マザーレス・ブルックリン | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Motherless Brooklyn
監督:エドワード・ノートン
キャスト:エドワード・ノートン/ブルース・ウィリス/ググ・バサ=ロー
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2020年1月
時間:144分




エドワード・ノートンといえば『インクレディブル・ハルク』の初代ハルクとして印象的だったが,脚本家・声優・プロデューサー・映画監督とマルチな活躍を見せている。今夜は,そんな彼が監督・脚本・製作・主演を務めたノワール・サスペンス『マザーレス・ブルックリン』を紹介。

原作はジョナサン・レセムが1999年に発表した小説。原作の時代設定は1999年だが,1950年代のハードボイルド小説を薫らせる作品で,1950年代の組織的腐敗とレイシズムが現代のニューヨークの在り方を決定づけたことを描きたいと,映画での時代設定を1957年に変更したという。タイトルの『マザーレス・ブルックリン』とは,ボスのフランクが,6歳で母親を亡くしニューヨークのブルックリンで育った主人公ライオネルに付けたニックネームだ。

1957年のニューヨーク。ライオネル・エスログ(エドワード・ノートン)は,トゥレット障害のせいで頻繁に意図しない言葉を口走ってしまうが,驚異の記憶力を持っている。孤児院で暮らしていた彼は,幼なじみのトニー(ボビー・カナヴェイル),ギルバート(イーサン・サプリー),ダニー(ダラス・ロバーツ)と共に私立探偵でボスのフランク(ブルース・ウィリス)に引き取られ,フランクの“お使い”をこなしながら,生きる力を身につけてきた。

ある日,そのフランクが何者かに殺害される。事件の真相を追い始めたライオネルは,アフリカ系女性ローラ(ググ・バサ=ロー)の協力を得ながら,ハーレムのジャズ・クラブからマイノリティの人々が集うブルックリンのスラム街まで,わずかな手掛かりや天性の勘と行動力を頼りに,大都会の闇に迫っていく。やがて,腐敗した街で最も危険な黒幕にたどり着くライオネルだったが…。

冒頭の,
“Oh, it is excellent to have a giant’s strength…
but it is tyrannous to use it like a giant”

(巨人の力を持つのはすばらしいが…
その力を巨人のように使うのは 暴虐だ)

は,イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『尺には尺を(Measure for Measure)』からの引用。権力者が簡単に腐敗することのたとえだ。

混沌と発展の共存する1950年代のニューヨーク,そこにある懐かしさと新しい息吹の交錯は,不思議な香りと色彩に包まれている。独特だが次第に見る者を虜にしていくライオネルのキャラ,個性的な豪華キャストのアンサンブル,洒落たジャズの旋律。

他の私立探偵キャラと較べるとアクションはほとんどないが,底知れぬ魅力を醸し出すライオネルとストーリーが,酒に合うと思えるのは個人的すぎる感覚だろうか。


映画クタ評:★★★★


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