BRICs経済研究所 では標題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。詳細はHPをご参照ください。


■かつての中国とインドは、ともに経済が未成熟で、巨大な人口を抱えながらも国民の多くが貧困にあえいでいたため、人口爆発が起きないよう人口抑制策が採用された。しかし、近年では事情が大きく変わってきている。中国とインドの生産力は劇的に高まり、巨大な人口を養えるようになってきている。このため、人口の増加はむしろ中長期的な経済成長にとってプラスの要因になるという見方が広がってきた。そうした状況下、これまで「一人っ子政策」という厳格な産児制限をしてきた中国では、将来の少子高齢化が危惧されるようになっている。一方、人口抑制策を推進しながらも、様々な理由から厳格な産児制限を実施することのなかったインドでは、経済成長が高まるなかで人口増加に対して楽観的なムードが広がりつつある。

■「一人っ子政策」を採用してきた中国では、人口が2030年の144645.3万人をピークに減少に転じるが、厳格な産児制限を採用しなかったインドでは人口が2050年まで増加し続ける。この結果、2030年には、インドの人口(144907.8万人)が中国を超えて世界最大になると予測される。 

■人口の「質」についても、インドのほうが中国に比べて良質になることが予想される。人口が多くても、働き手となる生産年齢人口の割合が低ければ、中長期的な経済成長に必要な労働力の供給はままならず、生産水準や所得水準は高まっていかない。その点、インドは単に人口のボリュームが巨大なだけでなく、経済成長のカギを握る若年人口の割合が高いという有利な特徴をかなり長い期間にわたって維持できる。2030年の人口ピラミッドを見ると、インドでは依然として土台のしっかりしたピラミッド型が維持されているのに対して、中国では少子高齢化の影響が強くあらわれるようになり、幼少人口、生産年齢人口の土台がもろい一方で、長寿高齢化により高齢者のボリュームが厚くなるという極めていびつなピラミッドへと変形していることが分かる。

■国際連合の推計によると、インドの生産年齢人口比率は2005年の62.7%から2010年には68.1%へ上昇すると見込まれている。一方、中国の生産年齢人口比率は2005年の71.0%から2030年には66.8%へ低下することが見込まれている。インドは、豊富な労働力の供給を背景として、2005年から2030年にかけて高い成長が期待できるが、中国は人口が制約要因となって高成長が困難になってくるといえるだろう。