BRICs経済研究所 では標題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。詳細はHPをご参照ください。


■日系企業がインドに進出するにあたっては、インフラ整備の遅れやカースト制度に起因する貧富の格差など注意すべきリスクがいくつかある。一番厄介なのは、頻発する労働争議の問題だろう。インドに進出した外資系企業は、少なからず労働争議の問題、ひいては労務管理の難しさに頭を悩ませているといわれる。

■インドのストライキの発生件数をみると、1970年代後半には年間3000件を超すストが各地で発生していたが、その後、徐々に減少するようになり、2004年は前年比▲12.7%の年間482件にとどまった。ただし、ストライキに参加する労働者の数は増加傾向にあり、インド各地で発生するストライキやデモが年々大規模化する傾向にあることを示唆する。ストライキ発生件数の業種別の内訳をみると、製造業が最も多く、2004年の発生件数は280件、構成比は58.1%に上る。銀行などの金融業でもストライキは多く発生し、2004年の発生件数は53件、構成比は11.0%となっている。

■最近では、2005年9月に大規模なストライキがインド全国で展開された。国営銀行の労働組合など数百万人が参加したといわれる。政府による金融機関の合併や民営化に反対するストで、共産党が主導したものだ。2006年2月には、政府が決定したデリーとムンバイの空港の民営化に抗議して、インド各地の空港で、インド空港公団の職員ら2万人が大規模なストライキとデモを展開した。日系企業も何度か労働争議の問題に直面している。

■経済成長が加速してくると、人々の賃金要求水準も次第に高まってくるので、開発途上国に進出した企業が労働争議の問題に直面することは珍しいことではない。韓国や中国、インドネシア、フィリピンなどでも同様の問題は頻繁に起きている。ただ、インドの場合はストライキの発生件数がアジアのなかでも突出して多い。またインドの場合は、他の途上国に比べて民主化の精神が徹底していることもあって、従業員の権利意識が非常に強く、一度ストライキが発生すると問題を調整・解決するのにかなりの時間・コストを要することになる。インドへの進出を計画している日系企業はこのような労務面でのリスクを十分に認識しておくべきだろう。