クラッカーBRICs経済研究所(代表 門倉貴史) では表題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。詳細はHPをご参照ください。


トルコは世界有数の観光立国として知られており、観光収入が名目GDPに占める割合は5%にも達する(2005年)。日本の観光収入はトルコの7割程度、名目GDPに占める割合では0.3%程度にすぎない(2005年)。

これまでのトルコの観光収入の推移をみると、年々増加傾向をたどってきたことがわかる。2005年の観光収入は過去最高となる181.5億ドルに達した。

トルコは昔から観光資源が非常に豊富で、ユネスコの世界遺産に登録されている文化遺産や複合遺産も多く存在する。文化遺産としては、トロイの遺跡、イスタンブールの歴史地域、クサントス・レトーンなどが有名であり、複合遺産としては、ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群やトルコ西部にあるヒエラポリス-パムッカレが名高い。

製造業の国際競争力がまだそれほど強くないトルコでは、貿易収支が輸入超過に陥りやすく、観光収入や観光に伴う輸送収入が外貨蓄積や経常収支赤字をファイナンスする重要な手段となっている。これまでの観光収入や輸送収入の増加によって、トルコの外貨準備高は大幅に拡大しており、2007年1月時点では928.9億ドルにも達する。

トルコ政府が観光資源の開発や観光産業の育成に力を入れていることもあって、観光収入額はこれまで大幅に拡大してきたが、直近の2006年は前年比7.2%減の168.5億ドルと低迷した。

2006年の観光収入の内訳をみると、国内景気が好調に推移していることから国内観光収入は増加したが、外国からの観光収入は2006年後半以降、通貨リラが他国の通貨に対して上昇したこともあって伸び悩んだ。外国からの観光収入が伸び悩んだ背景には、トルコの治安が悪化していたという事情もある。トルコでは、2006年の前半に、分離独立を求めるクルド人の武装勢力によるテロ事件が相次いで発生した。最大の経済都市イスタンブールにおいても、爆弾テロなどが起きている。

今後については、トルコのマクロ経済が好調に推移すると見込まれるうえ、為替レートも安定的に推移、治安も改善するとみられることから、観光収入は再び増加傾向で推移することになるだろう。トルコは、日本人観光客の呼び込みにも積極的で、将来的には年間10万人程度の日本人観光客を50万人にまで増やすことを目標として掲げている。