BRICs経済研究所 では表題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。詳細はHPをご参照ください。


■日露貿易が拡大している。日本の通関統計によると、日露間の貿易は2003年から増加傾向が明確となり、2005年は日本からロシアへの輸出額が前年比+46.9%、ロシアからの輸入額が前年比+10.5%といずれも2ケタの高い伸びを記録した。輸出と輸入を合算した貿易総額は1兆1775億円(前年比+23.4%)と、ソ連崩壊以降では過去最高の水準に達している。

■日露間の貿易取引は拡大しつつあるが、その水準は依然として低い。日本のマクロの貿易総額に占める日露貿易総額は、2005年でもわずか1.0%程度にすぎない。地理的に近い距離にありながらも、日露貿易総額が相対的に小さな規模にとどまっている背景として、北方領土の帰属問題のほか、ロシア側の貿易障壁を挙げることができる。不透明で複雑な通関・税制度が日本からロシアへの輸出や直接投資の拡大を妨げているのだ。

■ただし、ロシアは2006年末までに世界貿易機関(WTO)への加盟を目指しており、今後はロシア側の不透明な取引慣行、関税障壁などが取り除かれて、日露貿易が飛躍的に拡大する可能性が高い。すでに、いくつかの日系企業は、ロシアのWTO加盟をにらんで、ロシアへの進出を加速させている。たとえば東芝は、2006年2月にロシアの販売活動を統括する現地法人「東芝ロシア社」を設立した。

■では、ロシアがWTO加盟を果たすことにとって、日露貿易はどれぐらい押し上げられるのであろうか。中国が2001年末にWTO加盟を果たしたときと同様の経済効果が現れるとの前提を置いてシミュレーションを行ってみた。試算結果によると、日本からロシアへの輸出額は、WTO加盟後の1年間で2005年実績対比+1094億円、輸入額は同+1330億円、貿易総額は同+2425億円押し上げられる。2年目に入ると、輸出額が2005年実績対比+4529億円、輸入額が+3830億円、貿易総額が+8359億円押し上げられる。さらに3年目については、輸出額が2005年実績対比+1兆1632億円、輸入額が+8643億円、貿易総額が+2兆275億円も押し上げられる。WTO加盟3年目の日露貿易総額は、2005年実績の2.7倍の規模に膨らむことになる。