何があっても電車があればだいじょうぶ。

【ストーリー】
のぞみ地所の社員である小町圭とコダマ鉄工所の二代目小玉健太は、ともに鉄道を愛する者だ。旅先のふとした出来事でお互いを知った2人は、東京に戻ってからの出会いで直ぐに打ち解けた仲になる。小町は部屋探しをしていたがコダマ鉄工所の寮に入居することにする。夜な夜な鉄道話で盛り上がる二人だったが、小町はやがて九州支社に転勤することになった。転勤先の九州では大手企業の社長をなかなか口説き落とせないのが問題点であった。その様な問題があるとは知らずに小町は小玉が九州に来た際に鉄道の旅に出る。旅先では女性2人を連れた男の人と意気投合して旅を満喫する。数日後、のぞみ地所の社長が九州に出向いて口説き落とせない社長と会談することとなり、夜の接待では小町も同席することになり・・・。


鉄オタ二人が鉄道知識をいかんなく発揮する映画はまさに鉄オタのための映画だろう。きっと鉄オタの人が観たら出てくるレトロな電車や鉄道に関する用語に笑ったり、「わかるわー」と言ってしまうんだろう。

生憎、私は鉄オタではないので時々鉄道に関する台詞を聞いたら「はぁ?」となることもあった。だが、この映画を観て感じることは鉄道にしても何にしても人の趣味にかける情熱は理解できるという点だ。

鉄道は分からないという人もいるだろう。だが、それを自分の熱中する好きなものに置き換えてみたらどうだろうか。音楽でも、スポーツでも何でもいい。自分の中で少しでも熱中できるものがあればこの映画の登場人物の熱の入れようにも共感するだろう。

鉄道だから観ないという偏見は捨てて少しでも興味があるなら劇場に足を運んでもらいたい。映画好きの人ならば『家族ゲーム』『失楽園』『椿三十郎』等を手掛けた森田芳光監督の遺作ということで観てもらうのも良い。

この映画はまるで『釣りバカ日誌』の鉄道版とも言える内容。浜ちゃんほど仕事をほっといて遊びほうけるでもない。むしろ二人は仕事と恋愛で悩んでいる。決して能天気ではないが、趣味が日常を好転させるといった内容は釣りバカと共通している。

そしてきっと趣味の大切さを気づかせてくれる。日常に追われていても息抜きで自分の大好きなことをする。これが自分の人生をより鮮やかで楽しい日常にしてくれるのだ。


主演の二人も実に良い演技をしている。現実にいる鉄オタの人たちが醸し出す雰囲気をよく再現している。イケメン俳優と言われる二人とはまた違った演技が見えれて面白い。

ストーリーも実にほのぼのしている。映画らしい展開ではあるが荒唐無稽でもない日常を切り取った内容は観終わった後に心を満足させてくれる。清々しいのだ。それは二人が出す雰囲気やストーリー性もあるが、更には映像の力も働いているはずだ。

海、山を走る鉄道の映像、車窓から観える景色を日本中から集めたような映像は観客を旅に誘う魅力がある。この映画を観てロケ地めぐりをしたくなった人はきっと多くいるはずだ。

日常が忙しいからこその趣味の大切さを気づかせ、旅にでたくなる衝動を与える一本でした。