スポットライト/世紀のスクープ | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Spotlight
監督:トム・マッカーシー
キャスト:マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス
配給:オープン・ロード・フィルムズ/ロングライド
公開:2016年4月
時間:129分




この世に新聞が誕生して4世紀が経つという。テレビやインターネットが発達した現代社会では速報性で優位に立てず低迷傾向とはいえ,取材力や正確性があり,取り扱いが簡便で共有性が高いことで,情報メディアとしての地位は揺らいでいない。しかし深刻な危機であることは明白で,各社がグローバル化やデジタル化など様々な工夫を進めている。

さて,舞台は22年前。携帯電話の普及で新聞の危機感に拍車がかかっていた頃だ。130年の歴史を持ち,ボストンで最大の部数を発行する新聞“ボストン・グローブ”だが,“ニューヨーク・タイムズ”社の100%子会社となっていた。そんな中,ジャーナリズム魂と不屈の執念でカトリック教会という巨大な権力に立ち向かい,長年隠蔽されてきた児童虐待スキャンダルを暴き出した調査報道チーム《スポットライト》。卓越した新聞報道・文学活動・楽曲作曲に与えられる“ピュリツァー賞”に輝いた彼らの実話を基にした『スポットライト/世紀のスクープ』を今夜は紹介。監督は『扉をたたく人』(2009年・ロングライド)『靴職人と魔法のミシン』(2015年・イメージ)のトム・マッカーシー。第88回アカデミー賞では,作品賞と脚本賞の2冠に輝いている。

2001年,夏。ボストンの地元新聞“ボストン・グローブ”の新任編集局長としてマイアミからやって来たマーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)。さっそく目玉になる記事の材料を物色し,神父による子どもへの性的虐待事件に着目すると,これを追跡調査する方針を打ち出す。しかし,“ボストン・グローブ”の読者は半数以上がカトリック教徒。彼らの反発を招きかねないと古参幹部は難色を示すが,地元のしがらみと無縁で,なおかつユダヤ人のバロンは強気に押し切っていく。

こうして,リーダーのウォルター・“ロビー”・ロビンソン(マイケル・キートン)を中心に,特集記事欄《スポットライト》を担当するマイク・レゼンデス(マーク・ラファロ),サーシャ・ファイファー(レイチェル・マクアダムス),ベン・ブラッドリー・ジュニア(ジョン・スラッテリー),マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)の4人の記者たちが調査を開始する。地道な取材を積み重ねる彼らは,次第に事件の背後に隠された巨大な疑惑の核心へと迫っていくのだったが…。

私たちは「間違っているものは間違っている」と常に言葉にし,胸を張って生きているだろうか? 誰もが心の中で「間違っている」と判っていても,声に出して「間違っている」と言えなかった巨大なタブーに,“正義を貫きたい”という思いで立ち向かう記者たちの姿は,見る者に勇気と信念を与えてくれる。同時に,“マスコミの良心”や“言論の自由”についても考えさせられる秀作だ。

その後,10年に渡り世界中に波及し,賠償や教会改革への契機となった物語。情報化社会に暮らす現代人として,ぜひ一度は触れてほしい1本だ。


映画クタ評:★★★★


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