BRICs経済研究所 では表題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。詳細はHPをご参照ください。


■近年、世界規模で不動産価格が上昇している。2003年から2005年の不動産価格上昇率(年率)をみると、最も上昇率が高いのは、ロシアのモスクワ(年率+58.8%)となっている。

■住宅バブルの懸念が強まっている米国では、ニューヨークの上昇率が年率+22.6%、サンフランシスコが同+14.0%といずれも高い伸びとなった。

■欧州では、英国の住宅市場の過熱感が薄らいできた一方、最近では好景気の続くフランスとスペインで住宅バブルの懸念が強まっている。

■韓国では、首都ソウルを中心に大都市で住宅価格が急騰している。投機目的の不動産取得も増えているという。不動産バブルの懸念が強まってきたことから、韓国政府は2005年9月に、総合不動産対策を発表した。一方、中国の上海市の不動産価格上昇率は年率+6.4%となった。一連の政策が奏功して、上海市の住宅価格は足元で下落傾向に転じている。

■アフリカ地域では、南アフリカの住宅価格が上昇している。金価格高騰の恩恵を受けて金産出国の同国のマクロ経済が好調なこと、通貨ランドが高水準となっていることなどを背景に、海外からの投資資金が南アの不動産市場に向かっている。また、南アフリカでは黒人の中産階級が多数台頭しつつあり、彼らが居住用の住宅を購入する動きも強まっている。

■オーストラリアでは、2000年開催のシドニー・オリンピックが終了してから、住宅価格が急騰し始めた。住宅バブルを懸念した豪州準備銀行は、2002年の5月と6月に利上げを実施した後、2003年の11月と12月にも連続して利上げを実施。金融引き締め効果浸透によって最近では不動産価格が落ち着きを取り戻してきている。

■各国の政府・中央銀行は、実需から乖離した不動産バブルを沈静化させようと躍起になっているが、懸念されるのは金融政策の舵取りを誤り、政策効果が効きすぎてしまうリスクだ。不動産バブルが崩壊することになった場合、その逆資産効果の大きさは計り知れない。逆資産効果が世界規模で連鎖的に現れる恐れもある。現状、住宅ローンや不動産部門への貸し付けを増やしている金融機関も、多額の不良債権を抱えることになろう。かつて日本が経験したバブル崩壊の二の舞にならないよう、各国政府・中央銀行には慎重な金融政策の舵取りが求められている。