ステージ・マザー | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Stage Mother
監督:トム・フィッツジェラルド
キャスト:ジャッキー・ウィーヴァー/ルーシー・リュー/エイドリアン・グレニアー
配給:モメンタム・ピクチャーズ/REGENTS
公開:2021年2月
時間:93分




まとった衣装の裾を引き摺る(drag)ことから呼ばれるようになったという“ドラァグクイーン(drag queen)”という呼び方。男性がドレスやハイヒールなどの衣裳を身に着け,女性の姿で行うパフォーマンスの起源は,男性が理想像として求める“女性の性”の過剰演出だとも言われる。

今夜紹介するのは,田舎の主婦が,そんなドラァグクイーンたちに寄り添いつつ,亡き息子が遺したゲイバーの再建に立ち上がるハートウォーミング・ドラマ『ステージ・マザー』。監督はカナダを中心に活躍するトム・フィッツジェラルド。

保守的なテキサスの田舎町で夫と2人で暮らしていたメイベリン(ジャッキー・ウィーヴァー)のもとにある日,絶縁状態だった息子リッキー(エルドン・シール)の訃報が届く。両親にゲイであることを告白したリッキーは,互いに分かり合えないまま故郷を去り,サンフランシスコのゲイバー“パンドラ・ボックス”でドラァグクイーンとして活躍していた。ずっと夫につき従ってきたメイベリンだったが,今度ばかりは夫の反対を押し切り,リッキーの葬儀に参加するためサンフランシスコに向かう。

ところが,葬儀は華やかなミュージカル調で,敬虔なクリスチャンで教会の聖歌隊の一員でもあるメイベリンには耐え難いものだった。翌日,リッキーのパートナーでバーの共同経営者ネイサン(エイドリアン・グレニアー)を訪ねるが,門前払いを食らったメイベリン。失意の彼女の前に現れたのは,リッキーの親友でシングルマザーのシエナ(ルーシー・リュー)だった。シエナの計らいでネイサンとの間を取り持ってもらうと,リッキーが遺言を遺さずに他界したため,バーの経営権は母親のメイベリンが相続すること,さらに,バーが破綻寸前の危機にあることが明らかになる。戸惑いつつも,息子の遺した店と愛した仲間たちを守るため,自ら再建を決意するメイベリンだったが…。

コメディかと思いきや,“ステージ・マザー”がドラァグクイーンたちの“セカンド・マザー”となっていく心潤わせるドラマ。亡き息子の面影を仲間たちの姿に見出すメイベリンが,彼女たちと共に過ごし,導き,息子との時間を取り戻していく。気丈に振る舞いながらも心に傷を抱え,“本当の自分”でいることをどこかで恐れていたドラァグクイーンたち。ゲイである息子を受け入れない夫に従い,自分自身の声を押し殺していたメイベリン。“本当の声”を発することで,それらの解放と深い想いの繋がりを,魅せてくれる秀作だ。


映画クタ評:★★★★


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『ステージ・マザー』
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