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どんな小さな村にも、必ず一人は占い師がいた。


たいてい年をとった女で、畑仕事の合間に占いを引き受けていた。



占い師は頼まれればなんでも占った。



明日の天気や、祭りの時期、今年の稲の具合に、失せ物探し、


いつまでも結婚しない息子の嫁探しもすれば、


若い娘に頼まれて恋占いだってする。



しかし、なんといっても一番重要な占いは、


生まれたばかりの赤ん坊の一生を占う事だった。




さて、この占い師なのだが、よく当たると評判の占い師もいれば、


当然そうじゃない占い師もいた。




残念なことに、イチの父親が呼んできた占い師は、そうじゃない方の占い師だった。


村には占い師が一人しかいなかったので、仕方なかったのだ。



イチの父親は、産まれたばかりの我が子が占われるのを見つめながら、


気が気ではなかった。



なにしろ占い師の婆さんが眉間に皺を寄せ、ぶつぶつ呟きながら


ぐっすり眠る赤ん坊の上で、熱心に占い棒をふる度に、


服の袖白い髪から、土ぼこりらしいものが舞い落ちていたのだ。



呼び寄せられるまで畑仕事をしていた占い師は、


服も着替えずに来たらしい。



( 隣町にいる評判の良い占い師に、無理にでもお願いして来て貰えばよかった 


イチの父親はそう思いながら、

生まれたばかりの赤ん坊に、土ぼこりがかかりやしないかと、


ひやひやしながら占い師を見守っていた。




しかし、お産を終えたばかりで疲れ果てていたイチの母親


占い師の事など気にした様子もなく、ベットの上に横たわり、


自分の隣で眠るイチを、愛しそうに見つめていた。



イチの母親は疲れ果ててはいたが、美しかった。


東の国独特の艶やかな浅黒い肌と、夜のような黒い髪


そしてうっとりとした雰囲気の黒い瞳を持っていた。


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