まさか騙された人はいませんよね? 「THE 4TH KIND フォース・カインド」超ネタばれ解説 | 精神科医・樺沢紫苑の脳内情報館

まさか騙された人はいませんよね? 「THE 4TH KIND フォース・カインド」超ネタばれ解説

 以下、映画 「THE 4TH KIND フォース・カインド」のネタバレ解説です。
 白文字になっていますから、反転させてご覧ください。

↓↓↓↓ ここからネタばれ解説

 既に、当然、気付いている人も多いと思いますが、「フォース・カインド」は新手の「ブレア・ウィッチプロジェクト」です。

 劇中で紹介される「実際の映像」は、どう見ても実際の心理面談を撮影したものではないでしょう。もしこれが本物だとしたら、タイラー博士は心理カウンセラーの専門家というよりは、単なる「ど素人」。

 このような誘導尋問的な睡眠面接の後に自殺が起きたのなら、自殺の原因は催眠面接が原因なのは明白です。訴訟されれば何億円も損害賠償をとられる、そんなレベルの心理面接だと思います。

 だいたい、不眠症の治療のために、なぜ催眠治療が必要なのかが全く不明です。タイラー博士は、治療というよりは治療に名を借りた「研究目的」で、治療のためには全く必要のない行為を「興味本位」でバンバン行って、自殺させたり、身体障害者に陥れたりするわけ。
 
 仮にもしこの話が事実だとすれば、自殺の原因は「宇宙人の誘拐」ではなくて、タイラー博士の催眠面接のやり方が悪かっただけ。「宇宙の誘拐」よりも、治療に名を借りて殺人行為を平気行えるモラル意識の全くないタイラー博士の方が、よっぽど恐ろしいでしょう。
 
 宇宙人の人体実験みたいな話が出てきますが、人体実験をしているのは、タイラー博士、あなたですから(バッサリ)。

 アラスカのノームという町は、人口約3500人(2005年のデータ)。事件の起きた2000年もほとんど同じくらいの人口のはず。その町で、「300人が不眠症になった」といいます。そうなると、10人に1人が不眠になった・・・ことになります。

 こういう人口の少ない田舎町。私も住んで事がありますが、「噂」というのは一瞬にして広がるものです。特に娯楽もない町で、楽しみと言えばおしゃべりくらいなものです。100人でなくても、誰か一人が「頑固な不眠で、夜中に白いフクロウを見た」と言えば、その噂は街中を駆け巡ります。頑固な不眠を訴えた人が、他にいれば「私も」「私も」という話になる。

 ですから、「不眠症を訴える人が、全員同じ内容を語り出す」というのは、こんな小さい町での出来事を考えると、別に驚愕すべき出来事ではなく、むしろ当然の話のはず。それをタイラー博士は衝撃の事実を発見したかのように驚きます。正直笑えます。

 4000年以上前に使われていた古代シュメール語。
 シュメール文化の研究者が、「これは間違いなく古代シュメール語」と断定するわけですが、一体この博士はどこで古代シュメール語を聞いたのでしょうか? 古代語がどのように発音されていたのか・・・そういう研究もあるでしょうが、あくまでも「仮説」にすぎないわけで、それを簡単に断定してしまうというのは、もはや学者ではなく、トンデモ本の作者レベルでしょう?

 ということで、再現映像の全てがあまりにもリアリティがなくて、私にはワイドジョーの再現ドラマのレベルにしか見えません。突っ込みどころ満載の映画ですから、大笑いしながら見るのなら別にいいのですが、ひょっして実話ではないかと間に受ける人がいるのではないかと心配です。

 事実関係を調べるまでもなく、「フォース・カインド」という映画は、「ブレア・ウィッチプロジェクト」と同じで、「フィクション」を観客に現実と誤認させる演出をしかけた作品なのです。

 2009年9月1日付けで報告されたアンカレッジ・デイリーニューズの調査によると、映画が謳うノーム周辺の失踪事件に裏付けはなく、ノームにおける原因不明の死者の数は他のアラスカ州の都市と大差ないといいます。

 疑い深い人のために、ニュース記事も紹介してきましょう。

>2009年11月12日、ユニバーサル・ピクチャーズは映画を実際の事件に
>基づいていると見せかけるためネット上のニュース記事や訃報を偽造したこ
>とを認め、「映画の宣伝のために偽造されたニュース記事に関する苦情を
>解決するため」アラスカ記者クラブに2万ドルの和解金を支払うことで合意した。
http://www.breitbart.com/article.php?id=D9BU5KV81




この記事は、樺沢紫苑が発行する日本第2位の映画メルマガ「映画の精神医学」で配信した記事をリライトしたものです。あなたも「映画の精神医学」を読んでみませんか?
まんまと騙されるかどうかは、あなた次第・・・。