スキャンダル | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Bombshell
監督:ジェイ・ローチ
キャスト:シャーリーズ・セロン/ニコール・キッドマン/マーゴット・ロビー
配給:ライオンズゲート/ギャガ
公開:2020年2月
時間:108分




アメリカのケーブルテレビには“Big Three” と呼ばれる3大ニュースチャンネルがあり,24時間ストレートニュースと報道番組を専門に放送している。最も古くリベラル系定番とも言えるCNN,保守系で18年間総視聴者数トップを誇ってきたFOXニュース,そしてリベラル系躍進中のMSNBCと,それぞれが特徴的で,時に世論にさえ影響を及ぼすメディアとなっている。

その1角FOXニュースの創業者で初代最高経営責任者(CEO)を務めていたロジャー・エイルズにセクハラ疑惑が浮上し,辞任したのが2016年。翌年に彼が死去するとすぐに映画化の企画が持ち上がる辺り,いかにもアメリカらしい。監督は『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズ(ユニバーサル)や『トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男』(2016年・ブリーカーst)のジェイ・ローチ。また,『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』に続き2度目のアカデミー賞に輝いたカズ・ヒロ(辻一弘)による驚異のメイクアップ技術も話題となった。原題の『Bombshell』は爆弾や砲弾を意味し,スキャンダルを発信するメディアのスクープを呼ぶ流行の「○○砲」の“砲”のこと。魅力的な女性という裏の意味もある。

2016年,アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースのベテラン女性キャスター,グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)は,人気番組の担当を降ろされたのを機に,長年セクハラを繰り返してきたテレビ界の帝王,ロジャー・エイルズCEO(ジョン・リスゴー)を提訴する。そのスキャンダラスなニュースによってメディア界に激震が走り,FOXニュース社内も騒然とする。

一方,看板キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は,女性蔑視が目に余るドナルド・トランプ大統領候補への対決姿勢を鮮明にしながら,かつてかつてロジャーから受けたセクハラを公表すべきか苦悩する。そんな中,メインキャスターの座を狙う野心あふれる若手ケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)は,ついにロジャーと面接するチャンスを得るのだったが…。

ちょうど,ドナルド・トランプがまさかの躍進で大統領になってしまう直前の時期。弱肉強食の巨大メディアの最前線で,強く,美しく,したたかな3人の女性たちが,上司やライバルと繰り広げる激闘の日々を,特殊メイクで実在の本人ソックリになったシャーリーズとニコール,さらに,架空の人物ながら印象的な若手ケイラをマーゴットが熱演する。

異様な迫力で欲望と権力を牛耳るロジャーの姿に,11月に再選を狙うトランプがダブって見えるのもきっと計算で,タイミングを狙って公開された隠喩的な“反トランプ”作品と言えるだろう。ユニークなオープニングと較べて,後半になると構成が散らかり気味になったのが残念で,実際の事件に関心の薄い日本人には,少し判りにくいかもしれない。


映画クタ評:★★★★


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