かれていて実際に音質が悪いのだけれど、これだけ扱いが悪いなか残されているのは奇跡だな~と思ってしまった…
 ミステリ、ファンタジー系統を主に読んでいる自分だけれど今日泊亜蘭さんの名前をみていわゆるジュヴナイル作品を思い出したのだから自分の知らない心の底でSFがかすかに根付いていたのかな~と思った。
 以前も書いたように中学生時代ミステリマガジンかSFマガジンどちらかを読むか悩んで最終的に前者を選んだのだけれど、もしもあのときSFマガジンを選んでいたら今とは趣味がかなり違ったのかなと思うことがある…今となってはもしも、の話だけれど本当にあのときミステリマガジンを選んだのは運命の分かれ道だなと思う。
 最近なぜか子どもの頃に読んでいた本が懐かしく感じて古本や再刊で手にしているけれど眉村卓さんや筒井康隆さんなどの作品は今風のイラストや一部文章に手を加えているものもあるみたいだけれど、未だに比較的に入手できる物語があるのは本当にすごいと思う。

 ただ以前も書いたけれど現行版のなぞの転校生の新規あとがきはなぜかちょっとショックだった…筒井康隆さんの時をかける少女に対して未だに稼いでくれる親孝行な作品というようなコメントはなんとなくきついジョーク(未読だけれどそのパロディ作品は聞いた限りでは読めない…未だに怖くて他の作品が読めない・苦笑)と受け取れるけれど…

現在の私には、楽観的に過ぎたのではないか、これはむしろ願いであり祈りではないのか、と思えるのである。いや、そんなことを言っていてはいけないのであろうが、人間、歳を取ると意地が悪くなるのだろうかと、自分でも肩をすくめたい気分なのだ。

 このあたりそれこそ年齢を重ねたからこその1文だけれど、この文章にショックを受けた自分は結構影響を受けているのだな、とちょっとビックリしていたりする。
 なのにSFとはほとんど無縁な自分にちょっと笑ってしまう。

 色々と小さい頃を思い出した朝だけれど前回は入手できなかったから今回は手に入れたい…

 余談だけれど新刊案内でちょっと気になった文庫…

◇『緑の草原に…… 田中芳樹初期短篇集成1』田中芳樹
豊穣な物語世界を紡ぎ続ける作家・田中芳樹。後の名高い傑作シリーズの数々へ結実する、原初の煌めきを宿した短篇群を全二巻に収める。第一巻は、第三回幻影城新人賞を受賞して作家としての出発点となった表題作を劈頭に、時を遡り続ける恋人たちの逃避行を描いた「いつの日か、ふたたび」、宇宙を舞台に航宙士たちの人間模様が交錯する佳篇「流星航路」ほか〈幻影城〉に発表した10篇を収録。著者の輝かしい軌跡を辿る初期短篇集成。

◇『炎の記憶 田中芳樹初期短篇集成2』田中芳樹
作家・田中芳樹の輝かしい軌跡を辿る初期短篇集成。第二巻は、人知を超えた能力を宿した青年・冬木涼平が自らの運命に翻弄されていく三部作をはじめ、星間戦争の最中に青年将校と謎めいた少女の邂逅を描き評価の高い「戦場の夜想曲」、四百年の時を経て一人の男が地球に降り立つ「長い夜の見張り」ほか〈SFアドベンチャー〉に発表した作品を中心に11編を収録。『銀河英雄伝説』など傑作シリーズを多く持つ著者の魅力を再発見する全二巻。

  解説や推薦帯などて田中芳樹さんの名前は結構目にしていくつか気になる作品もあるけれど、未だに作品を読んだことがない…

 さらなる余談だけれど2017年6月の重版情報を読んでいたら…

 
ポワロの事件簿〈1〉
アガサ・クリスティ
厚木淳 訳
007/薔薇と拳銃【新版】
イアン・フレミング
井上一夫 訳
クリスマスのフロスト
R・D・ウィングフィールド
芹澤恵 訳
日本探偵小説全集〈8〉久生十蘭集
久生十蘭/中島河太郎 監修
湖底のまつり
泡坂妻夫

などがあったのだけれどアガサ・クリスティは未だに世界中で売れていると聞くけれどこういう重版情報をみると実感する…
 そして創元推理文庫のイアン・フレミング氏の原作007はちょこちょこと映画公開以外でも重版してくれるけれど…半分の出版権を持つ早川書房は映画公開時でもまったく復刊してくれないのがかなり不満…まあ度々書くように早川書房は新しいもの、創元はクラシックに強い印象を持っているからその印象通りではあるけれど…
 早川書房はミステリマガジンなど自分は育てられた部分があるからどうしても思い入れがあるだけに、どうしてもちょっと早川書房には厳しくなってしまう(苦笑)